407psの電気モーターと95kWhのバッテリー
text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
今回試乗するクルマの名称は、アウディeトロン 55 クワトロ・スポーツバックの、Sライン。AUTOCARの読者ならご存知かと思うが、クワトロは四輪駆動を指す。55は、性能を格付けする数字。
スポーツバックだから、4ドアクーペだ。少し高めの金額と引き換えに、滑らかなルーフラインが得られる。荷室の容量は、45L小さくなる。
このEトロンの場合、2基の電気モーターと、95kWhのバッテリーが載っている。もちろんアウディだから、インテリアはとても上質。
すでに何度か、eトロンへは試乗している。スポーツバックの場合、トリムグレードはスポーティな仕立てのSラインが基本。ハード面では、通常の四角いeトロンと変わりはない。
フロア一面にバッテリーが敷き詰めれれ、電気モーターが前後に1基ずつ搭載されている。シングルスピードのトランスミッションをそれぞれ介して、前後のタイヤを駆動。システム総合での最高出力は407ps、最大トルクは67.6kg-mと不足ない。
ただし、最高出力が得られるのはアクセルを深く踏み続けている間の、8秒間のみ。アウトバーン以外なら、それ以上必要になることはないだろう。5.7秒で、静止状態から100km/hに届く。
ほとんどのシーンで、eトロン・スポーツバックはリアモーターだけで走行する。急加速時やリアタイヤのスリップを検知した場合は、フロントモーターも稼働する。
上質な車内を静寂に保って走る
その理由は、効率を高め、航続距離を延ばすため。さらにCd値0.25という空力性能に優れたボディが、効率をアシストする。ドアミラーは、小さなカメラが役割を担う。
eトロン・スポーツバックは、大きく重い。大容量バッテリーを積んでいても、航続距離は320kmから350kmの間くらいで、ライバルより短い。バッテリーは、最大で150kWの容量の充電器にまで対応する。
リアシート側の頭上空間が狭く感じられるものの、インテリアの雰囲気はアウディ。とても贅沢な雰囲気が漂う。
エアコンの操作系はタッチモニターに集約しない方が好みだが、触感的なフィードバックがあり、ボダンも大きく、操作はしやすい。上段のタッチモニターも大きく、メニュー構造はわかりやすい。
車内全体の組み立て品質や素材感、触れた印象などは非常に良い。8万ポンド(1120万円)もするだけのことはある。
ドライビングポジションは、やや起き気味。クロスオーバーだから、乗り降りしやすい。
eトロンのプラットホームは、純EVに専用開発されたものではない。ボンネットを開くと、充電ケーブルをしまうのに十分な空間が残されている。
空になったボンネット内の印象を打ち破るように、eトロンは沈黙のまま走る。ロードノイズや風切り音はほとんど車内に届かず、電気自動車の水準で見ても非常に静か。経験を積んだドライバーですら、スピードメーターを見ないと速度感が湧かないほど。
アクセルペダルの操作に対する反応は、ソフトでリニア。右足の力を緩めると、静かに惰性で進む。
車重の割に良く走り、乗り心地もイイ
エネルギー回生の強さは、ステアリングホイールに付けられたパドルで調節できる。ただし、ワンペダル・ドライブができるほど、強力な回生ブレーキは得られない。
EV専用ではないプラットフォームに大きなバッテリーを搭載し、車内の防音性に優れるということは、軽くない車重につながる。eトロン・スポーツバックの車重は2520kgもあり、通常のeトロンよりさらに30kgも重い。
実際に試乗車を計測してみたら、2569kgもあった。ざっくりいって、2.6tだ。
この重さを考えると、eトロンはとても良く走る。車重がかさむだけに、乗り心地はとても滑らか。そのかわり、大きな荷重移動が生じると、ボディコントロールも緩くなる。
一部のメーカーは、滑らかな乗り心地を犠牲にしつつ、引き締まった姿勢制御を得ようとする。だが、エアサスペンションが標準装備のeトロンは、路面と呼吸を合わせるかのように、しなやか。
ジャガーIペイスや、テスラ・モデルXなどよりも乗り心地は上質だ。21インチという大きなホイールを履いていても。それでいて、ボディの動きが乱れる、ということもない。
アウディeトロン 55 クワトロ・スポーツバックは、とてもまとまりの良い、リラックスしたドライブが楽しめる。静かな車内との相性も、とても良いと感じた。
アウディeトロン・スポーツバック 55 クワトロ Sライン(英国仕様)のスペック
価格:7万9900ポンド(1118万円/英国政府補助金適用後)
全長:4901mm
全幅:1935mm
全高:1616mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:5.7秒
航続距離:387km
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:2520kg
パワートレイン:ツイン永久磁石モーター
バッテリー:95kWhリチウムイオン
最高出力:407ps(システム総合)
最大トルク:67.6kg-m(システム総合)
ギアボックス:シングルスピード
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