まるで最初から左ハンドル仕様だったかのような改造は見事
中国との南の島をめぐる争いで「戦争も辞さない」と言うフィリピン・ドゥテルテ大統領の強引な政策が話題になっているが、このところフィリピン経済は順調に発展している。マニラなどの都市部に旅行した人は、最近のフィリピン市内の新車が急増していることに驚くだろう。
「トラックは前」「バスは後ろ」なぜエンジン搭載位置が異なるのか
しかし一緒にバイシクル(バイクタクシー)と呼ばれるオートバイに付けた側車付きの乗り合い車や、ジプニーと呼ばれるトラック改造の乗り合い自動車が混在し、50年前と現代がごちゃ混ぜになった風景に何とも言えない活気を感じてしまうだろう。
そんな中で目を引くのが、いすゞの小型トラック「エルフ」の多さだ。20年くらい前の日本製トラックが元気に動き回っている。〇×工務店などと書かれた日本で使われていたトラックが、名前はそのままで左ハンドルに改造されている。塗装を補修しても日本語の名前はわざわざ残すようで「日本製だということを誇りに思う」らしい。
フィリピンはバス、トラック重機などの中古車の輸入は許可されているが、乗用車やスポーツカーなどの中古車は輸入禁止だ。しかし、そこはフィリピン的というか、SUVやワゴンは勝手にトラックの類だと解釈して、輸入されている例も多い。驚くのは、20年以上も古い右ハンドルしかない日本製のクルマが、見事に左ハンドルへ改造されていることだ。この国は右ハンドル車は走行禁止で、すべてが左ハンドルだ。フロントウインドウ側のパネルは新たに作り直したりしてもある。
かなり使い古したエルフを見せてもらったが、初めから左ハンドル車のように、見事に改造されている。しかしよく見ると、本来運転席にあるウインドウの上下スイッチが助手席についていたり、右側の助手席にアクセルのストッパーが残っていたりする。ハンドルとアクセル、ブレーキ、クラッチペダルの位置を変え、運転席のメーターと助手席のグローブボックス部を入れ替えているのだ。「フィリピン人は器用です」と現地の人は屈託がない。
「最近は、見事に左ハンドルになっています。なかなかの技術ですよ」と現地の日本人も言う。日本では30万kmくらい走って値段が付かない過走行のトラックが、整備され塗装を施して売られているわけだ。20年前のエルフの相場が日本円にして80~100万円だという。こうしたクルマは、マニラに近いスービック湾に水揚げされて改造を施している。スービックは元アメリカ海軍が使っていた港で、現在は経済特別区として発展している。
それにしても、左ハンドルへのコンバートの速さとうまさは驚くほどだし、日本では廃車になる中古車が、これほど活躍していることに感動すらする。誰がいくら儲けているかは知らないが「もったいない」精神がフィリピンではしっかり生きている。
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