現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > あまり故障しない最後のハイドロ・シトロエンは、隠れた名車だ! 2代目シトロエン C5後期型の魅力と知られざる真実

ここから本文です

あまり故障しない最後のハイドロ・シトロエンは、隠れた名車だ! 2代目シトロエン C5後期型の魅力と知られざる真実

掲載 7
あまり故障しない最後のハイドロ・シトロエンは、隠れた名車だ! 2代目シトロエン C5後期型の魅力と知られざる真実

「伝説の名車」と呼ばれるクルマがある。時の流れとともに、その真の姿は徐々に曖昧になり、靄(もや)がかかって実像が見えにくくなる。ゆえに伝説は、より伝説と化していく。

 そんな伝説の名車の真実と、現在のありようを明らかにしていくのが、この連載の目的だ。ベテラン自動車評論家の清水草一が、往時の体験を振り返りながら、その魅力を語る。

あまり故障しない最後のハイドロ・シトロエンは、隠れた名車だ! 2代目シトロエン C5後期型の魅力と知られざる真実

文/清水草一
写真/シトロエン、フォッケウルフ

■これはハイドロじゃない!?

 先般、フランスの名門・シトロエンの新しいフラッグシップカー、「C5 X」が発売された。そのデザインは、「これがクラウンクロスオーバーの元ネタ?」とも思わせる、SUV風の5ドアハッチバック。スタイリッシュかつアクティブなイメージで魅力的だ。

 ただ、シトロエンと言えば、デザインと並んで乗り心地がウリ。1955年、シトロエンDSで初登場したハイドロニューマチックサスペンションは、「魔法のじゅうたん」と呼ばれ、長年マニアに愛された。その後ハイドロニューマックは、ハイドラクティブに進化し、信頼性も向上したが、フランス製の高級車需要はしぼむいっぽうで、2015年、C5の生産終了とともに、60年の歴史に終止符を打ったのだった(涙)。

2000年代のシトロエンのフラッグシップモデルとして君臨したC5。2代目モデルは2008年に日本へ導入され、2015年まで販売された

 現在は、シトロエンが次世代ハイドロと謳う「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」が開発され、C5エアクロスに搭載。その乗り味は、確かにマシュマロのようにフワッフワではあるものの、あくまでショックアブソーバーのみの技術。オイルとガスを使い、スプリングとショックの役割を同時に果たしていた旧ハイドロ系サスとは構造が根本的に異なり、乗り味もかなり違う。

 C5 XもPHCを採用しているが、C5エアクロスに比べるとサスペンションがスポーティでフワフワ感がなく、通常のサスペンションと見分けられなかった。距離を走りこめば乗り味が変わってくる可能性はあるが、シトロエンファンとしては「これはぜんぜんハイドロじゃない!」と言うしかない。

 かく言う私は、ハイドラクティブIIを搭載したエグザンティアブレーク最終型と、ハイドラクティブIII搭載の2代目C5セダン中期型(1.6Lガソリンターボ)の所有経験がある。

 個人的には、エグザンティアがハイドロ系シトロエンの所有初体験で、そのインパクトは絶大。リアサスはトレーリングアームゆえ、コーナリング中に段差を超えると横っ飛びしてしまったり、路面の小さな凹凸が吸収できないなど欠点も多かったが、高速道路で大きなうねりを乗り越た時は、車体が水平を保ったままフワーンと気持ちよく上下して、これぞ魔法のじゅうたん! と感動した。

■C5へと受け継がれたハイドロサス

 ハイドロ系シトロエンは、このあたりの世代までは、欠点も多いけれど美点がそれをしのぐ、いかにもマニア受けな仕上がりだったと言える。

 ハイドロ系シトロエンというと、油圧系統の故障が非常に恐れられていたが、エグザンティアは信頼性が大幅に向上しており、私の場合、7年間の所有期間中、その手のトラブルは一度もなく、スフィアの交換も必要なかった。トラブルと言えば、サビによるマフラーの折損とパワーウィンドウ落ち、リアゲートからの雨漏りの3回のみ。「緑色の血(LHMオイル)を噴き出して息絶える」という伝説の故障には一度も出会えなかった。マニア的には若干無念である。

 エグザンティアの後継モデル、初代C5は、ハイドラクティブIIIに進化して、ブレーキとステアリングの油圧制御がサスペンションとは別系統となり、乗り味もかなりしっかりとフツーになった。後期型のV6モデルは、ハイドロらしさをかなり取り戻していたが、初代C5はデザインが不評で、シトロエンファンはあまり飛びつかなかった。

 続く2代目C5は、デザインの質感が大幅に向上したことで、ファンの注目度は急回復。日本への導入は2008年からで、当初は3.0L V6と2.0L直4(ともにガソリン)が用意されたが、2010年、2.0Lに代わって、PSAグループがBMWと共同開発した1.6Lのダウンサイジングターボ(156ps)が投入された。

7年ぶりのモデルチェンジとなった2代目C5は4ドアセダンとステーションワゴンが設定されて登場。ワゴンモデルは「C5ツアラー」と名付けられた

 当時、ダウンサイジングターボ技術は欧州を席巻中で、私はハイドロ系サスよりもむしろこのエンジンに大きな魅力を感じ、C5セダンセダクションを購入。大きなボディを比較的小さなエンジンでゆったり走らせるのは、シトロエン本来の在り方なのである。

 ただ、ハイドラクティブIIIの乗り味は、ハイドロっぽさが薄まっていて、エグザンティアの濃厚な味わいには及ばなかった。1.6ターボエンジンも、燃費はまあまあだったが、理詰めで味わいが薄く、結局2年で飽きて手放した。その後、C5の生産終了によってハイドロ系サスが絶滅したのは前述の通りだ。

■最終型ハイドロ・C5後期型に乗る男

 が、実はこの直後に「名車」が登場していた。2011年のマイナーチェンジ後の、「2代目シトロエンC5後期型」である。マイチェンの中身は、エクステリアの小変更程度だったが、実はサスペンションのセッティングもかなり変えられているらしく、乗り味が非常にシトロエンらしくなっていた!

 私のカーマニア仲間で、2013年式のC5ツアラーのオーナー、K氏はこう語る。

「あまり故障しない、安心安全なハイドロが欲しくて、これを選びました。超絶フラットライドで高速クルージングが最高! 首都高のジョイントすら気持ちいい! ジョイントを越えるのが楽しみで仕方ありません。中期型も数回、清水さんの愛車を運転させてもらいましたが、首都高のジョイントを越えた時のいなしは、うちのほうがいいように感じます」

K氏のC5ツアラー(後期型)の足まわりは、ジョイントに限らずあらゆるシーンでふんわり感が高く、「これぞシトロエンの乗り味」だ

「自分のC5こそ、最後の、そして至高のハイドロらしいです。最近、水漏れなどトラブルが始まっていて、今後、地獄が待っているかもしれませんが、最後のハイドロ・シトロエンのオーナーとして、延命にいそしみます!」(K氏)

 シトロエン好きの間では、現実的な選択肢として、「C5後期型の中古車がベスト」との評価が固まりつつある。流通台数は極めて少ないが、相場的には100万円前後とリーズナブル。いま手に入れて大事に乗っていれば、いずれ化ける……可能性もゼロではない。最後の最後に出た最終ハイドロC5は、マニア感涙の「さよなら名車」と言えるだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

外環‐成田の最短路「北千葉道路」の計画が一歩前進! “起点JCT”から伸びる区間に動きアリ 今どうなってる?
外環‐成田の最短路「北千葉道路」の計画が一歩前進! “起点JCT”から伸びる区間に動きアリ 今どうなってる?
乗りものニュース
「120万円」以上安い! トヨタ新「“8人乗り”アルファード」に大反響! 「最上級モデルの“半額以下”はオトク」「カッコイイ」「黒内装ステキ」の声! 最廉価の「Xグレード」に熱視線!
「120万円」以上安い! トヨタ新「“8人乗り”アルファード」に大反響! 「最上級モデルの“半額以下”はオトク」「カッコイイ」「黒内装ステキ」の声! 最廉価の「Xグレード」に熱視線!
くるまのニュース
BMW「アートカー」をペイントした職人が手掛けたスペシャルな「M1」が存在した! オークションで約7700万円で落札された特別な1台を紹介します
BMW「アートカー」をペイントした職人が手掛けたスペシャルな「M1」が存在した! オークションで約7700万円で落札された特別な1台を紹介します
Auto Messe Web
2025年躍進の吉兆か? 鈴鹿テストで好タイム連発のスリーボンド三宅淳詞、かつてない感触に高揚「これぞスーパーフォーミュラだ」
2025年躍進の吉兆か? 鈴鹿テストで好タイム連発のスリーボンド三宅淳詞、かつてない感触に高揚「これぞスーパーフォーミュラだ」
motorsport.com 日本版
【このエリーゼなんぼ?】ロータスらしい軽量+俊敏なサスペンション+ミッドシップの「ロータス エリーゼ クラブレーサー」販売中!
【このエリーゼなんぼ?】ロータスらしい軽量+俊敏なサスペンション+ミッドシップの「ロータス エリーゼ クラブレーサー」販売中!
AutoBild Japan
【5年ぶりの開催】苗場スキー場のゲレンデをスバル車で駆け上がる体験 「スバル・ゲレンデタクシー2025」
【5年ぶりの開催】苗場スキー場のゲレンデをスバル車で駆け上がる体験 「スバル・ゲレンデタクシー2025」
AUTOCAR JAPAN
あの“スズキ”がアフターパーツのイベントへ初出展!「ユーザーの声を直接聞きたい」理由…DAMD PARTY 2024
あの“スズキ”がアフターパーツのイベントへ初出展!「ユーザーの声を直接聞きたい」理由…DAMD PARTY 2024
レスポンス
GM キャデラックリリックの発売に先駆け、先行情報が得られる事前情報希望者登録を募集
GM キャデラックリリックの発売に先駆け、先行情報が得られる事前情報希望者登録を募集
Auto Prove
シボレー コルベット2025モデルはさまざまな選択肢の拡大で特別な一台を作る
シボレー コルベット2025モデルはさまざまな選択肢の拡大で特別な一台を作る
Auto Prove
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
まだ装着してないの? 「雪降り始めたよ?」 覚えておきたい「冬タイヤ」の違い! イマ「履くべきタイヤ」とは
くるまのニュース
新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
新型バッテリー電気コンパクトSUV! トヨタが新型アーバンクルーザーを世界初公開
バイクのニュース
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
マジで「その要求」は無理っす……レンタカー店スタッフが実際に遭遇した迷惑客3選
ベストカーWeb
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
われわれが楽しくモノづくりをすることで良い製品ができ、使う人の生活に楽しみと豊かさを提供できると思っています【株式会社 昭和トラスト 取締役 副社長 飯岡智恵子氏:TOP interview】
Auto Messe Web
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
2025最新版《アルファード&ヴェルファイア》ズバリ! “買い”のポイント
グーネット
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
ヴィンテージ・デニムの風合いで個性をアピール!日産の人気6モデルに特別仕様「ビームスエディション」が誕生
Webモーターマガジン
12/28(土)THE MOTOR WEEKLY 放送予告!
12/28(土)THE MOTOR WEEKLY 放送予告!
Auto Prove
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
ホンダ『プレリュード』、米国でも25年ぶりに復活へ…次世代ハイブリッド車として2025年投入
レスポンス
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
「えっ…!」この道「ウインカー」出す? 出さない? 真っ直ぐも行ける「道なりカーブ」どうする!? 「正解」の曲がり方とは
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
  • 朝車庫に行ったらハイドロオイルが派手に流れ出していて、
    お決まりの全交換60万円コース。

    まあセルシオのエアサス交換50万円と大差ないっすわ
  • >トラブルと言えば、サビによるマフラーの折損とパワーウィンドウ落ち、リアゲートからの雨漏りの3回のみ

    いやいや、これだけでも80,90年代以降の国産車ならありえん欠陥だぞw

    >「緑色の血(LHMオイル)を噴き出して息絶える」という伝説の故障には一度も出会えなかった。マニア的には若干無念である。

    もはやここまで来るとマニアどころか最早筋金入りのマゾヒストでしかないんだがw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

364.0463.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

151.4258.0万円

中古車を検索
C5の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

364.0463.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

151.4258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村