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BMW「2002ターボ」が50周年! 全世界にターボの新時代を巻き起こした名車を振り返ろう

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BMW「2002ターボ」が50周年! 全世界にターボの新時代を巻き起こした名車を振り返ろう

1973年に登場したBMW 2002ターボの足跡を辿る

この2023年も、自動車史上に冠たる名作、あるいはエンスージアストの記憶に残るクルマたちが、記念すべき節目の年を迎えることになる。近年では、とくに長い歴史を誇るブランドでは「〇〇周年」のアニバーサリーイヤーをメーカーや愛好家グループによって大々的に祝賀する事例が多くなっているようだが、AMWでも偉大な名車たちに想いを馳せつつ、それぞれのモデルヒストリーを辿ることにした。今回は、今を去ること半世紀前、1973年秋にデビューしたヨーロッパ車初の市販ターボ車、BMW「2002ターボ」をご紹介させていただくことにしよう。

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レース譲りのテクノロジーが投入された、欧州初の市販ターボ車

燃費と二酸化炭素排出を抑えるダウンサイジングが、もはや当たり前とされている現代のICE(内燃機関)。それを支えるエコロジー技術としても認知されているターボ過給だが、1970~80年代のターボは、スピードを得るためのもの。ごく一部の高性能車にのみ許された先端技術であった。「turbo」の5文字は、当時のエンスージアストにとって、まさしくパワーとスピードの象徴とも言うべき意味を持っていたのだ。

そんな高性能ターボ時代の幕を開いたのは、ヨーロッパ製量産車として初めてターボチャージャーを採用し、1973年秋のフランクフルト・ショーにて鮮烈なデビューを飾ったBMW 2002ターボである。

航空機エンジンの分野では「排気タービン」と呼ばれていたターボチャージャー過給について、長らく航空機エンジンメーカーとしても活動していたBMW社は、1960年代の段階ですでに豊富なノウハウを有していた。そして、その技術力を自動車にも応用するため、まずはモータースポーツを試験場として選ぶことになる。モータースポーツの現場を実験室とする方策は、奇しくも2002ターボ登場の約半年後に量産バージョンがデビューした、ポルシェ「930ターボ」と同じである。

1969年、のちに「BMWモータースポーツ社」(現在のM社)となるBMWワークスチームは、当時大人気を博していたヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)において総合年間タイトルの対象となっていたグループ5カテゴリーに向けて、KKK社製ターボチャージャーを装着した「2002tik」(末尾の「K」はKompressorの頭文字)を投入。元来2+2のスポーツカーで、純粋なツーリングカーとは言い難いポルシェ「911」などの強力なライバルを向こうに回し、見事このシーズンのコンストラクターズ・タイトルを獲得するに至った。

ちなみに、ポルシェ・ワークスが初めて公式レースに投入したターボ搭載マシン、北米Can-Am選手権用の「917/10」がデビューしたのは、1971年シーズンのこと。つまりBMWは、この段階でもすでに、ターボ過給技術のトップランナーであったことがご理解いただけることだろう。

悲劇の名作となるも、全世界にターボの新時代を巻き起こす

ツーリングカーレースでヨーロッパタイトルを獲得した2002tikのレース活動で獲得した貴重な経験、あるいは1972年に製作・発表され、のちのM1の起源になったとも言われるコンセプトカー「BMWターボ」の経験をフィードバックした市販モデルとして生み出されたのが、現在では歴史的名作と称される2002ターボである。

同じく名作として知られるポルシェ930ターボに先んじてリリースされたことから、かつては2002ターボについて「世界初の量産ターボ車」とする記述も散見されたが、それは誤りであることは、AMW読者諸兄ならばご存知であろう。

蛇足までに記しておくと、世界で初めてターボ過給エンジンを搭載した乗用車は、米国オールズモビルが1962年に発売した「F-85ジェットファイア」および、シボレーの「コルヴェア・モンザ」。いずれも北米ゼネラル・モーターズに属する2メーカーから送り出されたが、この時代は過給圧も低くて大きなパワーアップを果たせていなかったこともあってか、大きな影響力を及ぼすに至らなかったという。

いっぽう、11年後に登場した市販型2002ターボのエンジンは、それまで2002系の最高性能版だった「tii」用の直列4気筒SOHC・1990ccユニットをベースにモディファイしたもの。圧縮比を6.9:1まで落とし、シェファー社製機械式燃料噴射とKKK社製ターボチャージャーとの組み合わせで、自然吸気版から40psアップに相当する170psのパワーと24.5kgmのトルクを発生した。

また、パワーアップやターボ特有の熱量増大に対処して冷却系も強化。一方トランスミッションは標準型2002と同じ4速MTが標準で、5速もオプション選択可能とされたが、ともにクロスレシオ化されたかたわらで、増大したトルクに対応してファイナル・ギアレシオも速められていた。

もちろんシャシーについてもサスペンションが一段と固められたほか、ブレーキも前ディスク/後ドラムを踏襲しつつもフロントはベンチレーテッド化され、リアドラムも径が拡大された。さらにホイール/タイヤも大幅にワイド化。そしてその拡幅分をクリアするため、前後フェンダーにはリベット留めのFRP製オーバーフェンダーが追加されたものの、日本仕様のみは鈑金加工で一体化したスチール製オーバーフェンダーとされていた。

くわえてエクステリアでは、フロントにバックミラーに映った際に正しく見えるよう、「turbo」を逆さ文字で記したデカール付きのエアダムスカートを装備。そして、こののちドイツを中心に流行する、ソフトな材質の樹脂製リアスポイラーで完全武装していた。

こうして誕生した2002ターボは、最高速211km/h、0-400m加速15.3秒という、当時の2L級サルーンとしては圧倒的なパフォーマンスを獲得することになる。

ところが、1970年代中盤にはオイルショックに端を発する省燃費対策や安全対策、あるいはエミッションコントロールのため、高性能車が世界的な冬の時代を迎えていたことから、1974年末限りで生産を終了。その生産台数は、わずか1672台(ほかに諸説あり)に過ぎないという、悲運の名作ともなってしまった。

それでも、その後ヨーロッパから日本でターボ時代が発生する起源となり、さらには元祖であるアメリカにもターボ過給のムーブメントを再燃させた立役者であることは、間違いない事実なのである。

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