ホンダは2023年2月2日、2050年に向けたカーボンニュートラルヘの取り組みとして、クルマの電動化戦略、企業活動を含めたライフサイクルでの環境負荷ゼロの実現を推進してるが、電気とともにもう1本のクリーンエネルギーとして水素を使用することを前提とした技術開発を行なっていることを発表した。
クリーンな水素は化石燃料から作るのではなく、再生可能エネルギーを起点とする「つくる」、「ためる・はこぶ」、「つかう」で構成されることになる。再生可能エネルギー由来の電気は、水電解技術により「グリーン水素」に変換され、季節性や天候による発電量の変動を受けにくくするとともに、陸上/海上輸送・パイプラインにより需要地へ適した方法での運搬が可能となる。もちろんそのためには水素のためのインフラや水素に特化した輸送方法が求められる。
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したがってグリーン水素は、生成からユーザーが使用する段階まで幅広い技術の確立という課題がある。
水素を燃料とする燃料電池車(FCEV)
ホンダは今後、水素利用のコア技術である燃料電池システムを、自社のFCEV(燃料電池車)だけでなく、社内外のさまざまなアプリケーションに拡大していくことで、水素を「つかう」領域で、社会のカーボンニュートラル化を促進し、水素需要の喚起に貢献して行くとしている。
2024年に発売予定のCR-VベースのFCEVに搭載される次世代燃料電池ユニット(モックアップ)FCEV車両用の燃料電池技術に関してホンダはGMと2013年から共同開発を進めているが、そこから生まれた次世代燃料電池システムを搭載したFCEVを、2024年に北米と日本で発売することを明らかにした。
このFCEVは、2022年に北米で発売した「CR-V」をベースに、次世代燃料電池システムを搭載。短い燃料充填時間で長距離を走行できるFCEVの特長に加え、従来よりバッテリー搭載量を拡大し、プラグイン機能により、家庭で充電できるEVの利便性も兼ね備えたモデルとなる。
一般的に、燃料電池システムの普及・活用拡大に向けては、製造コストや搭載する燃料電池ユニットの耐久性が主な課題とされる中、両社の知見やスケールメリットを生かしたこの次世代燃料電池システムは、電極への革新材料の適用やセルシール構造の進化、補機の簡素化、生産性の向上などを図ることで、燃料電池自動車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」(2019年モデル)に搭載していた燃料電池システムに対して、コストを3分の1にするという。また耐食材料の適用や劣化抑制制御により、耐久性を2倍に向上させるとともに、耐低温性も大幅に向上させているという。
このGMとの共同開発に加え、燃料電池の本格普及が見込まれる2030年頃に向けて、さらにコストの半減と2倍の耐久性を目標値として設定し、従来のディーゼルエンジンと同等の使い勝手やトータルコストの実現を目指して研究を開始しているという。
宇宙での活用
また、水素技術のその他の活用先として、宇宙領域を想定した先行研究開発に取り組んでいる。宇宙で人が生活するためには、水や食料に加え、呼吸のための酸素、燃料となる水素、諸活動のための電気が必要だ。持続性を保つためにはそれらの地球からの補給を極力削減することが必要で、太陽エネルギーにより水を電気分解して酸素と水素を製造する高圧水電解システムと、酸素と水素から電気と水を発生させる燃料電池システムを組み合わせた「循環型再生エネルギーシステム」の構築が解決策の一つとなっている。
こうしたシステムの実現に向け、ホンダは2020年から2021年度まで国立研究開発法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を行なった。また2022年には、JAXAと月面探査車両の居住スペースとシステム維持に電力を供給するための「循環型再生エネルギーシステム」について研究開発契約を締結した。この契約締結により、ホンダはJAXAから委託を受ける形でまず概念検討を行い、2023年度末までに初期段階の試作機である「ブレッドボードモデル」を製作することになっている。
産業用燃料電池システム
社会の環境動向を踏まえ、コア技術である燃料電池技術の適用先をFCEV以外にも拡大していくことで、カーボンニュートラル社会に貢献するため、2020年代半ばに次世代燃料電池システムのモジュールの外販を開始する。販売当初は年間2000基レベルを想定し、段階的に拡大することで、2030年に年間6万基、2030年代後半に年間数10万基レベルの販売を目指しているという。
エネルギーを高密度で貯蔵・運搬することができ、短時間で充填できるという水素の特長から、燃料電池システムは、バッテリーでは対応が困難とされる稼働率の高い大型モビリティ(大型トラック、バスなど)や大型インフラの電源、短時間でエネルギー充填が必要なモビリティにおいて、特に高い有用性が見込まれる。また複数基の燃料電池システムを並列接続することで高出力化が可能となる。こうしたことから、参入初期は自社のFCEVに、商用車、定置電源、建設機械を加えた4つを主な適用領域として設定し、BtoBに向けた事業開発も進めて行く。
国内では、いすゞ自動車との共同研究による、燃料電池大型トラックのモニター車を使った公道での実証実験を2023年度中に開始予定。また中国では、既報のように東風汽車集団と共同で、次世代燃料電池システムを搭載した商用トラックの走行実証実験を2023年1月より湖北省で開始している。
そして定置電源の用途での普及も想定されている。クラウドやビッグデータ活用の広がりにより、大量のクラウドサーバーを置くデータセンターの必要電力が急伸し、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点でも非常用電源へのニーズが高まっている。
そこで発電領域において、クリーンで静かな非常用電源として、燃料電池システムの適用を提案して行く。まず米国カリフォルニア州の現地法人アメリカン・ホンダモーターの敷地内に「CLARITY FUEL CELL」の燃料電池システムを再利用した約500kWの定置電源を設置し、2023年2月下旬よりデータセンター用の非常用電源として実証運用を開始。その後、グローバルのホンダの工場やデータセンターへ適用していくことで、自社で排出した温室効果ガスの低減も図って行く。
建設機械の市場の中で大きなセグメントを占める、ショベルやホイールローダーから燃料電池システムの適用に取り組むことで、この領域でもカーボンニュートラル化に貢献して行く。また従来の固定式の水素ステーションだけでは対応が難しいとされる建設機械への水素供給については、業界団体や関係者と連携して課題解決を図って行く。
BtoBの顧客に燃料電池システムを積極的に活用してもらうためには、導入への開発投資や工数の削減、トータルコストの抑制、安価で安定的な水素の供給といった課題解決が重要となる。ホンダは、納入先企業の完成機に燃料電池システムを適合するための開発サポートだけでなく、アフターメンテナンスや水素の安定供給といった運用面のサポートも提供することで、納入先企業のカーボンニュートラル化に総合的に貢献するとしている。
水素利用の課題
燃料電池システムの普及拡大には、水素供給を含めた水素エコシステムの形成が不可欠だ。ホンダはこれまで、国内では日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM:ジェイハイム)への参画、北米では水素ステーション事業を行うシェル社やFirstElement Fuel社などへの支援を通じて、水素ステーション網の拡充をサポートしてきた。
今後は、新たな領域として、定置電源を中心に、水素の需要があるところを起点とした水素エコシステムの形成や、政府や地方自治体が主催する港湾などでの大量輸入水素を活用したプロジェクトなどにも積極的に参画し、関連する企業各社とのパートナーシップの構築を図って行くとしている。日本では、水素エコシステムの構築に向け、丸紅と岩谷産業とともに水素供給や商用車導入に向けた検討を開始したほか、欧州では再生可能エネルギーと水素を組み合わせたエネルギーエコシステムの構築実証を計画している。
水素エネルギーは、国家のエネルギー政策の中に位置付けられる必要があり、クリーンな水素の製造から、水素の貯蔵や輸送など多くの課題がある。また、水素をエネルギーとして使用するためにも、燃料電池から水素燃料によるタービン発電まで、まだこれからの技術開発が求められている。これらの課題を総合的にブレイクスルーすることで、近未来の水素エネルギー社会が見えてくるのである。
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ホンダ 公式サイト
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みんなのコメント
最重要論点はカーボンニュートラルの達成。
脱炭素を第一に考えるなら、様々な可能性を追求することは正しい。
欧州はEV一択だけではカーボンニュートラル達成は無理と判断している。
ゆえに欧州は、水素を併用する政策に転じている。
EU主導により主要高速道路150kmごとに水素ステーション設置を目ざす計画が始まった
EV一択は小さな枝葉の議論。
枝葉に目を奪われて これに勝った負けたの話しはハナクソ同然。
ポリシーもなく目先の利益だけで動くのが中国企業だ。
脱炭素の未来にどれだけ挑戦し貢献していくのか。これが日本企業の姿勢だ。
今は産業革命ともいうべき大変革期。
今ある未熟な技術だけで未来の可能性を否定するのは思考停止。脱炭素は崩壊。技術革新もない。
本気で脱炭素を達成したいと願うなら、あらゆる可能性を否定できないはずだ。
創業者の挑戦し続けるDNAを受け継いだホンダに期待したい。