4気筒エンジン搭載の新型マカンに試乗。アップデートされた装備はどうなのか、パフォーマンスは満足できるものなのか、詳しくレポートする。(Motor Magazine 2019年9月号より)
日本の交通事情にフィットするサイズ感
取材の朝、東京近郊には大雨の予報が出ていた。せっかくの最新ポルシェの試乗なのに……とはいっても、911GT3のような思い切りスパルタンなモデルならともかく、4WDを標準採用するSUV、マカンだから不安はまったくないのだが。
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もしもこの2台を同時にガレージに収めておけるオーナーだったとしても、こんな天気の日にはマカンを相棒に選んで出かけたくなるだろう。そんな「選べる」ポルシェライフを送っている人もいるのだろうな……と羨ましく思いながら、マイナーチェンジを遂げた新型マカンとの試乗に出かけた。
純粋なスポーツカーと実用モデルとの2台持ち。夢はなかなか叶わないかもしれない。けれど、1台だけポルシェを選ぶことだって十分幸せだ。そんなオーナーにはやはり、SUVの人気が高い。実際、2018年のポルシェ販売台数世界全体でマカンが33.6%、カイエンが27.9%と、ふたつのSUVモデルでセールスの半分以上を占めている。
ダイナミックなサイズ感とともに、絶対的なユーティリティのゆとりにこだわるなら、やはりカイエンだろう。一方で、日常的な使いやすさやよりスポーティに振ったスタイリングを楽しみたいなら、マカンが気になる。
大柄なドイツ人と比べれば子供のような私の体格にも、マカンならしっくりとくる。子育て世代のご夫婦、もしくは息子さんや娘さんとともに便利なSUVライフを楽しみたいと考えるなら、マカンはより現実的な選択肢になる。
マカンよりもコンパクトでデザイン的に凝ったSUVは確かに他にもある。けれど、乗り込んだ瞬間から意外なほど取り回しに不安を覚えさせない不思議な一体感が、マカンにはある。広すぎないこともまた、親しみやすさを演出するポイントのひとつだ。十二分な実用性とくつろぎ感を感じさせる「適度な広さ」は、なんとも頼もしく居心地が良い。こと日本で乗りまわすことを考えれば、やはりこのマカンくらいのサイズ感が具合がいい、と改めて思った。
スポーティな味わいの2L直4ターボエンジン
試乗車のボディカラーは、新色の「マンバグリーンメタリック」だった。「マンバ」とはアフリカに生息する毒ヘビの一種だが、色合い的には比較的シックな印象。青々と茂る葉から雨粒がポタポタと落ちてくるような雨上がりの新緑が茂る森の中では、ともすれば背景に溶け込んでしまいそうだ。
しかし実際には、新型マカンの存在感はどんな風景の中でも際立って見えた。丸みを帯びたボディの曲面は強健さを上品に漲らせ、他とはひと味違う艶やかさを漂わせる。深い緑の中にあっても、その輪郭はむしろ明確だ。
最新のポルシェ車に共通する4灯式デイタイムランニングライト付LEDヘッドライトは、薄暗い森の中などで独特の表情を浮かび上がらせる。左右を横一列につなぐように光るテールライトがワイド感を強調し、後ろ姿もまた精悍でスマートな印象を強めている。
シックなのに目を惹くマンバグリーンのボディとのコーディネイトは、もしかすると夜の都会にも似合うかもしれない。さまざまな人工の光を反射し、ボディをきらめかせながら疾走するマカンの姿を想像してしまった。
運転席に乗り込んでみると、前方視界はSUVらしく少し高く、安心感を覚える。ピラーは太過ぎず細過ぎず、サイドミラーとピラーの間は三角窓が採用され、より死角を減らすように、デザインが工夫されている。
インターフェイスを見渡せば、まず視界に飛び込んでくるのが9インチに拡大されたディスプレイだ。先進のポルシェコネクトを採用、ナビゲーションまで含めたインフォテインメントの機能性が高められた。
エンジンをスタートさせると、厚みのある低音のエキゾーストが聞こえてくる。メーターパネルのセンターに位置するタコメーターの指針が、エンジンの回転に合わせてリニアに素早く動く様子は、いかにもポルシェらしい。スポーティなムードが一気に高まる。
今回、初めて試乗するベーシックモデルのマカンは、2L直4ターボエンジンに7速DCT(PDK)を組み合わせる。改良ポイントのひとつは、変速マネジメントの最適化だ。より俊敏な走りにつながることはもちろん、さらなる効率化にもメリットがあるという。燃費向上にも積極的で、「セーリングモード」などが新たに備わった。
実際に走らせてみると、操作性と乗り味のグレードアップぶりがしっかり伝わってきた。比較的コンパクトとはいえスポーツモデルに比べれば重量級のボディが、とても力強く加速していく。2Lターボのトルクは、どの速度域からアクセルペダルを踏み込んでも十分感じられて、実に頼もしい。
ポルシェのスポーツ性能と実用性が1台で満たせる
ステアリングフィールはやや軽めだが、より滑らか、乗り心地もしなやかさを増している。雨上がりのウエット路面では、タイヤからのロードノイズとわずかな当たりの硬さを感じるものの、繋ぎ目や細かなオウトツもある一般的な舗装路上では、フラットライドな乗り味に磨きがかかっているようだ。
高速道路やワインディングロードでは、よりカッチリとした印象を受けた。コーナーでのロール感は抑えめで、スッキリとしたステアリングフィールとあいまって安心して操ることができる。今回、フロントの足まわりの軽量化を図って、バネ下重量は1.5kg軽くなっている。わずかな軽量化だが、ハンドルの操舵感や剛性感に影響を与えるようだ。
この試乗では、雨雲レーダーを頼りに優れた天気予測能力を発揮する取材班のおかげで、ヘビーウエットからドライまで、多彩なシチュエーションで新型マカンに試乗することができた。マイナーチェンジによってドライブフィールが、期待どおりにまた1ランク成熟していたマカン。これなら、夢の2台持ちは夢として胸にしまっておけそうだ。
現実には、ポルシェのエンジニアリングが生む卓越した走行性能と、相反するように思える優れた実用性という二面性=2台分の高性能が、マカン1台で十分賄えることは間違いない。(文:飯田裕子)
■ポルシェ マカン主要諸元
●全長×全幅×全高=4695×1925×1625mm
●ホイールベース=2805mm
●車両重量=1840kg
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1984cc
●最高出力=252ps/5000-6750rpm
●最大トルク=370Nm/1600-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=7速DCT(PDK)
●車両価格(税込)=699万円
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