この記事をまとめると
■全日本ラリー選手権・第5戦「ラリー丹後」が開催された
サンルーフなワケでもないのになぜ? ラリー車の屋根にある「謎の穴」の正体とは
■JN5クラスはシリーズでもっとも激しいバトルが展開される激戦区
■FFのコンパクト車両が主力だが、中身は本格的なラリーカーだ
全日本ラリー選手権の「JN5クラス」に注目!
全日本ラリー選手権・第5戦「ラリー丹後」が2023年6月9日~11日、京都府京丹後市を舞台に開催。既報のとおり、元スピードスケートの選手で、1998年の長野オリンピックで金メダルを獲得した清水宏保選手がトヨタ・ヤリスCVTを武器に国内最高峰のラリー選手権にデビューしたが、彼が参戦したJN5クラスは、シリーズでもっとも激しいバトルが展開される激戦区だ。
JN5クラスはエンジン排気量が1500CC以下のRJ規定モデル、RPN規定モデルを対象にしたクラスで、トヨタ・ヤリスを筆頭にホンダ・フィットやマツダ・デミオなど、FFのコンパクト車両、いわゆる“お母さんの買い物用のクルマ”が主力モデルとなっているが、RJ規定は改造範囲が広く、各ドライバーのマシンは本格的な競技車両として開発されている。
ロールゲージ、ダンパー&サスペンション、LSDのほか、RJ規定ではマフラーやブレーキキャリパー&ローターの変更も可能。さらに、ギヤボックスも純正ケースであればドグミッション、クロスミッションに変更できるほか、エンジンもECUの変更ができるようになっている。そのほか、ドアトリムの内側の切削による軽量化が行えるなど、まさに改造範囲はJN2クラスに参戦する4WDターボ車両に匹敵。そのため、ベース車両こそ“お母さんの買い物用のクルマ”だが、その仕上がりは本格的なラリーカーで、抜群のコーナリング性能を披露する。
シリーズ屈指の最激戦区として一見の価値あり
事実、JN5クラスでトップ争いを展開する上位ランカーたちは、1500cc~2500ccの前輪駆動および四輪駆動車を対象にしたJN4クラスのスズキ・スイフトや1500cc~2500ccの後輪駆動車を対象にしたJN3クラスのトヨタGR86/スバルBRZなど格上モデルを凌駕することも珍しくはない。
しかも、ドライバーの顔ぶれも競技経験の少ないビギナーから百戦錬磨のベテランまで勢揃い。ベース車両がリーズナブルなこともあって参加台数はつねにシリーズ最大のエントリーを集めていることもJN5クラスの特徴と言えるだろう。
JN5クラスにトヨタ・ヤリスで参戦する小川剛選手は、「まずクルマが軽いですよね。僕が乗っているヤリスは1トンを切るぐらいなので、ストレートは遅いですけど、減速せずにコーナリングできるのでコーナリングは速いです。ノーマルの状態でもバランスがいいし、RJ車両であれば改造範囲も広いので戦闘力もかなり高い。乗り手やコース特性、コンディションによってはFFで最速タイムも出せますし、オーバーオールでも上に行くこともできる。しかも、コストはリーズナブル。初心者からベテランまで楽しめるクラスだと思いますよ」とのこと。
同じくJN5クラスにトヨタ・ヤリスCVTで参戦する大倉聡選手も「車種ラインアップも多彩ですし、CVTモデルで参戦できるところもJN5クラスの魅力ですね」とのこと。ちなみに大倉選手はCVTモデルについて「ほぼDモードで走っていますが、まったく違和感はないです。アクセルとブレーキのペダル作業とステアリングに集中できます」とのことで、CVTモデルでも十分にスペシャルステージをアタック可能。それを証明するようにラリー丹後ではヤリスCVTを駆る大倉選手がJN5クラスを制覇した。
まさにJN5クラスの主役は“お母さんの買い物用のクルマ”だが、その走りは国内最高峰シリーズにふさわしく、コースサイドで見ていてもスピード感は高い。シリーズ屈指の最激戦区として一見の価値があるクラスだと言えるだろう。
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