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【MotoGP】真の実力を発揮するために……苦しむホンダをひとり支える中上貴晶、その堅実な働きが2024年のシート獲得に繋がる?|インタビュー

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【MotoGP】真の実力を発揮するために……苦しむホンダをひとり支える中上貴晶、その堅実な働きが2024年のシート獲得に繋がる?|インタビュー

 MotoGPの2023年シーズンも苦境に立たされているホンダ。陣営からはLCRホンダのアレックス・リンスが契約期間を1年早く切り上げてヤマハへ移籍し、レプソル・ホンダのマルク・マルケスも他陣営への移籍が噂されている。

 そうした状況の中、LCRホンダの中上貴晶は着実に仕事をこなしながらも、来季のシートは未確定の状況となっている。

■日本メーカーのMotoGPマシンがライダーに“恥”をかかせている? ヤマハのクアルタラロ認める。中上貴晶はホンダ低迷に「悲しい」

 今季9戦を終えた段階で、各ブランドのトップライダーのみが加わるコンストラクターズ選手権でホンダは89ポイント。そのうち27ポイントを中上が獲得し、リンスが47ポイント、マルケスが15ポイントを稼いでいる。

 皮肉なことに、ホンダで最多ポイントを獲得し、唯一の優勝を陣営に届けたリンスがメーカーからのサポート不足を感じ、ヤマハへ移籍することを選んだ。

 リンスの不満の根底にあるのは、サテライトチーム所属の彼にマシン開発を頼らず、新しいアップデートパーツを試させなかったことだ。

 中上はリンスの不満に理解を示す一方で、ファクトリーチームのマルケスやジョアン・ミルが負傷していた上に、リンスにはRC213Vを一任するだけの経験がなかったからだと指摘する。

「もちろん、全てのメーカーがファクトリーチームだけを見ている訳ではないということは理解していますが、ホンダの場合は少しファクトリーチームに集中しているように見えます」

 イギリスGPの際、中上はmotorsport.comにそう語った。

「(ファクトリーチームで)全てが上手くいけば、次のステップはサテライトチームへのアップデート供給となります。ただ、またしてもマルクは本調子ではなく、ジョアンもクラッシュを繰り返して怪我を負って、ホンダでの1年目で多くのレースを欠場しました。そして、彼(リンス)はホンダのマシン経験がありませんでした」

「そのため、残念ながらホンダは戦略を変更する必要がありました。全てのライダーが100%で、クラッシュも少なければ、簡単により多くのデータを収集できたはずです。しかし2022年以降はそうではありませんでした」

「だから少し……ホンダも開発(の方向性)を見失っていて、チームやライダーの優先順位を把握できていません。理解するのは難しいです」

ドイツGPでは唯一のホンダ勢に

 こうした状況を受けて、ホンダはRC213Vの開発のために中上を抜擢。イギリスGPでは中上のマシンに新しいカウルが投入され、データ収集が開始された。

 2018年からLCRホンダで継続的にMotoGPへ参戦してきた中上の経験は、開発において重要な意味を持つだろう。しかしそれ以上に、中上は今季のホンダ陣営の中で、マシンの限界をより理解できているライダーでもある。

 マルケス、ミル、リンスがクラッシュによって骨折を負う中、中上は今季スプリントと決勝それぞれ1戦を除く全てのレースでチェッカーフラッグを受けている。中上の今季ベストリザルトはオランダGPでの8位で、その際には2023年になって初めて「レースをしていると感じた」という。

 ホンダのライダーにとってレースを最後まで走りきったことは大きな功績だが、その現実はホンダがMotoGPでいかに苦しんでいるかを映し出している。

「最悪の瞬間はザクセンリンク(ドイツGP)で、グリッドで僕が唯一のホンダ系ライダーでした」と中上は振り返る。

「だからミスは許されませんでした。でなければホンダ勢がいなくなってしまいました」

「だからその時は一歩引いて、最低限レースを完走するために自分のことだけでなく、チームのこと、ホンダのことを考えるようにしました。そうでなければ、大変なことになります」

「クラッシュすることは考えず、ただ最大限のパフォーマンスを引き出すだけです。ホンダのマシンで6年間MotoGPに参戦してきましたが、残念ながら状況はますます厳しくなってきています」

「いつプッシュすべきかを理解して、データを収集するためにレースを終えることを優先する必要があります。だから、僕はこういう状況でのマネジメントの仕方を理解し始めています。他のライダーに比べてクラッシュを抑えるのに役立っています」

 多くの意味で、中上のアプローチは手本になるモノだ。イギリスGPでマルケスは、マシンのデータをより多く集めるためにリザルトを犠牲にするアプローチを取り、MotoGPでの6冠に貢献したマシンを限界まで攻め立てるという従来のアプローチは封印せざるを得なかった。悲しいことだが、ホンダが改善していくにはそれしかないのだ。

中上「必死にプッシュしているのに、結果がついてきません」

 中上はイギリスGPのスプリントで20位、決勝で16位と無得点に終わり、新しい空力パッケージも苦境から抜け出す決定的な一打にはならないと中上は指摘していた。

 しかしホンダは、土曜日のスプリントから日曜日の決勝にかけてパフォーマンスを改善すべく、マシンに大きな変更を加える攻めの姿勢を取っていると中上は説明する。

「(2レース続けて競争力が足りないのは)日曜に向けてモチベーションを高く保つのが本当に難しいです。土曜日の時点ですでにトップ10から外れていますしね」と中上は言う。

「僕らは必死にプッシュしているのに、結果がついてきません。続く日曜日にはまたレースがありますし、自分自身本当に辛い状況です……どうすれば良いんですかね?」

「ただバイクに跨って、チェッカーフラッグを見るだけでは無意味ですし、自分にとってもチームにとっても満足できる状況ではありません。しかし残念ながら、こういう状況なんです」

「だから僕は強くなろうとしていますし、順位だけを見ないで、どうすれば改善できるかを考えます。もちろん、スプリントから日曜日にかけて変更を加えることもあります。普通なら、土曜日のスプリントレースが終わった後にリスクは冒せません。でも僕らはそうしないと何も得られないから、そうすべきなんです」

純粋な仕事ぶりが2024年以降の契約に寄与する?

 シーズン前、motorsport.comの姉妹誌である英Autosportでは2023年に大きな改善が必要なライダーとして中上の名前を挙げた。

 LCRの1席は日本人ライダーのため特別に用意されている。昨年まで中上の後任となりうるライダーは現れず、小椋藍が2023年もMoto2に残ることを決めたことで結果的に中上のシートは守られた。

 2024年に向けても、中上のシート確保の可能性を高めるふたつの要素が存在する。小椋はMoto2の開幕戦で負傷して2戦を欠場。昨年は1勝を含む5回の表彰台を獲得していたものの、復帰後のトップ3フィニッシュは1回のみに留まっている。

 もうひとつは、ホンダがマシン開発のために経験のあるライダーを求めているということだ。昨年限りでMotoGPを撤退したスズキからの移籍組であったリンスやミルが苦しんだ状況に、ルーキーを送り込むのは逆効果だと思われるからだ。

 中上は、ホンダでもう1年働くべきなのか、今季の働きぶりからホンダ側が彼に恩を感じているかについて言及は避けたものの、彼本来のパフォーマンスを競争力のあるマシンで発揮したいと語った。

「苦しい状況でもベストを尽くしましたし、ホンダのためにも良いレースができたと思いますが、もちろんベストな結果ではなかったかもしれません」と中上は言う。

「理解するのはかなり難しいですが、彼らがどう考えるか状況を見てみたいと思います。もし同じチームに残れるチャンスがあれば、もちろん嬉しいです。このまま(MotoGPを)去りたくはありませんし、自分本来のパフォーマンスを見せたいと思っています」

「しかし全てのメーカーは改善していますし、マシンにも競争力がなければいけません」

 中上のこうした反応を見る限り、彼はおそらく本当に言いたいことを我慢しているのだろう。

 しかし彼は胸を張るべきだ。確かにMotoGPでは長年大成できずにいるが、中上は2023年のホンダで多くを成し遂げてきたと言える。

 中上はドイツGPとオランダGPでも2024年以降の契約についてホンダとミーティングを行なったと見られている。ひょっとすると、彼は純粋な仕事ぶりで新たな契約を勝ち取ったのかもしれない。

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みんなのコメント

3件
  • もうこの人はあんまり意味がない。
    何シーズンも同じ事繰り返して…、伸びしろもないし。
  • 胸を張って開発ライダーになろう!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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