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ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 中編

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ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 中編

沢山の派生版が誕生したエリーゼ

執筆:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)

【画像】ロータス・エリーゼ シリーズ1と2 派生モデルのエキシージとエヴォーラも 全60枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


1995年に発売が始まったロータス・エリーゼ・シリーズ1。初めに生まれた派生版が、100台限定のスポーツ135。すぐに可変バルブタイミング機構を備えた、145psの111Sが続いた。

驚かされたのが、サイクルフェンダーをまとった340R。ラッセル・カー氏のデザイン案に、非常に似た限定モデルだった。ロードスターだけに留まらず、クーペボディのエキシージも誕生している。

エンジンは1.8L 4気筒のローバーKシリーズ。MGFに搭載されていたユニットだが、軽量なエリーゼに積まれたことで、フィーリングはより活発。ヘッドガスケットの不具合など、歓迎されないイメージも引き継がれたけれど。

ただし、今回ご登場願ったイエローのエリーゼには無縁のようだ。「聞いていた情報が信じられないほど、とても信頼性は高いですよ」。と笑顔で答えてくれるのは、ジョン・マクステア氏。ヘセルで61番目に作られたシリーズ1のオーナーだ。

「もし同じKシリーズでも、フリーランダーなど別のモデルのオーナーは、ただ乗ってキーをひねるだけ。でもエリーゼのオーナーの場合は、ある程度のメカニズムに関する知識や、理解しようという気持ちがあります」

「オイルレベルを確認し、すべてが適正な温度に上昇するまで待つのも普通。スーパーカーと同等の注意を払って乗るはずです。それが理由でしょうね」

彼がエリーゼ・シリーズ1を購入したのは18年前。ロータス・エンスージァスト・オーナーズクラブ、SELOCのメンバーのなかでも、選りすぐりのエリーゼ・ファンだ。

低速域での楽しさはひとしお

「以前から大好きでした。ある週末にエリーゼを借り、運転して数時間後にはこれを買わなくては、と考えていたんです。3年以上連続して所有している唯一のクルマ。体が動いて乗り降りできる限り、所有し続けようと思っています」

「エリーゼに乗るのは週末だけ。妻は一緒に乗ってくれないので、いつも1人でのドライブです。自分だけの時間が作れる時は、エリーゼを連れ出します。攻め込んだ運転はしませんが、かといってダラダラ走ることもありません」。とマクステアが話す。

「安全に活発に走らせることができる、郊外の道を選びます。そんな場所では、エリーゼが本当にイキイキとするんです。ワインディングを思いきり楽しんでいる最中、スピードメーターを見ると速度は90km/hほど。低速域での楽しさはひとしおです」

「30km/hから50km/hでも、楽しめる場合もあります。乗り込むのはちょっとしたイベントですが、こんなクルマは他にありません。シンプルな運転環境も特別です」

「道を問わず、運転する道具として、わたしが所有してきたクルマのベスト。アストン マーティンも好きでしたが、1台を手放すことになってお別れしたのは、アストンでした」

OAHのナンバーもオリジナルのまま。ショックアブソーバーもコニ社製のままだ。「このクルマ並みの状態のエリーゼは、英国に5台程度でしょう。通常、寿命の長い社外品に交換されますから」

GMに協力を仰いだロータス

マクステアが続ける。「MMCブレーキも備わっています。アルミとセラミック素材を複合したもので、アメリカのランキシド社によって鋳造され、ハイドロリクス社でマシン加工されたディスクです」

「ステルヴィオ峠でのテストでは、16万kmの寿命があると証明されています。制動力は非常に強く、サーボも必要ありません。ただし高価。ロータスらしく、コストに関係なく初期のモデルへ搭載されています。その後、鋳鉄に置き換わりましたが」

ロータスの計画では、当初の4年間で3000台が売れれば御の字だった。初年度の想定は、たった400台。しかし21世紀が始まるまでに、1万台の注文をエリーゼは集める。

1996年、倒産しつつあったブガッティはロータスの存続を目的に売却を決定。それも、オーダーを集める要因となった。

しかし、最も磨き込まれた手頃なスポーツカーを持ってしても、ロータスは経営的な問題から脱却できなかった。価格が手頃過ぎたのかもしれない。遥かに高価なモデルでも、並ぶことができない喜びを与えてくれるのだから。

エリーゼ・シリーズ1の登場から数年後、ロータスはアメリカのジェネラルモーターズ(GM)へ協力を仰ぐ。ラックハムが設計したロータスのシャシーを利用し、オペル・ブランドからもスポーツカーを販売することで、エリーゼのアップデートを図った。

2000年に発表されたシリーズ2

ロータスの工場は近代化され、エリーゼの生産ラインの隣にオペル・スピードスター(ヴォグゾールVX220)の生産ラインが準備された。部品共有の割合は10%以下といわれ、部品番号も異なる。

シャシーはかなり近似しているが、アストラ用の2.2L 4気筒エンジンが収まるようにホイールベースは伸ばされ、トレッドも拡大。サイドシルは低くなり、荷室容量も大きい。

一方で初代エリーゼの設計は1990年代初頭。クラシックなロータス製モデルなどが参考にされており、近代化は避けられなかった。そして2000年、バーミンガム・モーターショーでシリーズ2が発表される。

当時のAUTOCARでは、「新しいエリーゼ誕生」という見出しとともに華々しく伝えた。スティーブ・クリンズ氏が手掛けたデザインは、20年経った今でも古びない。むしろ最新のエミーラにすら、その影響を観察できるほど。

2011年には一般的にシリーズ3と呼ばれるエリーゼが登場するが、ロータス内部ではシリーズ2.5と呼ばれるアップデート版。基本構造は完成の領域にあり、20年間、細かな改良のみで対応が可能だったといえる。

シリーズ2は、フルサイズのクレイモデル(デザイン検討用の粘土モデル)に加え、コンピューターを用いてデザインされた初めてのロータスでもある。シャシーレールに内装トリムが組まれる仕様は、オペルがスピードスターに要求したものだった。

この続きは後編にて。

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