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悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑

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悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑

 4時間レースのうち半分の2時間が赤旗中断という波乱の展開となった2024スーパー耐久最終戦富士。各クラスともにチャンピオン決定の瞬間を迎えたわけだが、毎年白熱したバトルが繰り広げられるST-4クラスは、残り10分で王座の行方が変わる“まさかの展開”が待ち受けていた。

 最終戦を前に3ポイント差でランキング首位につけていたのは前年からST-4クラスに参戦する41号車エアバスターWINMAX GR86 EXEDY。予選でもクラスポールポジションを奪い連覇に向けて一歩ずつ近づいていた。

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 冒頭でも触れたとおり、レースは途中に大きなアクシデントが発生したことでガードレールが破損の修復作業が2回発生し、合計で約2時間も中断されるという史上稀に見る展開となった。残り30分でレースが再開されると、4番手につけていた41号車エアバスターは冨林勇佑がアンカーを務め、前を走る3号車ENDLESS GR 86(小河諒)を猛追。チェッカーまで残り20分のところでオーバーテイクし、チャンピオンの座をほぼ確実のものとした。

 しかし、残り10分というところで左フロントタイヤが脱輪するトラブルに見舞われ、ダンロップコーナーでストップ。2024年のST-4クラスのタイトルは逆転で3号車ENDLESSが獲得することとなり、同時にST-3クラスに参戦していたころから連覇を重ねてきた冨林と41号車Aドライバーを務める石井宏尚にとっては、スーパー耐久5連覇達成が目前にして潰える結果となった。

「今まで、こういうふうになる人を側から見てきて『かわいそうだなぁ……』と思っていましたけど、いざ自分がその立場になったら、逆に清々しいですね。チームの誰も悪くないし、本当に仕方ないなという気持ちです」と冨林。

 最終スティントでのドライブ中にトラブルに見舞われた冨林。ピットに戻って41号車が回収されて戻ってくる姿を見ながら、最終スティントで3号車を抜いたときと、トラブル発生の瞬間を冷静に振り返った。

「状況的に3号車が勝てない状況になったので、4位でも良かったのですけど、(3号車を)抜いた後にそれを知らされました。だけど、わざわざ譲る必要もないなと。ある程度プッシュはしていましたけど、そこまで無理をする感じでもなかったです」

「100Rで急に左フロントがおかしくなって『タイヤかな?』と最初に思って、厳しいけどピットに戻れるなら戻ろうと思いました。そうしたらダンロップでブレーキが効かないなと思ったらタイヤが転がっていったので……『あぁ、これは止めよう』となりました」

 冨林はグランツーリスモ世界チャンピオンに輝いてから4輪レースデビューを果たしてスーパー耐久にステップアップ。2020年にST-3クラスでタイトルを獲得して以降、毎年クラスチャンピオンを手にしてきた。スーパー耐久のなかで記録となっている谷口信輝の6連覇を目標にして毎レースを戦っていた。

「改めて、谷口さんの6連覇ってすごいんだなと感じました」と冨林。

「みんな頑張ってくれたので……仕方ないです」と、悔しさを表に出す素振りはなかったが、何度も「仕方ない」と繰り返し、タイトルが獲れなかったという現実を受け止めようとしているのが印象的だった。

■試合には勝ったけど勝負に負けた気分と言う3号車ENDLESS
 一方、41号車の脱落もあって逆転でチャンピオンを手にした3号車ENDLESS。昨年からGR86で同クラスに参戦し、今年は開幕戦のSUGOと第4戦もてぎで優勝を飾った。ただ、今季タイトルを争ってきた41号車と比べると常に課題があったという。

「開幕戦はこちらが圧倒的なペースがあって、そのままシーズンが進むのかなと思いきや、24時間ではいろいろなチームに惨敗するかたちでした。そこで僕たちのなかで得意不得意があるということが分かり、改良を重ねていきました」

 そう語るのは3号車のBドライバーを務める菅波冬悟。最終戦でもペース的には41号車に追いつけないところがあり、「今までの富士戦のなかではベストな状態で予選・決勝ともに行きましたが、トップのチームには及ばない苦しい展開でした。そのなかで展開と運がすべて味方してくれた結果のチャンピオンだったので……嬉しい反面、何か悔しさも感じています」と複雑な表情をみせた。

 同じくAドライバーの坂裕之も「試合には勝ったけど、勝負では負けていたなと思います。開幕戦のSUGOなどではトップに立ったときはピット内も湧き上がりましたけど、今回はああいうかたちだったので……複雑な心境になりましたね。素直に喜べなかったです」と笑顔は少なめ。

 Cドライバーの小河諒も「なんとか冨林選手と良いバトルができればなと思っていたのですけど、相手にうまくやられてしまいました。でも、残り時間を考えるとまだチャンスはあるかなと思ってプッシュにしていたので……ああいったかたちで終わってしまったのはすごく残念でした」と同様の感想を持っていた。

 それでも3号車自身の進歩を感じた1年間だったようで「昨年はほぼ全戦でトラブルに泣かされていたなか、今年はトラブルがなかったので、そういった意味でエンドレスとしては成長を遂げた1年だと思います。ST-4はある意味、強力なライバルがいるクラス。TOM’S SPIRITが今年(ST-4に)参戦していないですけど、41号車や884号車(シェイドレーシング GR86)をはじめ強力なライバルがいるなかで僕たちも頑張ることができました。そのなかで獲得できた結果なので、そこは良かったです」と締め括った。

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