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【超速攻試乗】R35GT-Rの2017年モデルに中谷明彦がヨーロッパで乗った(インカー動画あり)

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【超速攻試乗】R35GT-Rの2017年モデルに中谷明彦がヨーロッパで乗った(インカー動画あり)

アウトバーンとスパ・フランコルシャン・サーキットで全開試乗

2007年に登場して以来すでに9年の歳月経て、今なお世界のス ポーツカーカテゴリーでトップパフォーマンスを維持している日産GT-R。昨年2015年モデルで久しぶりにGT-Rに触れ、コンフォート性とハンドリン グ性により磨きがかけられていることを知り感心させられた。今回は2017年モデルとして、さらに大幅な進化を果たしたという最新型をテストドライブして きた。

【最速公開】GT-R NISMO 2017年モデル実車を捕捉!

今回テストステージに選ばれたのはヨーロッパだ。それも速度無制限区間を含む独・アウトバーンと難攻不落なサーキットとして名高いベ ルギーのスパ・フランコルシャンサーキット。もともと高速性能を謳うGT-Rのテストステージとしてはアウトバーンが主で、開発の主体は独・ニュルブルク リンクサーキット(以下ニュル)にあった。ニュルでのラップタイムで他を圧倒する記録を出すことが命題であったはずのGT-Rは、2013年にGT-R NISMOにて、7分8秒679という量産モデルとしては限界とも思える異様な速さを記録。

その後はむしろ欧州プレミアムブランドとの競合性を高めるため、コンフォート性や質感を求める傾向に変わり つつある。だからといって単に豪華さを追求し乗り心地をよくすればいいということではなく、GT-Rとしての高性能をさらに高めながら新たな課題に取り組 んだというのが実際のところだ。国内で行われた2017年モデルの発表会で実車を見て、ビッグマイナーともいえるような極めて手間ひまのけかられた姿から、走への興味を大いに掻き立てられたのだ。

フランクフルト経由、デュッセルドルフの空港に到着すると2017年モデルがズラっと並べられていた。ここからアウトバーンを北上しベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットまで約200kmの区間が第1ステージだ。

車両に乗り込む。当然ながら左ハンドルの欧州仕様であり、速度計は340km/hまで目盛られている。欧州仕様=速度リミッターなしという仕様なわけで、アウトバーンでは超高速域走行が試せるはずだ。

ドライビングシートに着座するとシートのクッションがソフトになり、身体への当たりが緩和されて座り心地がよくなっていることに気がつく。かといってサポート性は損なわれておらず、ドライバーの体重でソフトな部分が沈み込むことで身体全体が包み込まれるようにサポートしてくれるのだ。快適さとサポート性をうまくバランスさせているな、という好印象を持った。ただ残念なのはランバーサポートが設定されていないことだ。長距離のドライビング、またはサーキットで のハードなブレーキングでは、ペダルの反力をランバーでしっかり支える必要があるので、ランバーサポートが省略されているのは気にいらない。

さらにドライビングポジションを調整しているときにパドルシフトがコラム固定からステアリングスポークに変更されていることがわかった。これは由々しき問題 だ。パドルシフト装備方法は大別するとステアリングコラム固定と、ステアリングスポーク式の2種類がある。これまでコラム固定式を採用しているのはフェ ラーリやランボルギーニ、アストンマーチンなどのスーパーカーや三菱のランエボXそして日産GT-Rだった。一方ステアリングスポーク設置方式はポルシェ やAMG、BMWなどのプレミアムブランドの多くが採用する。

コラムかスポークかはドライビングスタイルやステアリング操作の考え方で変化 する。サーキットでは送りハンドルが主流で、手がクロスするような操作は行わない。したがってコラム固定式でないと旋回中転舵時の変速が不可能になってし まう。一方F1などのように90度以上ステアリングを転舵してシフトチェンジすることがないのでステアリングを握り変えることがないようなクルマではステ アリングスポーク式で十分な操作性が得られる。今回GT-Rがコラム式からスポーク式に改めた背景には北米など直線区間の多いマーケットからの要望が大き く影響したようだ。

ついにエンジンを始動し新GT-Rの走りを試す!

本当に300km/hで会話が楽しめるクルマになった

エンジンを始動し、シフターをDレンジにエンゲージする。従来モデルにくらべ格段に静かになったエンジン音、そしてシフ ト時のガチャガチャ音もなくNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)は普通の乗用車のように静かだ。そして走り出してもその傾向は変わらない。 これが本当にGT-Rなのか!? と思えるほどに静かで快適なクルマに生まれ変わっていることがわかった。

さらに低速域でもはっきりとわか る直進性のよさをも身につけている。路面の轍やアンジュレーションを受けても直進軌道は乱れず、しっかりとしたステアリング直進の座り感がある。直進でも グリップ感を感じられるというのは重要なことで、燃費追求からホイールアライメントのトーインをゼロに強要された最近のクルマ達からは、久しく感じ取れな かった欧州プレミアムのよさに準ずる好感触な感覚を身につけている。

アウトバーンに入り速度を上げてもそれは変わらない。GT-Rデビュー当時、300km/hで走行していてもステアリングは直進を維持し、助手席の同乗者と 普通の声で会話ができると表現されていたが、実際はそこまでの安定感、静粛性には達していなかった。だが2017年モデルとなった今、本当にその領域に達 したと思える。今回速度無制限エリアが少なく、220km/h前後までしか速度を上げられなかったが、そのレベルではまさに快適。圧倒的な直進安定性を保 ち、路面からの突き上げも穏やかでロードノイズやエンジンの騒音、風切り音などあらゆるNVHが向上させられていることを確かめられた。

そしてベルギーの「Circuit de Spa- Francorchamps(スパ・フランコルシャン・サーキット 以下:スパ)」に到着。スパはF1GPも開催される世界屈指のハイスピードサーキット で、超高速のアップダウンからなる「オー・ルージュ(赤い水)」と呼ばれる魔のコーナーセクションがあることでも知られる。

GT-Rのテス トステージとして何故スパが選ばれたのか。それはR32GT-RがグループAカテゴリーで活躍した1991年に遡る。フルタイム4WDであるR32GT- Rがスパ24時間レースを制したことが欧州では大きな話題となり、GT-Rの知名度を飛躍的に高め、現代にまで通ずる崇高なイメージを確立した。そういう 場所として、開発の聖地であるニュルと同等に崇められているからだ。

とはいえスパは「スパ・ウェザー」という言葉で言い表されるように、変わりやすい天候により、コース各所でコンディションが激しく変化することでも知られる。テスト当日も曇り空が時折雨粒を落とす不安定な天候となった。

ついに難攻不落のスパでGT-Rに全開のムチを入れる!

ウエット路面の混在するコンディションでも不安感はない

僕自身は以前に一度だけスパでレースをしたことがある。2000年のポルシェ・スーパーカップ・スパ・ラウンドにスポット参戦したのだ。その時も2回のプラ クティスセッションと予選は雨。決勝のグリッドに着いた途端に晴れていきなりスリックでレースするというスパ・ウェザーに翻弄された経験がある。結果は 散々となってしまったがコースを知ることはできた。

そんなわけで今回にテスト走行では助手席に現地NISSANが用意した案内役のインストラクターが同乗したが、僕のキャリアを知って静かに同乗してくれていた。

スパのもう一つの名物コーナーは「ラ・ソース(La source)」と呼ばれる第1コーナーだ。かつては一般道だったホテル前の鋭角ターンを抜け、急激に下り一気に駆け上がるオー・ルージュへと繋がって行 くのだ。今回はこのラ・ソースのアウト側ホテル位置からコースインするという日常的には経験できない変則的なコースイン方法が取られた。つまりコースイン すると最初から超高速オー・ルージュへ向かってかけ下って行くことになる。

最初の周回はもちろんウォームアップを兼ねゆっくりと各所を確認しながら走行する。所々ウエットで川が流れている箇所も少なくない。

そんななかで、しかし相変わらず2017年モデルは極めて安定して走行してくれる。ウォームアップとはいえ車速は100km/hを超える領域で、一般道に例 えれば高速走行をしているわけだが、アウトバーンで感じた直進安定性とグリップ感は変わりなくドライバーに大きな安心感を与えてくれている。

2ラップ目に入りラ・ソースをかけ下りオー・ルージュへ全開で突入していった。車速はあっという間に200km/hを超えボトムラインでブレーキングしながらアップヒルを駆け上がる。

この難しいコーナー区間をGT-Rは極めて安定し狙ったラインを正確にトレースしながら微妙なアクセルワークにもリニアに反応して何事もないようにクリアできた。

オー・ルージュを安定してクリアできれば続く最長直線部の「ケメル・ストレート(Kemmel Straight)」での最高到達速度が大きく変わる。今回はウエットだったが、GT-Rの速度は230km/h近くまで高める事ができた。

そこから続くコーナーセクションは下りが多く、速度マネージメントが難しい。新型のスロットルマネージメントは微妙なアクセルワークに対しリニアなトルクコントロールが可能となっていて、NAエンジンのようなコントロール性を発揮してくれている。

そして4WDならではの強力なトラクションが高速域での車速の維持に有要なのだ。

自在なライントレースが可能になったハンドリング

GT-RがAWDを捨てることはないと明言

ハンドリングも大きく改善した。一般道で感じたNVHの高さ、しなやかなサスペンションの動きはサーキットではどうかと思ったが、大きく車体ロールを起こす こともなく、ロール自体も大きく感じない。フラットな姿勢が維持され、切り増し応答も確保でき、自在なライントレースが可能だった。もちろんドライ路面で タイヤのグリップがより強く発揮されれば、ロールモーメントが増えるはずだが、空力や車体の前後剛性バランスが絶妙に取られていて不安感は皆無だ。

今回のモデル進化では、とくにボディとサスペンションチューニングに注意が払われたという。車体剛性は板圧の向上や溶接、接着など手の込んだ作り込みを施し た。サスペンションはバネレートを以前の半分レベルにまで落としている。加えてビルシュタインのショックアブソーバーのチューニングを進化させ、万全な ロードホールディングと安定性を達成できたという。

前後のイニシャルトーインはイン側に強められ、フロントで1.2~1.7mm、リヤは1.9~2.8mm(それぞれ質量条件によって変動)となったが、車体剛性が高められたことで、そうした微小なセッティング変更でも明確な挙動変化を引き出せている。

さて冒頭に述べたパドルシフトレバーのステアリングスポーク配置だが、スパのような超高速サーキットではステアリングの最大切り角が90度に達しないので、 操作上の不具合はない。ただタイトターンの多い低速コースやジムカーナ、ドリフトなどの場面では使い難さを感じるだろう。

スパは高速コース ゆえ空力効果も確認できたが、Cd値(空気抵抗値)を大きく変化させず、CLF/CLR(前後の空力リフト)を限りなく同一として、フラットな車体姿勢を 保ことも直に感じ取ることができた。その姿勢が安心感、安定感を与え、ステアリングの切り込み時にイニシャルアライメントの確かな効果を引き出すことに貢 献している。

今回2017年モデルを取りまとめた、田村宏志チーフ・プロダクト・スペシャリストによれば「GT-Rが4輪駆動をやめること はあり得ない」と断言してくれた。ハイパワー車にAWDは必須と考えている僕には嬉しい言葉で、GT-R GT3がレギュレーションにのっとりFR化されているが「レースはレギュレーションがあるから仕方ない」との言葉を聞いて安心した。

最高出力で20馬力向上し、トルクバンドも60%高められたエンジン特性向上で最高速やラップタイムも速くなっているはずだ。また2.8秒という量産モデル世界一だった0-100km/h発進加速タイムもより強化されたに違いない。ゼロ発進加速についてはローンチコントロールを使用するが、じつはモデルイヤーによって設定の有無が存在する。07/08年モデルはローンチ発進可で(4500rpm/VDC-R且つRモード)、09/10年モデルではローンチコントロールが廃止されていて、11年モデル以降に再設定されている(4100rpm/VDC-R且つRモード) 。そしてもちろん今回の2017yモデルにも備わる

今から国内デビューが待ち遠しくて仕方がないが、その暁にはいよいよ夢の「筑波サーキットラップタイム1分切り!」が達せられるに違いない!

https://youtu.be/MW2LJHwHzEg

https://youtu.be/5W4zxFTHV6A

(文:中谷明彦)

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