実用的で堅牢な大型オフローダー
執筆:John Evans(ジョン・エバンス)
<span>【画像】日産パトロール(サファリ/Y61型)と新型ランクル 欧米で買える日産のSUVも 全90枚</span>
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1990年代、筆者はSUVやキャンピングカーの専門誌の編集に携わっており、日産パトロール(サファリ)との良い思い出が沢山ある。この大きなSUVで、沢山のキャンピングトレーラーを牽引したものだ。
日産パトロールの歴史は1951年までさかのぼるが、筆者が乗っていたのは、第5世代に当たるY61型だった。英国では1998年から2009年まで販売されており、途中、2005年にフェイスリフトを受けている。
日本市場ではサファリ、海外市場ではパトロールと呼ばれ方は違うものの、日産ファンの間ではY61型と呼ばれることが多いクルマだ。呼び名はどうあれ、ラダーフレームのシャシーに四輪駆動システムを組み、大きな7シーターのボディを搭載したSUVに変わりはない。
筆者が乗っていたパトロールは英国仕様で、エンジンは2.8Lの直列6気筒ディーゼル。インタークラー・ターボが付き、トルクが太く滑らかに回転した。四輪駆動システムも、これ以上不要なほど機能的だった。
MTを上手に操作すれば、そこそこ素早く加速させることもできた。車重は2335kgもあり、牽引重量は3500kgまで。大きなキャンピングトレーラーも問題なく引っ張ることができる、頼もしいクルマだった。
安定性に優れ、運転席からの視界も良好。ただし、観音開きのテールゲートには片方しかワイパーが付いておらず、条件によっては後方を確認しにくい時もあった。
海外の支援活動にも活躍
ステアリングホイールの感覚はウールのように曖昧で、操縦性は鈍重。ブレーキはスポンジーで、洗練度が高いとはいえない。装備は充実しているが、Y61型パトロールはシンプルで飾らない、四輪駆動の実用車としての色が濃い。
そのおかげで、海外の支援活動にも日産パトロールは活躍した。当時はニュース映像で、白く塗られたY61型が頻繁に見られたものだ。受けるイメージは、様々だったかもしれないが。
多くの英国人は、大型のオフローダーとしてランドローバーを選んだ。信頼性を重視する向きは、トヨタ・ランドクルーザーか三菱ショウグン(パジェロ)を。日産パトロールは、あまり主流の選択肢にはならなかったといえる。
Y61型パトロールには、ロングとショートのホイールベースが用意されていたが、今回取り上げるのはロング版。現在英国で流通しているパトロールに、ショート版は存在しないようだ。
英国に残っているY61型は多くない。すべての世代を通して、路上を走れる状態のパトロールは1000台ほど。中古車サイトを探しても、数台しか見つからない。
英国での中古車価格は、3500ポンド(54万円)から1万ポンド(155万円)の間。殆どが3.0 Diと呼ばれる仕様で、4気筒エンジンが158psと36.0kg-mを発揮する。2000年に、131psの2.8 TDからバトンタッチしている。
2003年にショート・ホイールベースのパトロールが英国では販売が終了。トリムグレードが見直され、ロング版にフォグライトとレザーシート、サンルーフが標準装備となったSVEが登場している。
能力に長けたオフローダーを妥当な金額で
2005年にフェイスリフトを受け、フロントマスクを中心にリフレッシュ。インテリアも新しくなり、標準装備の充実度も高められている。3.0 Diではターボに関する不具合が報告されていたが、この時点で改良を受け解消した。
とはいえ、Y61型は信頼性が高い。特に前期の2.8Lモデルは、整備費用も安く済み、構造もシンプル。英国には日本のSUVを専門に扱う業者があり、部品もまだ入手しやすい状態にある。
パトロール・ファンで構成されたオーナーズクラブも、英国にはある。アドバイスも受けやすいだろう。妥当な金額で手に入れられる、タフで能力に優れたオフローダーこそ、Y61型の日産パトロールだと思う。
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
前期2.8Lエンジンは、タイミングベルト。グロープラグが焼き付くことがある。シリンダーヘッドの分解は、専門家に依頼した方が良いだろう。バイオ燃料の利用が原因で、インジェクター・ポンプのシールなどへ不具合を招くこともあるようだ。
後期の3.0Lエンジンはタイミングチェーン。排気ガスの再循環バルブを塞ぎ、パフォーマンスを高める改造を施している例も。また初期の3.0Lエンジンでは、ターボのトラブルが発生しやすい。
トランスミッション
スムーズに変速でき、クラッチに滑りがないか確かめたい。特に2002年以前のモデルでは、5速が弱いので、試乗時での確認は忘れずに。
ブレーキとサスペンション、ステアリング
ブレーキは効きが弱く、多くのオーナーはパッドとディスクを高性能なものへ交換している。ブレーキの配管はスチール製で錆びがち。
サスペンションのブッシュはヘタるが、スーパープロ社などのウレタン製へ交換するアップグレードは人気の1つ。サスペンションを交換し、乗り心地と操縦性を改善することもできる。
ステアリング系はジョイント類に不具合が出やすいが、社外の対策品を購入できる。オフロード・ファンは、指にダメージを与えるキックバックを減らす目的で、ステアリングダンパーを取り付けるようだ。
ボディ
フロントフェンダーに取り付けられた、樹脂製フェンダーアーチ付近が腐食しやすい。塗装に気泡状の膨らみがないか確かめたい。
フロント・クロスメンバー付近のサビは一般的。英国のオーナーは、シャシーの標準的なサビ、と話している。リアのサブフレーブも、かなり錆びやすい。同時に下回りを覗いて、岩で擦った跡がないかなども確かめたい。
インテリア
カーペットなどが湿っていないか確かめる。渡河などのオフロード走行で、水が侵入しがち。パワーウインドウとエアコンの動作もチェックポイント。
オーナーの意見を聞いてみる
ザック・ドーウェン:英国・日産4x4オーナーズクラブ代表
「ランドローバー・ファンの家族で育ちましたが、みんながクルマの維持に苦しんでいました。その様子を見て、以前から日本車を買おうと決めていたんです。しばらく日産テラノに乗っていましたが、パトロールに乗り換えています」
「純正のままで、遥かに優れたオフロード・モデルだと感じました。前後に堅牢なリジットアクスル備え、センターデフ・ロックも付いていますからね」
「信頼性でやや劣る後期の3.0Lモデルより、自分は2.8Lエンジンの方が好きですね。パトロールを2台所有していますが、片方の3.0Lエンジンも、2.8Lへ載せ替えています」
「日産パトロールは、目的に合致した、良くできた実用車です。質感も悪くありません。パリ・ダカール・ラリーでの活躍など、モータースポーツとのつながりも持ち合わせています」
知っておくべきこと
3.0Lディーゼルなら、NADSと呼ばれるシステムにも注意したい。日産アンチ・デトネーション・システムと呼ばれる異常燃焼を防ぐシステムで、本来は4気筒ターボ・ユニットを守るために付いている。ニードル・バルブを取り付けることで、不具合を防げる。
英国ではいくら払うべき?
3500ポンド(54万円)~5999ポンド(92万円)
2.8 TDと3.0 Diから英国では選べるが、走行距離は長いもののでも許容範囲が中心。1993年式の3.0 Diで、14万kmほどの例を見つけた。
6000ポンド(93万円)~7499ポンド(115万円)
2002年以降の3.0Lエンジンモデルが英国では選べる。走行距離はそれなりでも、整備記録がちゃんと残っている例が多いようだ。
7500ポンド(116万円)以上
2004年から2007年式の、状態の良いパトロールが英国では出てくる。15万2000km走った2004年式3.0 Di SVEを、7995ポンド(123万円)で発見した。
英国で掘り出し物を発見
日産パトロール(サファリ)GR 2.8 TD SE ツーリング5ドア 登録:1998年 走行距離:19万1500km 価格:5890ポンド(91万円)
ワンオーナーのY61型。整備は毎回、ディーラーで受けてきたという。そのおかげで、エンジンの滑らかな状態が保たれているようだ。
日産のディーラーでタイミングベルト交換が済まされたばかりで、新しいオフロード用タイヤも履いている。シャシーには溶接で修復を受けた部分もあるというが、状態は良好といえる。
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みんなのコメント
シャシをの出来が良いし、左右バランスの安定感はランクル以上。
ただ錆びやすいとか耐久性の面で不安が
日本では極悪な燃費のガソリンモデルしか残されなかったのは残念ですね。
あの路線のまま販売し続ければ陽の目も浴びたのではないでしょうか