他メーカーには作れないクルマ
かつてホンダはスポーツカーの宝庫だった。本格オープンスポーツのS2000やコンパクトハイブリッドカーのCR-Z、ちょっと古いところでは軽自動車のビートなど、他メーカーには作れないクルマを送り出した。加えてS-MXなど、個性的なワゴンも得意とした。それなのにこれらは一代限りで終わってしまった。その理由はどこにあるのか? 一緒に考えてみよう。
【画像】スポーツカーの宝庫!一代限りで終わってしまった名車たち:ホンダ編 全40枚
ホンダS2000(1999~2009年)
1995年の第31回東京モーターショーでオープン2シーターのFR(後輪駆動車)として展示されたコンセプトカー、『ホンダSSM』の市販バージョンがS2000である。開発は上原繁氏をはじめとするNSXの開発者が担当した。
S2000の特徴はホンダとしてはS800以来28年ぶりとなるFR車であることや、オープンカーでありながら、クルーズドボディと同等以上のボディ剛性を持たせるために『ハイXボーンフレーム構造』と呼ばれるシャシーを採用し、本格スポーツカーの走りの基礎である高いボディ剛性を実現したこと。そしてフロントミドシップ配置となるパワートレインには最高出力250psを発揮し、許容回転数9000rpmというF20C型2.0L直4エンジン(前期型)を搭載したことなどだろう。
S2000の本領はサーキットでこそ発揮できる。絶対的な速さはもちろん、1995年当時に、これほどまでに高いボディ剛性を乗ったオープンスポーツカーはなかった。高い横Gが掛かった状態でも、専用開発の6速MTはカチカチと気持ちよいシフトチェンジが可能だ。
2005年のマイナーチェンジではエンジンが2.2L直4(242ps)のF22C型に変更され、足まわりのセッティングが若干マイルドになった。これは乗りやすさを求めた声に対応したもので、これを機にスロットルはDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)化された。
S2000はホンダ技研工業の創立50周年記念として企画、販売されたモデルであり、一代で終了するのは当初から決まっていたことだろう。S2000のコンセプトを受け継いだモデルが今後登場することに期待したい。
ホンダ・ビート(1991~1996年)
バブル景気の末期、ホンダからまったく新しいクルマがデビューした。それは超高級車や高額なスポーツカーではなく、『軽自動車初の2シーターミドシップオープンカー』、『価格は138万8000円(消費税含まず)』というものだった。その名はホンダ・ビート。
ビートはほぼ同じ時期に発売された軽スポーツカー、マツダ・オートザムAZ-1やスズキ・カプチーノとともに、すぐに大人気となった。
量産ミドシップ車としては世界初の、フルオープンモノコックボディを採用。ボディサイズは全長3295×全幅1395×全高1175mmで、ホイールベースは2280mm。全高の低さが目につく。車両重量は760kgだ。
ミドシップに横置きされるエンジンは0.66L直3で、64psを絞り出す。レッドゾーン8500rpmの高回転型で組み合わされるトランスミッションは5速MTだ。
サスペンションは4輪独立懸架のストラット式で、軽自動車初の4輪ディスクブレーキも装備された。美しく精悍なボディデザインは、年月が経っても古さを感じさせない。パワーステアリングは装備されていないが、ステアリングは重くなく、とにかく走りが愉しいクルマだ。
今でも1万5000台以上が現存しているというビート。実質的な後継車としてはS660(2015~2022年)が該当するだろうが、コンセプトは異なる。ビートのオーナーは『ビートは一代限りのクルマ』という思いが強いことだろう。
ホンダCR-Z(2010~2017年)
CR-Zは1.5L『i-VTEC』エンジンとホンダ独自のハイブリッドシステム『IMA』を組み合わせ、先進的で躍動感のあるデザインに、俊敏で爽快な走りと25.0km/Lの優れた燃費性能を融合したコンパクトスポーツカーである。
CR-ZをCR-Xの後続車と思われる方もいるだろう。確かに後席には大人が座るには小さいながらシートを備えた2+2シーターのコンパクトスポーツカーであり、エクステリアデザインにも共通する部分が感じられる。
だが、CR-Zの車名は『コンパクト・ルネッサンス・ゼロ』の略。従来のクーペの価値にとらわれず、新しいコンパクトカーを創造するという志のもと、原点(ゼロ)に立ち返ってチャレンジする、という意を込めたそうだ。
この当時のハイブリッドカーとしては世界初となる6速MTを設定、CVT車にはパドルシフトを採用した。専用サスペンション、ボディの軽量、高剛性化、徹底した空力処理などにより実現した、俊敏かつ安定感のあるハンドリング。当時、特に6速MT車を運転すると本当に愉しかったのを覚えている。価格も上級モデルのαで250万円(消費税込み)を切るなど、魅力に溢れていた。
ホンダS-MX(1996~2002年)
ホンダが1990年代後半に自社のミニバン、RV車で展開していた『クリエイティブムーバー』シリーズ。第一弾がオデッセイ、第二弾がCR-V、第三弾がステップワゴン、そして第四弾がS-MXである。
S-MXはステップワゴンのプラットフォームを使い、リアオーバーハングを短縮。リアドアはヒンジ式となり、右ドア1枚、左ドア2枚の非対称構成となっている。乗車定員は4人または5人で、4人乗りは前後ともベンチシート。このベンチシートは前後とも倒すと、ほぼフラットな状態にすることができた。
メカニズムもステップワゴンのものを多く使う。エンジンはB20B型2.0L直4(130ps。マイナーチェンジで140psにパワーアップ)でトランスミッションは4速コラムAT。4WD車も用意された。サスペンションはフロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーンだ。
若者の間で人気となったのが、『LOWDOWN』。標準車より15mm車高がダウンされており、エアロパーツやスポーツマフラーも標準車とは異なる、ちょっとヤンチャな仕様だ。乗り心地も結構ハードなものであった。
S-MXに直接的な後継車はなく、ステーションワゴンやその後、次々とデビューする新型車に後継を譲る形となった。
ホンダ・ロゴ(1996~2001年)
ロゴは二代目シティの後継にあたる、ホンダのタウンカーである。シティと言えば折りたたみ式小型バイクのモトコンボが積めて、ターボモデルもあった初代を思い浮かべる方が多いと思う。だが二代目は全高が低いスタイル重視のコンセプトで、ジムカーナなど競技車両のベースとしては人気があった反面、一般ユースでは実用性に欠け、販売面では苦戦を強いられた。
その反省もあって新たに生まれたコンパクトカーがロゴである。ボディスタイルは5ドアと3ドアのハッチバックがあったが、後者は欧州のコンパクトカーにも通じる、いい意味での素っ気なさを感じさせた。事実、このクラスとしては室内も広く、実用性に富んでいた。
また量販グレードのオートマチック車で100万円を切る価格設定や、ホンダ・マルチマチック車で10.15モード燃費18.0km/Lを達成するなど、高い経済性も実現されていた。
エンジンは2500rpmで最大トルクを発揮する1.3L直4SOHC(66ps)で、トランスミッションは5速MT/3速AT/ホンダ・マルチマチック(CVT)の3タイプを設定していた。
走りは静粛性の高さと優れた乗り心地を謳っていたが、高速域での安定性不足やコーナーでのロールの大きさを指摘する声もあった。改良に次ぐ改良でユーザーの声に応えたが、2001年、後継のフィットに役目を託すことになった。
ホンダ・エディックス(2004~2009年)
3座×2列の6座を独立させ、前後のセンターシートにロングスライド機構を持たせるV字シートレイアウトを採用。フロントセンターシートは子供の乗車も考慮し、万一の衝突時の安全性とドライバーの操作性への影響を徹底検証し、シートのスライド位置を設定。270mmという長いスライド量により、チャイルドシートを装着した際の子供の乗車に対応するとともに、隣の人と肩をずらす形で、快適な横3人掛けを実現していた。
また、3×2のレイアウトを活かし、4285mmという短い全長ながら6名乗車時でも439Lのラゲッジスペースを確保。さらにリアシートをすべて格納すれば、前席に3名乗車しながらMTBを3台も積載可能なラゲッジスペースが出現した。
シャシーはワイドトレッドであり、乗員すべてがホイールベース内に収まるため、前後荷重の変化は少ない。バランスが良いという3×2パッケージの特徴を活かし、優れた操縦安定性としなやかな乗り心地を実現した。
エンジンは発売当初は2.0L DOHC i-VTEC(156ps)と1.7L VTEC(130ps)の2種類の設定だったが、2006年のマイナーチェンジで1.7Lが廃止され、新たに2.4L DOHC i-VTEC(162ps)が加わった。
そんなエディックスは全幅が広いと言っても1795mmに過ぎず、最小回転半径4.9mと小回りが利くので、狭い道でも個人的には扱いにくさはなかった。車内のV字型レイアウトは前席と後席の乗員の間でコミュニケーションが弾んだが、一代限りで販売を終了してしまった。後継はフリードと言うことになるだろう。
ホンダ・アヴァンシア(1999~2003年)
初代アヴァンシアは四代目インスパイアをベースに開発された、ステーションワゴンタイプの国内専用車だ。初代とわざわざ書いたのは、二代目アヴァンシアも発売されたが、これは中国専用車だったから。ここでは一代きりのモデルとして紹介する。
ステーションワゴンタイプと記したが、アヴァンシアは一般的なセダンをベースにしたワゴンより若干背が高い(全長4700×全高1500mm/L、Vタイプ)。ホンダは『スタイル、パッケージング、走り、快適性のすべてに新しい価値を追求し、多様化するライフスタイルに対応できる上級車』として、アヴァンシアを提案。それを独創のスタイル『アーチキャビンフォルム』によって実現したという。
センターウォークスルー、ミニバン並みの高い室内高、高めのシート高、上質なインテリア、上級車にふさわしい静かな室内空間など、乗ればわかる価値が盛りだくさんだ。
エンジンは3.0LV6 VTEC(215ps)と2.3L直4 VTEC(150ps)の2種類で、トランスミッションはホンダ初のゲート式インパネシフト。V6エンジンのVタイプは、ホンダ初の5速ATを採用した。
ホンダの新しい試みから生まれたアヴァンシアであったが、日本では一代で販売を終了することになってしまった。同じホンダのアコード・ワゴンがライバルとなってしまい、販売的には成功しなかったようだ。
ホンダ・エアウェイブ(2005~2010年)
エアウェイブは初代フィットと同じホンダ・グローバルスモールプラットフォームを使う、5ナンバーサイズのコンパクトなステーションワゴンである。フィットよりずいぶんと大柄に見えるが、サイズは全長4350×全幅1695×全高1530mmで、ホイールベースはフィットより100mm延長した2550mm。フィットの全長が3830mmだから、これよりはかなり全長が長いことがわかる。
当時話題になったセンタータンクレイアウトも受け継いでいるから、エアウェイブの居住空間と荷室はかなり広い。
主観だが、走りも良かった。プラットフォームの素性の良さとボディ剛性の高さもあるし、ホイールベースが延長されているため、乗り心地はソフトだが操縦安定性は悪くない。ルーフのほぼ全面がガラスになるスカイルーフ仕様も存在し、開放感のあるドライブが楽しめたことも付け加えておく。
これも主観だが、エクステリアデザインではリアのオーバーハングが長すぎるのが、バランス的に残念だった。どの層に向けたのかわからないボディデザインも、販売的に損をしていると思えた。乗ればいいクルマだったのに……である。
エンジンは1.5L直4SOHC VTEC(110ps)で、トランスミッションはCVT。フィットに搭載された1.3Lの設定はなかったが、1.5Lの4WD車は用意されていた。
2011年にフィット・シャトルが発売され、エアウェイブは後継を譲る形になった。ちなみにフィット・シャトルの方が、エアウェイブよりデザインも走りもスポーティになっているのは、その反省が生かされたからだろうか?
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変な6人乗りのエディックス、対して燃費も良くなければ速くもないCR-Z、特に欠点も無いけど、飛び抜けて良いところも無いロゴ。