アウディ「RS」モデル誕生の舞台裏
アウディのハイパフォーマンスモデルを象徴する「RS」の称号は、Audi Sport GmbHが手掛けたモデルにのみ与えられ、様々な魅力をもつアウディを語る上で特にダイナミズムの側面を担っている。標準モデルとは一線を画したデザインをはじめ、日常ユースと最高水準のドライビングパフォーマンスを両立したRSは、デザイナーとエンジニアが細部に至るまで一切の妥協なく開発した結果として生まれる。
究極のラグジュアリーを追求した、ベントレー フライングスパーのリヤキャビン
その極めて高いクオリティはいかにして実現されるのか? 開発の舞台裏を「ニュルブルクリンク ノルドシュライフェ」、「レーシングカーからのインスピレーション」、「ワークショップとマスタージグ」、「4ヵ所の生産拠点」という4つのキーワードから追う。
ニュルブルクリンク北コースでの過酷なテスト
ドイツの歴史的なサーキットであるニュルブルクリンク。その全長20.832kmに及ぶ北コース(ノルドシュライフェ)は、世界でもっとも過酷なサーキットとして知られ、1メートル毎に困難なチャレンジが待ち受けると言っても過言ではない。左右に短く連続する超高速S字コーナー“フックスレーレ”では強烈な垂直Gがドライバーを襲い、荒れた路面の“カルーセル”はボディを跳ね上げ、ジャンプスポットの“プフランツガルテン”はクルマを宙に舞わせる。
コースの80%以上がアクセル全開区間であり最大級の負荷が連続するノルドシュライフェでは1kmが一般道の数十倍の距離に相当し、このサーキットを8000km走行すれば通常の自動車の生涯走行距離に達するという。従ってノルドシュライフェはあらゆるスポーツカーのベンチマーク足り得る唯一無二のテストコースとみなされ、ここでのテストに合格すれば世界のどこに行っても通用すると評価されている。
優れたスキルと経験を持つ有能なテストドライバーにとってノルドシュライフェはクルマのすべてを知る絶好の場所であり、Audi Sport GmbHはノルドシュライフェを世界最高のテストコースと考え日夜開発の舞台として利用している。
ワークスチームのテストドライバーが参画
テストドライバーのひとり、Audi Sport GmbHのフランク・スティップラーは、世界でもっともこのコースを熟知するレーシングドライバーの一人だ。ケルン生まれのスティップラーは45歳で、現在ニュルブルクリンクのあるアイフェルに住んでいる。スティップラーがAudi Sportで刻んだ戦歴には、2012年のスパ・フランコルシャン24時間レースやニュルブルクリンク24時間レース(2012年と2019年)における総合勝利が含まれ、R8 LMS GT3が2009年にレースデビューして以来、ワークスチームにその名を連ねてきた。ドライバーとしてのスキルはもとより、エンジニアリングとしての知識でも様々な貢献を果たしている。
以来、カスタマースポーツレーシングカー及びスポーティな市販モデルの開発においてスティップラーの手腕は欠かせず、もちろんアウディのハイパフォーマンスモデル、RSやR8の開発も同様だ。R8は2019年初頭に本格的なアップデートが施され、クーペとスパイダーに加え後輪駆動のR8 V10 RWDへと進化を遂げたが、その開発におけるスティップラーの功績は特筆されるべきだろう。
RS Q8のレコードタイムが「RS」のダイナミズムを立証
さらにスティップラーは2019年秋にRS Q8のステアリングを握り、ノルドシュライフェのラップタイム更新に挑戦している。記録認定員が見守る中、標準SUVカテゴリーのラップタイムを一気に12秒も更新する7分42秒253をマーク。新記録の樹立は開発の主目的ではないが、アウディが誇るもっともスポーティな“Q”モデルの力強いダイナミズムが証明されたことは明らかだ。
Audi Sport GmbHマネージングディレクターのオリバー・ホフマンは次のように語る。
「ノルドシュライフェは私たちの開発及び調整作業における究極の耐久テストコースです。RSの名を冠したすべてのモデルは、ここで少なくとも8000kmのテストを実施しています。ノルドシュライフェのテストではもっとも過酷な条件の下、各種パーツの耐久性やサスペンションセットアップに関する詳細な情報が確認されます。RS Q8の場合は、スプリング、ダンパー、ESPのセットアップ、ロールスタビリティ、スポーツディファレンシャルの特性の確認が主なテスト項目でした」
「RS Q8は、卓越したパフォーマンスと類まれなデザイン、パワー、そしてSUVならではの多様性のすべてを持ち合わせているだけでなく、アウディ独自の高い品質基準も満たしています。RSはパワフルでユニークなキャラクターを特徴としています。必要とあらば、いかなる条件でも最高のパフォーマンスを発揮するだけでなく、長距離走行ではドライバーに疲れを感じさせることなく、快適さとハイパフォーマンスを提供し続けます」
地球30周分、120万kmに及ぶ走行テスト
多くのRSドライバーはビジネスや出張などで長距離を走行するため、特に疲労を感じさせないことが大切だ。ネッカーズルムの技術開発責任者でもあるホフマンはさらに付け加える。
「RSは、まさにジキルとハイドのように両極の性能を備えているのです。どのように運転してもドライバーに最高の体験を提供します。息を呑むようなデザイン、ハイエンドなスタイル&フィーリング、そして卓越したクオリティが、すべてを根底から支えています」
Audi Sport GmbHのテストエンジニアは2年にも及ぶ歳月を費やしRS Q8の走行テストを実施してきた。開発車両とプロトタイプの走行距離は120万km、実に地球30周分に匹敵する。走行テストは、フィンランド、スウェーデン、フランス、イタリア、南アフリカ、中国、米国で実施され、一般道だけでなくあらゆるタイプのサーキットでもテストを行った。
南イタリアのナルドオーバルテストコースでは、常時高速を維持しながら全コンポーネントの長距離耐久テストが行われた。スカンジナビアの氷雪路はサスペンションや制御システムの反応を煮詰めるための理想的な条件を提供し、特に滑りやすい路面ではわずかな設定変更が劇的な姿勢変化に繋がった。さらに灼熱の太陽が照りつけ激しい高低差がある南アフリカは、エアコンディショナー、エンジン冷却、パフォーマンス特性の過酷なテストの場になっている。
レーシングカーからインスピレーションを得たRSデザイン
RSモデルはアウディのモデルラインナップにおいてダイナミズムを象徴する存在であり、印象的なエクステリアデザインにもそのコンセプトが窺える。モータースポーツをインスピレーションの源とするクールで控えめな表現とダイナミックなディテールの組み合わせは、モータースポーツで最高のパフォーマンスを発揮するために極限を追求したコンポーネントの設計から生み出される。“Form follows function=形態は機能に従う”という理念の下、モータースポーツからフィードバックされたハイパフォーマンステクノロジーがRS専用のデザインに注ぎ込まれてきた。
例えばR8のシングルフレームグリルのプロポーションとレイアウトは多くのRSモデルにも適用されているが、これは標準バージョンよりも低くワイドなフォルムを強調し、エレガントなクロームではなくスパルタンかつスポーティなイメージを醸し出すブラックを採用することで特別感を印象づける。また、一部のRSモデルはフロントグリルとボンネットの間に1984年のアイコンモデル「アウディ スポーツクワトロ」を彷彿とさせる水平の細いスリットを追加。大型エアインレットと大口径楕円テールパイプの組み合わせは、ターボチャージャーによるエンジンのパワーを象徴したものだ。
RS 6 アバントに代表されるように、ボディにもエクスクルーシブな雰囲気は漂う。RS 6 アバントの全幅はベースモデルより80mm広く、フェンダー、リヤドア、サイドパネルフレーム、フロントセクション、ボンネットはRS専用に設計。ベースモデルから流用されているのはフロントドア、ルーフ、テールゲートのみとなり、ホイールアーチは22インチ(RS Q8は23インチ)までのホイールに対応する。
最高品質の開発を促すワークショップとマスタージグ
品質に一切妥協しないアウディの姿勢はすべてのRSモデルに共通する。Audi Sport GmbHのホフマンは「弊社のお客様は、市場で入手可能な最高の製品を求めています。アウディには最高のスペシャリストが在籍しチーム一丸となって高い期待に応えます」と語る。
初期ロットが手作業で組み立てられるRSワークショップは開発段階で重要な役割を果たす。品質管理部門は開発段階から市販モデルに大きな影響を及ぼし、RSのボディはマスタージグと呼ばれる超高精度のアルミニウム測定器具を使用して組み立てられる。また、レーザースキャナーなどの最先端の測定方法を使用してパーツの表面に数百万の測定点を設定し、すべての表面、接合部、半径を10分の1ミリ単位で調整。こうしたハイテクアプローチは空力効率の向上に役立つと同時に、RS特有のアピアランスを形成する効果も発揮した。
RSの生産を行う4つの拠点
RSモデルは欧州の4ヵ所の拠点で生産されている。RS 3 スポーツバック、RS 3 セダン、RS 4 アバント、RS 5 クーペ、RS 5 スポーツバックはドイツのインゴルシュタット工場からラインオフし、RS 6 アバントとRS 7 スポーツバックは同じくドイツのネッカーズルムで生産。ハンガリーのジュール工場ではTTRSクーペ/ロードスター、RS Q3/RS Q3 スポーツバックが生産され、RS Q8の生産はスロバキアのブラチスラバ工場で行う。すべてのRSモデルには標準バージョンと共通の生産工程システムを採用し、プレスショップではアルミニウムやスチールの専用シートメタルコンポーネントが製造されてボディショップで組み立てられている。
サスペンション及びドライブトレインとボディを合体させる“マリッジ”と呼ばれる生産工程は、特にV8エンジン搭載モデルでは非常に高度な作業。RSモデルにはエキゾーストシステム、バンパー、リヤエプロン、ホイールといったRS専用コンポーネントも装着され、ネッカーズルムでは稼働1日につき2桁にのぼる台数のRS 6 アバントとRS 7 スポーツバックが組み立てられている。すべてのモデルはテストコースで点検を受けた後にカスタマーへと納車されていく。
そして、ネッカーズルム工場近郊の“ベーリンガーホフ”工場はAudi Sport GmbHの本拠地であり、ここではR8クーペ/スパイダー、そしてR8のレーシングカーであるR8 LMS GT2/GT3/GT4がそのほとんどを手作業によって同じラインで生産している。近い将来、電気自動車のスポーツカーであるe-tron GTの生産も開始される予定だ。
12のラインナップに加え新たなRSイニシアチブが進行中
アウディは現在、RSモデルで市場に攻勢をかけている。Audi Sport GmbHは現時点で合計12のRSモデルラインナップ(RS3 スポーツバック/セダン、RS 4 アバント、RS 5 クーペ/スポーツバック、RS 6 アバント、RS 7 スポーツバック、TTRS クーペ/ロードスター、RS Q3、RS Q3 スポーツバック、RS Q8)をリリースし、このうち8車種は2019年にデビューしたばかりだ。Audi Sport GmbHはすでに近い将来に向けてさらに多くの展開を提案している。
新たなRSはベースモデルのデビュー後の早い段階で追加され、ラインナップを強化していくという。RSの特性は開発初期から確定されたもので、標準モデルとほぼ同時進行で計画は進められている。開発作業はデザインだけでなくパワートレインやサスペンションも重要な開発テーマに掲げ、最終的にはすべてのアウディ製品が備えるスポーティなDNAを最大限に引き出すことが最大のテーマだ。
電動化を推進し新たな「RS」が生まれていく
現代のクルマにふさわしい効率を確保することも基本開発目標のひとつ。RS6 アバント、RS 7 スポーツバック、RS Q8には48Vの主電源システムによる先進的なマイルドハイブリッドシステムが採用されるほか、V8 TFSIエンジンにはパーシャルロード域で特定のシリンダーの作動を休止するシリンダーオンデマンド(COD)システムが導入された。これらのシステムはあくまでもRSモデルにふさわしいマナーで実行されるよう仕上げられている。
RSの開発という長く険しい道のりは、“ファインチューン”のひと言では語り尽くせない。ホフマンは次のように語る。
「常に一貫性を持って高い精度で仕事をした場合にのみ、RSのユニークなキャラクターを確立することができます。豊富な経験と明確なビジョンが理路整然としたコンセプト確立のカギを握っているのです」
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