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【ホンダ XL750トランザルプ試乗】普通のライダーが「リアルにオン/オフの走りを楽しめる」絶妙なサジ加減

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【ホンダ XL750トランザルプ試乗】普通のライダーが「リアルにオン/オフの走りを楽しめる」絶妙なサジ加減

旧世代トランザルプを思い出しつつ、かつてとは異なる自分の趣向を実感

初っ端から誠に失礼な話になるものの、1987~1990年代前半に国内販売されたかつてのトランザルプ600Vと400Vに対して、若き日の僕はまったく関心を持たなかった。兄貴分でパリダカレプリカのXRV650/750アフリカツインには畏敬の念を抱いていたし、ホンダ製大排気量アドベンチャーツアラーの始祖、1983年にデビューしたXLV750Rには興味津々だったのだけれど、ルックスにもスペックにもインパクトが感じられないトランザルプには、どうにも食指が動かなかったのである。

【画像23点】ホンダ新型トランザルプの外観360度、足着き、装備を写真で解説

ところが、あの時代から約30年が経過して52歳になった現在、新世代のXL750トランザルプを体験した僕は、あぁ、コレは自分にとって理想のバイクかもしれない……と、しみじみ感じているのだった。
おそらく、その印象の最大の原因は自分自身の変化で(20代までは勢いだけで走っていた気がするが、30代以降は峠道と悪路をメインにすえたツーリングがバイクライフの中心に。ただ最近は体力の衰えを痛感中)、今になって考えるとヨーロッパでロングセラーになったかつてのトランザルプも、新型XL750トランザルプと同様の資質を備えていたのではないかと思う。

オフロード車的な構成でもない? CRFでもない?

400X(海外ではCB500X)やNC750Xでは物足りないけれど、CRF1100Lアフリカツインは色々な意味で過剰──XL750トランザルプはそんな印象を抱いているライダーのために開発されたモデルだ。
以下に記す装備重量/最高出力/価格を見れば(NC750XとCRF1100Lアフリカツインはスタンダードの数字)、ホンダ製アドベンチャー系ツアラーの素性が何となくでも理解できるだろう。

・400X:199kg/46ps/85万8000円

・NC750X:214kg/58ps/92万4000円

・XL750トランザルプ:208kg/91ps/126万5000円

・CRF1100Lアフリカツイン:229kg/102ps/163万9000円

XL750トランザルプには同時開発の兄弟車として、スポーツネイキッドのCB750ホーネット(現状海外のみでの販売)が存在する。ただし、実際に両車が共有しているのは、270度クランクの並列2気筒エンジンとダイヤモンドタイプのスチール製メインフレーム、ライダーを支援する多種多様な電子デバイスの基本くらいで、外装や足まわりは各車専用設計である。

ちなみに、今回の試乗前に僕がちょっと気になっていたのは、開発者が「CRFではない」と説明していたこと。もうちょっと正しく表現するなら、当初はCRFを意識してオフロード重視の特性を構築していたそうだが、現実的な使い勝手を考慮して、徐々にオンロード指向が強くなったらしい。
もっとも、XL750トランザルプのタイヤサイズはCRF1100Lアフリカツインと同じフロント90/90-21・リヤ150/70R18で、ホイールトラベルはフロント200mm・リヤ190mmもあるのだ(CB750ホーネットは前後17インチで、ホイールトラベルはフロント130mm・リヤ150mm)。それでオンロード指向というのは、妙な言い分と思えたのだが……?

ありそうでなかった、絶妙のサジ加減「21インチなのにオンロードが爽快」

「これは確かに、CRFではないな」
編集部を出発して約4時間、峠道と林道での撮影を終えた段階で、僕は開発陣の言葉の意味を理解することになった。といっても出発直後から、不思議な印象はあったのだ。この種のアドベンチャーツアラーに試乗するときは、頭と身体のアジャストが通例なのに(それは決してイヤなことではないのだが)、XL750トランザルプは一般的なロードバイクと大差ない感覚で走り出せたのだから。
そういった印象はフロントタイヤを同様に110/80-19とするライバル車、スズキ Vストローム650やBMW F750GS、モトグッツィ V85TTなどに通じるところがあるけれど、車重が軽くてシートが高くて前輪の幅が狭いからだろうか、それらよりも車体の動きはXL750トランザルプのほうが軽快に思えた。

また、不思議を通り越して驚いたのは、峠道でのコーナリングである。悪路走破性を重視したフロント21インチと豊富な前後ホイールトラベルは、オンロードでは足を引っ張る要素になることが珍しくないのに、このバイクは依然として一般的なロードバイクと大差ない感覚で、コーナーを気持ちよくガンガン攻められる。
なおアップライトなライディングポジションのおかげで、アグレッシブに走ったときの感覚には1980年前後のAMAスーパーバイク的なところがあって、当時のアップハンドルレーサーが大好きな僕は、予想外の発見にニヤリとしてしまった。

一方21インチだけに、オフロードも十分以上の走破性あり

さて、ここまでの文章では「そこまでオンロードが楽しいなら、オフはいまひとつじゃないか?」と疑問を抱く人がいそうである。
ところがこのバイク、当然と言えば当然なのだが、オフも相当以上にイケるのだ。絶対的な悪路走破性は前後ホイールトラベルがさらに多いフロント21インチのライバル勢(以下)に及ばないはずだが、少なくとも一般的な林道を一般的なペースで走るぶんには至って快適で(大きな石がゴロゴロしている場面では、フロント21インチの美点を改めて実感!!)、Uターンも比較的容易。

・ホンダ XL750トランザルプ:200mm/リヤ190mm

・ヤマハ テネレ700:フロント210mm/リヤ200mm

・スズキ Vストローム800DE:フロント220mm/リヤ212mm

・BMW F850GS(ベースグレード):フロント230/リヤ215mm

・KTM 890アドベンチャーR:フロント・リヤともに240mm

・アプリリア トゥアレグ660:フロント・リヤともに240mm

言ってみればXL750トランザルプは、一般的なライダーにとって十分なオフロード性能を備えながらも、オフロード性能に注力しすぎていないモデルなのだ。その絶妙なサジ加減、ありそうでなかった味つけに、僕は「我が意を得たり」という印象を抱いたのである。

「これでなきゃ」と言いたくなる個性の確立

というわけでXL750トランザルプの乗り味にかなり感心し、このバイクのオーナーになったら充実したバイクライフが送れそうと感じた僕だが、気になる点が無かったわけではない。まず1つ目は、数時間の走行で尻が痛くなったこと。この件に関しては、純正アクセサリーとしてハイシートの登場に期待したいところだが、シートが高くなると現状のフレンドリーが多少は失われるはずなので、なかなか難しい問題なのかもしれない。

そして2つ目は、これは書くかどうかで迷ったのだけれど、エンジンである。といっても、低回転域では明確な鼓動とトラクションが感じられ、高回転域ではシャープな回転上昇とパワフルさが堪能できる、新設計エンジンの印象は素晴らしく良好なのだ。でも近年のミドルクラスで、270度クランクの並列2気筒が最大勢力になった現状を考えると、ホンダには1980~1990年代に注力したVツインに再挑戦して欲しかったような……?

もちろん、吸排気系のレイアウトや重量配分、生産性などを考えれば、あるいは、兄貴分に当たるCRF1100Lアフリカツインが並列2気筒を搭載していることを念頭に置けば、Vツインは選択肢になりづらいだろう。とはいえ、もし新世代のトランザルプがVツイン、それもかつてに通じる挟角+位相クランクに現代的なアレンジを加えていたら、僕の場合は感心を通り越して感激したに違いない。

まあでも、僕が抱いたエンジンへの不満は、バラエティ感を求める業界人の言いがかりみたいなもので、270度クランクの並列2気筒を搭載しているからと言って、このバイクの評価が下がるわけではない。というより、当記事で車名を挙げた他メーカーのライバル勢に対して、XL750トランザルプは「これでなきゃ」と言いたくなる個性の確立、見事な差別化を実現していると思う。

■XL750トランザルプの足着き&ライディングポジション

身長182cmの筆者が言ってもあんまり説得力はなさそうだが、近年のミドルアドベンチャーツアラーの基準で考えると、足着き性は良好な部類。ただしシート高は850mmなので、身長170cm以下のライダーはそれなりに不安を感じるだろう。そういった問題を解消するべく、ホンダでは純正アクセサリーパーツとして、着座位置が30mm低くなるローシートを設定している。

■ホンダ XL750トランザルプ主要諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列2気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:87mm×63.5mm 総排気量:754cc 最高出力:67kW<91ps>/9500rpm 最大トルク:75Nm<7.6kgm>/7250rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2325 全幅:840 全高:1450 ホイールベース:1560(各mm) タイヤサイズ:F90/90-21 R150/70R18 車両重量:208kg 燃料タンク容量:16L
[車体色]
ロスホワイト
[価格]
126万5000円

レポート●中村友彦 写真●吉見雅幸/ホンダ(車両解説) 編集●上野茂岐

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