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モータースポーツは“無観客”によって、どう変わったのか?

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モータースポーツは“無観客”によって、どう変わったのか?

無観客レースが続くモータースポーツの現状とは? カーライフエッセイストの吉田由美が、無観客でおこなわれたスーパーGT第4戦の現場で取材した。

新型コロナウィルスで大きく変わったモータースポーツ

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新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、私たちの生活は大きく変わった。自動車レース界も例外ではない。

たとえばF1は、3月の開幕戦であるオーストラリアGPの直前、関係者の感染がわかりキャンセルに。そのあとも、4月と5月のレースはすべてキャンセルされたため、モナコGPも中止になってしまった。

ようやく7月3日のオーストリアGPから再開されたものの、まずは地続きで移動できる欧州での無観客開催に限定された。しかし、シーズン終盤は中東でも開催される予定という。最終戦の終了は、12月13日にずれ込んだ。

Andy Hone佐藤琢磨選手が2度目の優勝を飾ったインディ500マイルレースも無観客でおこなわれた。“インディ500”といえば、1日に30万人以上の観客がサーキットに訪れるという全米一の人気を誇るレースであるだけに、無観客とは異例中の異例だ。

NTT IndyCar SeriesBarry Cantrell通常の開催時期の6月下旬から大幅に遅れて9月12~13日におこなわれたル・マン24時間レースも無観客試合だった。

では日本ではどうなのか?

日本で開催される予定だったF1やWECなどの国際レースはすべて中止になってしまった。そして、国内レースであるスーパーフォーミュラやスーパーGTは無観客でおこなわれている。スーパー耐久レースは、観客を入れての開催だったものの、感染拡大防止のため、一般入場者がパドックに立ち入ることは禁止された。

しかし、ここにきて、10月3(土)・4日(日)に富士スピードウェイでおこなわれるスーパーGTの第5戦は、大幅な入場制限が実施されはするものの、観客を入れることになった。

無観客レースの様子

かくして最後の無観客レースとなったのがツインリンクもてぎを舞台にしたスーパーGTの第4戦で、9月12日と13日に行われたこのレースを取材した。

取材者の人数も大幅に制限されているので、取材出来るかどうかわからない状態で取材を申請し、さいわいに許可を得ることができた。しかし、このために、大会の2週間前から毎日、ウェブ上の「症状確認フォーム」に体温や体調を入力し、事務局へ送信することが求められた。徹底した対策がとられていたのだ。

ツインリンクもてぎに到着すると、やっぱりいつもとはだいぶ様子がちがう。クルマも人も圧倒的に少ないのだ。普段なら混雑する入場ゲートも、検温つきではあったが、スムーズにパスできた。

車を停めて、プレスルームに向かう途中も、ほとんど人を見かけなかった。どこもかしこもガラガラだ。いつものような張り詰めた空気はない。むしろ、穏やかな雰囲気なのだった。

ピットウォークやトークショーなどのファンサービスは、あたりまえだが一切ナシ。とはいえ、YouTubeで生配信などをおこなっているチームもある。これまでには目にしなかった光景である。

無観客開催のため、あらゆるショップは閉まっているうえ、場内の電光掲示板は無点灯だ。場内放送もパドック側に向けてしかおこなわれていないようで、グランドスタンドにいるとなにも聞こえなかった。さらに、レースの状況を伝える大型の液晶ヴィジョンも消されていた。

寂しいですよね。やっぱり

無観客レースについての、レーシングドライバーやチーム監督の感想を訊いた。

まず、今シーズンからレッドブルがスポンサーになったGT500クラス16号車の「レッドブルMOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤英紀(むとうひでき)選手と笹原右京(ささはらうきょう)選手だ。

武藤選手は「観客がいてもいなくても、やることは変わりません」と、言う。

Hideki Mutoh「無観客で変わった点ですか? そうですね……会場内の人やクルマが格段に少ないので、(レース終了後に)スムーズにサーキットから出られるようになったことでしょうか……やっぱり、多くの人に見てもらって、マシンを走らせていたころを思えば、観客のいないレースは寂しいですね」

武藤選手が、「寂しい」と話すのにはもうひとつ理由があって、それは長年、彼を撮り続けてきた近江勤(おうみつとむ)カメラマンを帯同出来ていないことだ。

「国内外のレースにくわえ、海外でのテストにも来てれくれて、撮影してくれている近江カメラマンが来ることが出来ないのは大変寂しいです。取材人数を大幅に制限しなければならないという事情はもちろん理解しているのですが」

実は武藤選手、今シーズンのレースシーンを、SNSにあまりアップしていない。なぜなら、「近江カメラマンが撮影した写真じゃないと申し訳なくって」とのこと。その配慮には胸が痛くなる。新しいレース様式は、さまざまな影響を及ぼしていることをあらためて実感した。

いっぽうの初めてスーパーGTに参戦した笹原右京選手は、「これまでをあまり知らないので、違和感は感じません。武藤選手とおなじく、(自身が)やるべきことをやるのみです」と、冷静に話す。

Hideki Mutoh, Ukyo Sasahara続いてGT300クラスの18号車「UPGARAGE NSX GT3」の松浦孝亮(まつうらこうすけ)選手に話を訊いた。

「人の少なさは、まるでテストをしているときみたいですね。ただ、無観客でもモチベーションは変わりません。いい結果、いい順位を目指すことはどんな条件や状況下でもおなじです」

Sho TamuraレッドブルMOTUL MGEN NSX-GTの中野信治(なかのしんじ)監督も、「寂しいですよね。やっぱり」という。「応援してくれる人がそばにいたほうがやっぱりいいですよね。とはいえ、無観客のレースにも慣れてきました。かつて出走していたヨーロッパのレースでは、観客がいないケースが多かったのですが、そんな若かりしころを思い出しました」。

GT300クラス21号車「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の川端伸太朗(かわばたしんたろう)選手は、SNSを活用して、情報を発信しているという。

「ピットウォークやファンサービスの時間がない分、サーキットでの自分自身の時間は増えたかもしれません。それでも、観客のいるほうが、個人的には嬉しいですね。今はツイッターなどのSNSを活用し、日々の行動やレースの模様を発信しています。それを見て、レースの魅力を感じ取ってもらえれば……と、願っています」

GT500クラス3号車「CRAFTSPORTS MOTUL GT-R」の平手晃平(ひらてこうへい)選手は、「無観客レースも4戦目で慣れてきました。とはいえ、初戦は寂しかったですね……」と、話す。「無観客によって、よりチームスタッフと密にミーティングができるようになったかもしれません。かつて参戦していたヨーロッパのレースもおなじでしたね」と、つづけた。

GT300クラス2号車「グッドスマイル 初音ミクAMG」の谷口信輝(たにぐちのぶてる)選手は、モータースポーツの今後を危惧する。

「集中力の維持という点では、観客の有無は関係ありません。気になるのはスポンサーの動向でしょうか。どのチームもスポンサーあってこそ運営できていますからね。1日でもはやく、これまでのスーパーGTに戻れることを祈ります」

最後は、GT300クラス52号車「埼玉トヨペットGB GR Supra GT」の吉田広樹(よしだひろき)選手だ。

「前回のレースで優勝しましたが、観客がいないので誰に向かって手を振ればいいのか一瞬わからなくなってしまいました。普段より声をかけてくれる人が圧倒的に少ないのは寂しいですね……一生懸命やるのみですが」

いずれのドライバー、監督も口を揃えて「寂しい」と、話していたのが印象的だった。たしかに、無観客のサーキットは、想像以上にひっそりとしていた。

とはいえ、次戦からは観客がいよいよ入る。かれらの寂しさが解消されることを願いたい。

文・吉田由美 写真・田村翔

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