この記事をまとめると
■東京オートサロン2023で「スバルWRXラリーチャレンジ2023」が展示された
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■WRX S4をベースとした、2023シーズンの全日本ラリー選手権に挑むマシンだ
■専用マシンの開発が行われた理由はレギュレーションの変更だと考えられる
スバルの本気度が伺えるWRX S4のラリーマシン
1月13日~15日に幕張メッセで開催された東京オートサロン2023でスバルは全日本ラリー選手権をターゲットにした「スバルWRXラリーチャレンジ2023」を出展。WRX S4をベースとするスバルの最新ラリー競技車両ということもあって注目を集めていた。
残念ながら東京オートサロンに出展されていた同モデルは、単なる展示用のモックアップに過ぎず、右ハンドルなのか、左ハンドルなのかすらわからない状態だったが、同モデルを見て多くのファンがワクワクしたのではないだろうか? 筆者もそのひとりだが、同時に、このスバルWRXラリーチャレンジから2023年の全日本ラリーに対するスバルの本気度が伺えた。
わざわざスバルがラリー専用モデルを開発してまで全日本ラリー選手権に挑むようになったきっかけはJN1のレギュレーション変更だった。これまで最高峰クラスではスバルWRX、三菱ランサーといった国産4WDターボの国内規定モデルが主流となっていたのだが、2021年より国際規定モデルのR5仕様車も出場。さらに国内規定モデルとはいえ、トヨタの最新4WDモデル、GRヤリスもライトウエイトを武器に躍進を重ねたことから、スバルのサポートを受ける新井敏弘、鎌田卓麻をもってしても苦戦を強いられ続けていた。
2022年はリザルトに応じて最低重量を加算する性能調整を実施したが、シュコダ・ファビアR5を駆るヘイッキ・コバライネンが猛威を発揮。その背後で同じくファビアR5を駆る福永修、トヨタGRヤリスを駆る勝田範彦、奴田原文雄らが表彰台を争い、新井、鎌田らスバル勢はそのなかに割って入ることができれば健闘に値する状況となっていた。
おそらく、この状況が今後も続くようになれば、スバルは全日本ラリー選手権でのサポートを終了していたに違いない。しかし、全日本ラリー選手権を統括するJAFのラリー部会もこの状況を良しとしなかったようで、前述のとおり、JN1クラスのレギュレーションを一新。そこにはスバル、そして、絶えず競技でマシン開発を担っているトヨタガズーレーシングの働きかけもあったと思われるが、いずれにしても全日本ラリー選手権の最高峰クラスは新しい局面を迎えている。
車両規定の詳細は発表されていないが、JN1クラスはR5やRally2などのFIA公認車両のほか、JAFの承認を受けた競技マシンも出場可能。いずれもナンバーは不要で、JAFの承認車両に関してもオーバーフェンダーなどエアロダイナミックスの一新やボディパネルおよびウインドスクリーンの材質置換による軽量化、足まわりの構造変更も実施できるようだ。
新たなマシンが活躍する2023シーズンの全日本ラリー選手権
この規定変更を受けてトヨタガズーレーシングは勝田範彦用のマシンとしてGRヤリスRally2の開発モデル「GRヤリスWRコンセプト」を投入するほか、眞貝知志用のマシンとして次世代スポーツ自動変速機(DAT)を搭載したGRヤリスGR4 DATラリー」を投入。
一方、スバルは前述のとおり、S4をベースにしたスバルWRXラリーチャレンジ2023を投入する予定だ。エンジンはベース車両と同様に2400ccのFA24型エンジンで、詳細は明らかにされていないが、おそらくミッションはVAB用のユニットが搭載されることだろう。サスペンションも形式やジオメトリーの刷新が予想され、ルーフやトランクリッド、リヤドアなども素材をカーボンにすることで大幅な軽量化が行われるはずだ。
ちなみにエアロダイナミックスもオーバーフェンダーなど大胆なアレンジが可能となるはずだが、スバルで全日本ラリー選手権の活動を担うスバル商品企画本部の嶋村誠氏によれば「マーケティング的にスタイリングはベース車両からかけ離れたデザインにしたくない」とのこと。確かにタイヤサイズが変更され、ワイドタイヤを装着することができるならばワイドフェンダーにしたほうがメリットは多いが、タイヤサイズはむしろナロー化されるだけにフェンダーのワイド化にあまりメリットはないのかもしれない。
では、気になるスバルWRXラリーチャレンジ2023のパフォーマンスだが、ベース車両のWRX S4について新井は「まだCVTの量産モデルしか乗っていないけれど、剛性が高いし、エンジンもパワーがあるので軽量化がうまくいけば戦えると思う」と好感触。さらに、ヴィッツ4WDやC-HRなど独自のモデルを開発してきたキャロッセの長瀬努代表も「純粋なレーシングカーであるRally2に対して勝てるかどうかはわかりませんが、少なくともこれまでの国内規定モデルのVAB型WRXよりチャンスはあると思います」と語る。
ちなみに、これまでスバル勢の全日本ラリー選手権での活動は、新井がアライモータースポーツ、鎌田はシムスレーシングがマシン開発を担ってきたが、このスバルWRXラリーチャレンジ2023はサプライヤーと連携しながらスバルがマシン開発を実施。ラリーオペレーションは従来どおり、アライモータースポーツとシムスレーシングで行われるが、あくまでもワンチームとしてワークスカラーに彩られた2台のマシンが参戦するようだ。
一方、トヨタガズーレーシングのエース、勝田はGRヤリスRally2の開発モデルで参戦。Rally2としては最後発のマシンとなるだけに、ライバル車両を凌ぐパフォーマンスを秘めているはずだが、左ハンドルのグローバルモデルとなるだけに、これまで右ハンドル車両でラリーを戦ってきた勝田がいかに左ハンドルに対応するのか? かつて藤本吉郎がTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)に加入した際、チーム代表のオベ・アンダーソンに「左ハンドル車に慣れるために10万kmはドライブしろ」と指示されたそうだが、ラリー競技はワイディングでギリギリのアタックをするだけに、勝田の左ハンドルへの対応がリザルトを左右するに違いない。
もちろん、スバル、トヨタともにニューマシンとなるだけにマイナートラブルも予想されることから、熟成を極めたファビアR5を駆る福永もまたキーマンといえる。
いずれにしても2023年の全日本ラリー選手権のJN1クラスは新時代を迎えており、世界でもっとも速いWRX S4と開発中のGRヤリスRally2という2ペダルモデルが激突。ガラパゴス化しながらも、世界の注目を集めるラリーシリーズとなりそうだ。
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