この時期、梅雨による長雨で大切な愛車のボディコンディションを気にする人は多い。さらに、その後には強烈な紫外線を浴びる夏も待っていて、クルマ好きにとって心配のタネは尽きない。
そこで今回は、愛車を保有する人にとって永遠のテーマでもある、「(屋根なしの)青空保管」と「屋根付き保管」の違いについて紹介する。
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解説するのは、これまで13台ものフェラーリを所有し、屋根付き保管の偉大さを知る一方、セカンドカーとして軽自動車から大型セダンまでさまざまなモデルを青空保管してきた経験を持つ、自動車ライターの清水草一氏。両者の条件や劣化具合の違い、そしてボディカバーの重要性とは?
文/清水草一 写真/フォッケウルフ
【画像ギャラリー】青空保管と屋根付き車庫保管で、クルマのボディコンディションはどれだけ違ってくるのか?
■ボディにダメージを与える4つの要素とは?
写真は94年式の初代インプレッサ。青空保管を続けて16年後の2010年くらいから白っぽくなった
梅雨シーズンだ。雨の中には小さなチリなどが多数含まれているから、雨が降ればクルマが汚れるのは当たり前。クルマ好きなら誰しも、「屋根付き駐車場が欲しいなぁ」と思う季節である。青空保管と屋根付き保管では、クルマの汚れ方も違うが、ボディのコンディションも違ってくるはず。では実際のところ、どれくらい違うのか? まずは塗装の専門家に話を聞いてみた。
「20年くらいの長期で見た場合、塗装にダメージを与えるのは、1に紫外線、2に温度変化、3にホコリなどの汚れと、雨や湿気でしょう。湿気は塗装されていないエンジンルーム内をサビさせますが、日射で熱くなったボディに雨が降って急冷されれば、温度変化によるダメージも強く出ますし、水滴に含まれた不純物が固まって雨ジミにもなる。とにかくこの4つが問題ですね」
上記1994年式インプレッサは、購入後約20年が経過した2015年くらいになると、クリア下の塗装もはがれ始めたという
紫外線が塗装に悪いのはよくわかる。ヘッドライトのポリカーボネイト表面は、10年も日光にさらされると黄ばんでくるが、あれは紫外線によるダメージによって、表面がボロボロになるからだ。
ボディの塗装も同じで、保管状況にもよるが、15年くらいで表面のクリアが剥がれ、その下の塗装面にもダメージが及び、少しづつ剥がれて、白っぽくなってくる。温度変化も、その幅が大きく急激なほど、塗装へのダメージは大きくなる。
一方、チリ・ホコリなどのゴミは、鳥のフンなど強い酸を出すものは別にして、付着しているだけならそれほどダメージを与えない。チリ・ホコリがボディにダメージを与えるのは、付着した状態で力が加わった時。
ホコリがついたまま乾拭きしたりすると、ボディ表面に無数のひっかき傷が付く。青空駐車の場合、手抜き掃除をするよりも、放置したほうがダメージが少ないとも言われるのはこのためだ。
■フェラーリに多い赤の塗装は劣化が早いはずだが……
屋根付き駐車場に保管されていたクルマでは、表面が痛むなどの症状が出るのははるかに遅くなる。私は現在、生産から32年を経たフェラーリ328を所有しているが、屋根付き保管しており、ボディは新車同様……は言い過ぎでも、新車並みに輝いている。
清水草一氏の愛車・フェラーリ328。屋根付き車庫のうえ、ボディカバーもかけてある
最も劣化の進行が速い塗装色は「赤」である。そして市場に出回っているフェラーリの多くが赤だ。しかし実際のところ、ほとんどのフェラーリは、新車時に近いコンディションを保っている。これは屋根付き車庫に保管されていたからで、フェラーリの塗装が優れているからでは決してない。
塗装の耐久性が高いのは日本車とドイツ車で、イタリア車やフランス車はそれより落ちる。青空保管で塗装のハゲが生じるまで、日本車やドイツ車が20年弱だとしたら、イタリア車やフランス車はそれより数年早い。いま現在、この差は縮まっているかもしれないが、結果がわかるのはずっと後なので、今のところはそういうことになる。
屋根付き車庫での保管が、ボディの美しさを保つカギであることは間違いない。かといって、コストをはじめさまざまな条件が必要となる屋根付きの駐車場は、おいそれと確保できるものではない。
■ボディカバーで重要なのは防水性なのか?
では、次善の策として、青空駐車にボディカバーをかけて保管するのはどうなのか? 前出の専門家に聞いてみた。
「ボディカバーをかけておけば、まず紫外線を防げます。日射に直接さらされることもないので、温度変化も小さくなる。長い目で見ると、この効果は非常に大きい」
「問題は湿気です。防水性の高いカバーのほうがいいように感じますが、どんなに防水しても、雨の湿気は必ず内側に入りますし、地面から立ち上る水蒸気を溜める効果もある」
「だからボディカバーは、ある程度防水性を捨てたほうがいい。雨が降ると水を含むように見える不織布製のカバーがおすすめです。雨が止めば乾きますし、内側の湿気も逃げてくれますから」
フェラーリを2台同時に所有していた際は、2台ともボディカバーを使用していたという清水氏
ボディカバーをかけたのに、その内側のボディが濡れていると、「せっかくカバーをかけたのに!」と思ってしまうが、実はそのほうがいいとは意外だ。ただ、一方でボディカバーは、スリキズを発生させる。
「カバーをかける前に表面のホコリを払っていても、チリやホコリが内側に入ることを完全に防ぐことはできません。カバーの脱着の際や、風による振動で、ボディに細かい傷が付くのは覚悟する必要があります」
「ただ、10年、20年という長いスパンで見ると、紫外線や温度変化による塗装の傷みのほうがはるかに大きい。毎日乗るクルマに毎日ボディカバーをつけるのは現実的ではないですが、たまに乗る程度の大事なクルマなら、不織布タイプのボディカバーをかけて、しっかり固定しておくことをおすすめします」
青空駐車、かつほとんど乗らなければ、劣化速度は猛烈に早まる
フェラーリでも、ボディカバーをかけて青空保管されている例はあるが、塗装の劣化は特に感じない。小さなスリキズよりも、日光からクルマを守ることのほうが重要なのである。
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みんなのコメント
下からの湿気もイヤだしーーーー
ああ、車庫が欲しい!
紫外線+熱+水が劣化を早める。 国産車の大手は、促進耐候劣化試験サンシャインカーボンウエザオメータを代用特性値として用いるが、人の目は赤や青は劣化が目につきやすい。
紫外線は塗膜樹脂の高分子を分断することで退色させていく。
塗膜は幾層もあり、この間の接着効果も紫外線で劣化する。
最も弱いのは有彩色メタリック塗膜にクリヤーを重ねたもの。シルバーメタは止めた方が良い。
ブラックは柔らかいカーボンが入っており、塗膜としては弱いし、高温になりやすいから避けるべき。
一番良いのはチタンで構成するソリッドホワイト。
また、エッジの多いボディ形状はその部分の塗膜が薄くなるので避けた方が良い。
平面は垂直面の3倍の劣化度。カーポートや軒先でも効果が大きい。
最近の国産車は先の劣化試験でとんでもない時間を掛けているからほぼ心配ないが。
最大手が時々やらかしているのが不思議。