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打倒フェラーリ&NSX 新型コルベットがFRを捨てたギリギリの決断と成果

掲載 更新 29
打倒フェラーリ&NSX 新型コルベットがFRを捨てたギリギリの決断と成果

 アメリカンスポーツの最高峰、シボレーコルベットが7年ぶりにフルモデルチェンジし、8代目へと生まれ変わった。

 1976年まで使用していたサブネーム、スティングレィを復活させるとともに、なんと約65年の歴史を持つ、FR(エンジンをフロントに積みリアを駆動する)の駆動方式を、MR(ミドシップ、後の車軸の前にエンジンを搭載しリアを駆動する)へと、8世代目にして初の大変革を敢行したのだ。

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 すでに2020年1月10日に日本でも発表され、予約受注が開始されている。価格は、2LTクーペが1180万円、3LTクーペが1400万円(いずれも右ハンドル)。

 その8代目コルベットを、アメリカ・ラスベガスとその近郊、サーキットからワインディングロード、一般道まで、モータージャーナリストの渡辺敏史氏が徹底試乗した!

文/渡辺敏史
写真/ゼネラルモータース ゼネラルモーターズジャパン
初出/ベストカー2020年4月26日号

【画像ギャラリー】アメリカ人の「魂のヒーロー」歴代コルベット約65年の軌跡

FRを捨てなぜミドシップを選んだのか?

完全新設計の8代目コルベットのエクステリアデザインは、ジェット戦闘機がモチーフ

2014年に登場した先代C7コルベット

 GMがシボレーブランドで販売するコルベット。初代=C1の登場は1954年と、銘柄別でいえば最も長い歴史を持つこのスポーツカーは、この新型が66年目にして8代目=C8となる。

 その老舗の暖簾を守り続けるために選択したのは、史上最もドラスティックな変貌だ。

 代々のコルベットは、モノコックではなくフルフレーム構造のシャシーに軽量なファイバーボディを組み合わせた2シーターFRの体を採ってきた。

 搭載されるエンジンはごく一部の例外を除きアメリカ車の大定番といえるOHV・V8。サスペンションは2代目以降、駆動輪である後軸側にリーフスプリングを横置きしてバネ下重量を低減するユニークなメカニズムを用い続けている。

 対してC8が採ったのは2シーターのリアミドシップレイアウトだ。シャシーはフルフレームではなくフェラーリF8トリブートやホンダNSXなどが採用するアルミスペースフレーム構造に、サスは4輪ともにコイルスプリングを用いるダブルウィッシュボーンに改められている。

ボディサイズは全長4630×全幅1934×全高1234mm。エクステリアデザイナーは切り立ったサイド面と水平な上面を鋭角なエッジで繋いだ線がクルマ全体を一周していてトレー状になっているのがC8の特徴だという

ミドに積まれるエンジンは、6.2Lで最高出力は495ps、最大トルクは637Nmを発揮するOHVのV8。気筒休止システムを搭載するほか、最大1.2Gという旋回時においても確実な潤滑を維持するドライサンプ式を採用。OHVというところがアメ車らしい

 この期におよんでのミドシップ化の決断、その背景にはスポーツカーの極端な高性能化、さらにレーシングパフォーマンスも関係している。

 もはや700psオーバーでも驚かなくなった市販スーパースポーツ領域では想定どおりのトラクションを得るのがトランスアクスルでも難しく、コルベットのスポーティネスを証明するうえで重要なGTEやGT3カテゴリーでも戦闘力の低下が顕在化……とあらば、もう残された手はミドシップしかなかった、という訳だ。

 ともあれFRは徹底的にやり尽くした、と話を聞いたエンジニアの顔は晴れやかでさえあった。

 いっぽうで、そのリアゲートに収まるエンジンはLT2と呼ばれるスモールブロックのOHV・V8。アメリカの最も伝統的な形式のエンジンだ。

 中身はC8に合わせて最新のアップデートが加えられており、最高出力は495ps、最大トルクは637Nmを発揮する。

 これに組み合わせられるトランスミッションは新開発のGMトレメック製8速DCTだ。動力性能は0~60マイル(96km/h)が2.9秒、最高速は約320km/hと、これは先代C7になぞらえれば650hpのZ06と同等以上ということになる。

外観以上に斬新なデザインのコクピット

先代モデルよりも600mmも前に出された運転席はドライバーズオリエンテッドの作りで、戦闘機のコクピットのようだ。ここまで運転席と助手席がはっきりわかれたコクピットも珍しい

こちらが右ハンドルの日本仕様

デジタル式の液晶ディスプレイを採用

運転席と助手席を寸断するかのような、エイのひれのようにも見える壁があり、そこには各種スイッチ類が並ぶ

 最新のインフォテインメントや大胆なスイッチレイアウトなどで構成される内装は、総じて使い勝手に極端な不自由は感じなかった。

 戸惑ったといえば室内灯部に置かれたハザードスイッチくらい、困ったといえば鞄などの置き場がシートバックにもないということくらいだろう。

 ちなみに代々のコルベットの美点である積載力的には、車体前後に計357Lのトランク容量を確保している。

 こういう日常性において特筆すべきは乗り心地のよさだ。日本仕様のコルベットは電子制御メカニカルLSDを筆頭に運動性能を高めるZ51パッケージが標準となるが、そのサスペンションのセットであっても路面アタリは柔らかく、揺すりや突き上げなどの不快要素は少ない。

 ロードノイズ系の侵入もよく抑えられており、総じて快適性はポルシェ911にも比肩するほどだ。

シートは快適性重視のコンフォートタイプからバケットタイプまで3種類を設定。日本仕様は2LTに中間のGT2、3LTにコンペティションスポーツバケットシートが備わる

エンジン後方のスペースにはルーフを置くスペースが設けられている

 もちろん運動性能も大きな進化を遂げている。コーナーではパワーをしっかりかけていけどもリア側はどしっと座っていてブレークの兆候はやすやすと示さず、滑り出しにも急激な破綻はない。

 メーター読みながら定常1.3Gの旋回性は4駆の日産GT-Rにも並ぶ勢いで、それでも綺麗に中立的に向きを変えていく所作をみるに、これまでとは芸風を異にする新しいダイナミクスが得られたことを実感する。

 ストックでニュル7分30秒切りというパフォーマンスは伊達ではない。新型コルベット侮るべからずだ。

ミドシップを採用したとはいえコルベットらしさがしっかりと残されていた。フェラーリやGT-Rとの走りの対決が楽しみだ

■シボレー コルベット主要諸元(北米仕様)
ボディサイズ:全長4630×全幅1934×全高1234mm
ホイールベース:2722mm
トレッド:前1648 後1586mm
乾燥重量:1530kg
エンジン:V型8気筒OHV(LT2)
ボア×ストローク:103.25×92mm
総排気量:6153cc
圧縮比:11.5
最高出力:495hp/6450rpm
最大トルク:637Nm/5150rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:電動パワーステアリング
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(ブレンボ製)
ローター径:前321×30 後338×26(Z51 前345×30 後350×27)mm
キャリパー:前後4ピストン(Eブースト アシスト付き)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR19(8.5J) 後305/30ZR20(11J)

■日本での価格:2LT/1180万円、3LT/1400万円。右ハンドル車。いずれも消費税10%込み。2020年1月10日から予約開始

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みんなのコメント

29件
  • 日本国内ではコルベットスティングレイを名乗れないのは残念だけどそれ以外は魅力の多い1台かなと思う。
  • コルベットの開発時に【打倒フェラーリ!】ではあるかもしれませんが、【打倒NSX】で作られた車ではないと思いますよ。。まっ、知らんけど、、。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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