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【F1第9戦無線レビュー(1)】ノリス、予想外のペナルティに困惑「コース外の連中は何を期待しているんだ」

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【F1第9戦無線レビュー(1)】ノリス、予想外のペナルティに困惑「コース外の連中は何を期待しているんだ」

 レッドブルリンクでの2戦目となった2021年F1第9戦オーストリアGP。降水確率60%の状態でスタートを迎え、隊列の各所でポジション争いが繰り広げられた。上位ではランド・ノリスが思いもよらぬペナルティに驚く場面も。オーストリアGP前半の様子を無線とともに振り返る。

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【F1第9戦無線レビュー:予選】「ちょっと速すぎた?」ミディアムでのQ3進出を狙い、あえて速度を落としたラッセル

 レッドブルリンクでの2戦目。降水確率は60%と高いが、レース中に雨は降りそうにない。ただし路面温度は1週間前に比べて、20度近く低下した。その状況でタイヤがどこまで保つかが、このレースでの焦点と思われた。

 スタート直後、エステバン・オコン(アルピーヌ)がアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)とミック・シューマッハー(ハース)に挟まれ、サスペンション破損で早々にリタイアした。

シューマッハー:接触があった……ターン3だ
ゲイリー・ギャノン:わかった。すぐにチェックしよう

 幸いダメージはなかったようで、シューマッハーはそのまま周回を重ね、一時は16番手を走行した。

 13番グリッドスタートのダニエル・リカルド(マクラーレン)も、ミディアムタイヤでスタートを決めて11番手に順位をあげていた。

トム・スタラード:素晴らしいスタートだった。P11だ。ルクレールはミディアムだが、その前にソフトが4台いる。最初のスティントで前に行けるはずだ

 しかしすぐ後ろでリカルドのオーバーテイクを目撃したフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は、こう言っていた。

アロンソ:リカルドがアウト側から抜いていって、3つか4つ順位を上げた。まちがいなく、すぐにペナルティだね。まったく、すごい抜き方をしていったよ

 ターン1ではみ出しながら抜いていったことを、アロンソは指しているのか。しかしアロンソの思惑とは裏腹にペナルティは出ず、リカルドはさらにセーフティカー(SC)明けにシャルル・ルクレール(フェラーリ)をかわすと、スタラードの言葉通りソフトタイヤ勢のピットインの間に、17周目には5番手に躍進した。

 SC解除直前には、メルセデスのピーター・ボニントンからルイス・ハミルトンに、こんな指示が飛んでいる。

ボノ:マジックのキャンセルを忘れるな

 フロントタイヤに急激に熱入れするマジックボタンの解除を忘れるなと念押しするボニントン。ハミルトンにしてみれば、「わかってるよ」と言いたいところだろう。

 レース再開直後、ランド・ノリス(マクラーレン)とセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)が激しいバトルを繰り広げ、ターン4の立ち上がりでアウト側のペレスはコースオフ、大きく後退してしまう。

ペレス:僕を押し出しやがった!

 漁夫の利を得た形となって3番手に上がったバルテリ・ボッタスに、リカルド・ムスコーニが活を入れる。

ムスコーニ:ペレスはP10まで落ちたぞ。ルイスとノリスを追うんだ

 一方のノリスは、ハミルトンから激しい追い上げを受けていた。

ジョゼフ:ガスリーは10秒4だ
ノリス:OK。でも、どうでもいい

 ノリスの3台後ろにいるピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)のペースを、担当エンジニアのウィル・ジョゼフは注意喚起したが、ノリスはそれどころではない。
 SC明けにリカルドに抜かれて11番手に後退したルクレールは、ブレーキの不調を訴える。

ルクレール:ブレーキはどうなっているんだ。ブレーキバランスなのか。すごく変だ

 ルクレールはこの時点で5番手ガスリーに始まるDRSトレインの真ん中にはまって、身動きの取れない状態だった。しかしソフト勢の角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)、ガスリー、ランス・ストロール(アストンマーティン)が次々にピットに向かうことで、徐々に順位を上げていった。

 下位集団ではキミ・ライコネン(アルファロメオ)も、カルロス・サインツ(フェラーリ)とアロンソに挟まれる形で、マシンと格闘していた。

シモン・ショートン:バトルの最中だと思うけど、ブレーキ温度がかなり上がっている

 乱流のなかでのバトルで、ブレーキにかなりの負荷がかかっていたようだ。数周後にはライバルたちの動向が伝えられた。

シモン・ショートン:ラッセルとサインツが、タイヤを保たせろと言われている。1回ストップで行くつもりだろう

 ソフト勢4台のすぐ後ろを走るリカルドに、スタラードが角田のペースを伝えた。

スタラード:角田がタイヤにてこずり始めてる。まだストロールの前にいるけどね
リカルド:了解した

 担当エンジニアが何かを言った際、リカルドはunderstood(わかった)ということが普通だ。それに対し他のドライバーは、copyと返すことが多い。「言っていることがコピーできている」から「理解した」という意味に派生したもので、1970年代にアメリカでCB(シチズンバンド、市民用短距離無線)が流行した際に使われた言い方が、一般に広まったとされる。

 12周目前後、ノリスはハミルトンの追撃をなかなか振り切ることができない。

ノリス:僕より速いんだけど。どんなリスクを冒すべきなんだ?
ジョゼフ:左リヤタイヤを使いすぎてる。何とか使わずに、抑えるんだ

 ところがその後、ノリスがペレスを押し出したとして、5秒ペナルティを科されてしまう。ノリスが当然怒るであろうことを予期してジョゼフがなだめにかかるが、ノリスの不満は収まらない。

ジョゼフ:5秒ペナルティだ。でも大丈夫だ
ノリス:え? なんで?
ジョゼフ:心配するな。リカルドとのギャップは24秒9ある
ノリス:わかった。ターン1のことなのか? コース外の連中は何を期待しているんだ

「ターン1のことか」という言葉からも、ノリスはターン4でのペレスとのバトルがペナルティ対象になったとは、夢にも思っていなかったようだ。
 29周目のリカルドを皮切りに、ミディアム勢のピットインが始まった。20周目にハミルトンにかわされ3番手に後退したノリスを、4番手ボッタスが激しく追う。

ムスコーニ:現状を説明するぞ。リカルドまで23秒あるので、フリーストップに問題ない。ノリスは5秒ペナルティだから、だめだ。

 今年のレッドブルリンクでのピットタイムロスは、約21秒だった。ノリスは5秒余分に静止しないといけないので、順位をあげられるぞとムスコーニはボッタスに伝えたわけだ。

ムスコーニ:ボックス、ボックス! ノリスに続け。できなかったらステイアウトだ

 30周目に2台は同時にピットインし、ボッタスは悠々と3番手でコース復帰した。首位争いはフェルスタッペンが独走状態で、31周目にハミルトン、32周目にフェルスタッペンがピットイン後も、その状況は変わらない。

ボノ:フェルスタッペンはハードで、13秒前だ
ハミルトン:離れすぎている
ボノ:ああ。ギャップを築いてる。ここからはノリスとレースだ

 この時点でハミルトン陣営は完全に優勝をあきらめ、2位確定に集中しようとした。このまま走りきれば、それは十分に可能なはずだった。ところが……。

ボノ:左リヤにダメージがある。空力に問題だ
ハミルトン:リヤが全然効かない

ムスコーニ:ターン10の出口で縁石に乗るな。ルイスがフロアにダメージを受けている

 縁石に乗った際にフロアにダメージに受けたようで、ハミルトンのペースが落ち始めていた。
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(2)に続く

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