今ではブレーキシステムとして目新しいところのないディスクブレーキ。ただ、昭和のクルマは4輪ドラムブレーキから始まり、フロントディスク、4輪ディスクと進化していった。その理由と機構について解説しよう。
ディスクブレーキはドラムに比べて高い放熱性がメリット
令和の今では当たり前のディスクブレーキも、昭和のクルマではスポーティなイメージがあり、マニア心をくすぐるシステムだった。構造ははシンプルで、ブレーキペダルを踏むと、マスターシリンダー、レリーズシリンダーを通して液圧がブレーキキャリパーに伝わる。そこに内蔵されたピストンを押し出し、ブレーキパッドに圧力を加えてタイヤと一緒に回転するディスクローターを挟んで制動力を発生する。
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現在では、ピストンが左右に設けられた対向ピストンも多いが、ベーシックなものではシングルピストンとなっている。この場合、ピストンの無い側のブレーキパッドは、反作用で押し付けられることになる。キャリパーは浮動式(スライディング式)になっており、ローター側に引き寄せられるように動く。
大きな制動力が必要になると、先に触れた対向ピストンが必要になる。ピストンが片側1つで計2つのものを2ポット、片側2つで計4つのものを4ポットと呼ぶが、乗用車としては、昭和のクルマでそこまで採用される例はまれだ。
ディスクブレーキのメリットはまず放熱性が良いことになる。ドラムブレーキが密閉されたドラムの内側とライニングで制動力を発生するのに対し、ディスクブレーキは、ブレーキパッドに挟まれるローターが開放空間に装着されている。
ブレーキはエネルギーを熱に変換して放出し制動力を発生する仕組みなので、常に熱の問題がつきまとう。それによってブレーキフルードが沸騰するベーパーロックや、ブレーキパッドの効きが極端に落ちるフェード現象が起きるわけだ。この面でディスクブレーキの放熱性の高さはドラムブレーキに対して大きなメリットとなる。
反面、ライニングとドラムの摩擦面積が広いドラムブレーキに比べると、ローターとパッドの摩擦面積が狭いディスクブレーキの方が絶対的な制動力が勝っているわけではない。現在は、そんなことはないが、かつてのディスクブレーキは効きが甘いなどと言われることもあった。だが、それは、踏んだ力によって効きが変わるというコントロール性の高さの裏返しでもある。
昭和のクルマでいうと、そういった特性から主にフロントブレーキのみに採用されるパターンが多く、4輪ディスクブレーキが当たり前になったのは、昭和も終わりに近づいてからだ。ちなみに、国産車初の4輪ディスクブレーキを採用したのが1967年に登場したトヨタ2000GTになる。これは記念碑的なクルマでちょっと特殊な例だが、一般的に変える乗用車に4輪ディスクが採用されたのは1972年に登場したスバルレオーネ1400RXになる。(文:Webモーターマガジン 飯嶋洋治)
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