フルモデルチェンジした新型メルセデス・マイバッハSクラスについて、開発担当者が日本のメディアに話した“こだわり”とは? グループ・インタビューに参加した田中誠司がリポートする。
多くの人が日常的なシーンでも使用
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メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」の登場からまもなく、これをベースとする最高級バージョンであり、かつての名車「マイバッハ」の名を受け継いだ「マイバッハSクラス」がデビューを飾った。
その直後に実施されたグループ・インタビューにおいて、製品企画担当ディレクターのディルク・フェッツアー氏、プログラム・ダイレクターのオリバー・トゥーネ氏、エクステリアデザイン担当ディレクターのロバート・レズニック氏の3人が日本メディアの質問に答えてくれた。その模様をさっそくお届けする。
Mercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansQ:2015年の発売から全世界で約6万台が売れるなど、従来型のマイバッハは非常に大きな成功を収めましたが、そのカギは何だったと思いますか?
A:世界的なトレンドとして“ハイエンド・ラグジュアリー”を再現するような車両への需要が高まっていることが挙げられます。そしてまた、モダンな方法でラグジュアリーを表現したい、オーナーの人柄を表現したいという希求が高まっています。そんな流れに沿ってマイバッハも需要を伸ばしたと言えます。
Q:マイバッハがとくに成功を収めた理由として、メルセデス・ベンツSクラスという実績あるモデルとの関連性をあえて顧客に印象づけたことが挙げられますが、メーカーサイドではどのように考えていますか?
A:サブブランドであるマイバッハを導入するにあたって、意図的にSクラスというモデルを選び、それが収めてきた成功を私たちも常に目標としてきました。Sクラスが世界においてもっとも優れた高級車であると、世界中のお客様に認められていることが非常に重要でした。マイバッハのお客様は、最高のラグジュアリーと最高級のクラフツマンシップ(職人技)、最先端のイノベーションという3つの組み合わせを常に期待しています。Sクラスの実績に基づいて、これまでにない洗練されたラグジュアリーを表現することで成功を収めました。
Mercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansMercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansMAYBACH - Ultimate Luxury AccessoriesMAYBACH - Ultimate Luxury AccessoriesMercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansQ:先代マイバッハはビジネスシーンで使われることが多かったようですが、ほかの超高級車ブランドに比べると“悪目立ち”しないことでマイバッハが選ばれているのでしょうか。
A:ビジネスシーンにおいて、お使いになるご自身を表現するという意味もあってマイバッハSクラスを使うお客様も多いですが、車両の利用状況に関して集めたデータのなかには非常に興味深いものがあります。実は日常的なシーンでマイバッハを使うお客様も多くいらっしゃいます。平日はビジネスシーンで運転手をつけて使用し、週末はご自身で運転をされるという場合も多いのです。
シルエットからして目を引く美しい車になっているので、洗練されたラグジュアリーを好まれるお客様が毎日お使いになる。ご家族を大切にされる方で、ご自身が運転されてご家族は後部座席で過ごすケースも多くあります。このように使い分けられることもマイバッハの強みであると思っています。
Q:そもそもSクラスはすでにラグジュアリーですが、とくにマイバッハSクラスを特徴づけるものは何なのでしょうか。
A:Sクラスに高級車として基本的な特徴は整っており、そこにさらに磨きをかけたのです。たとえば全長5.5mと非常に長い車なのですが、Sクラスのボディを途中からただ伸ばした訳ではなく、客室は専用の構造を与えられています。それゆえ後席ドアが開けやすい構造になっているほか、Cピラーには固定式のデイライト・ウィンドーが設けられており、よりフォーマルに見える視覚的な効果があります。その背後にあるロゴは、内側から光ります。
そしてツートーンのボディカラーはSクラスにないマイバッハの特徴です。塗装のピンストライプはもっとも熟練した職人が手作業でのみ行える工程となっています。ドアのフレームもSクラスより厚みがあります。従来型のマイバッハに比べボンネットは高さを増し、コンセプトカーである「ヴィジョン・メルセデス・マイバッハ6」のようにグリルも高い位置にあり、多数のセンサーを巧妙に内蔵しています。このように小さなディテールが重なって、マイバッハならではの美しいシルエットができあがっているのです。
Mercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansQ:ツートーンでは色々なカラーが選べると思いますが、どのように色を選択しているのでしょうか。
A:ボディカラーは多数の色からお選びいただけるのですが、ツートーンはカラー&トリム専門のチームが選んだ、いくつかのベストマッチしたコンビネーションに限ってお選びいただけます。組み合わせによってまったく違ったキャラクターとなります。
嗜好は世界共通
Q:マイバッハの大きなマーケットは中国と聞いています。中国の富裕層とその他の国の顧客の間に、何か好みに違いがあるとお考えでしょうか。
A:最近できた新しい会社と違い、メルセデス・ベンツには伝統があります。私たちは伝統の上に伝統を作り上げていることを忘れてはいけません。およそ100年前から、大きなエンジンが前輪の後ろに位置し、客室は後方へ寄せられる、というプロポーションで高級車はデザインされており、そうした傾向が数十年続き、人々の記憶にいまも残っています。
洗練されたラグジュアリーへの嗜好は世界中どこでも変わりません。お客様はとにかく“世界で最高の商品”を求めています。特定の市場をターゲットにするよりも、グローバル・マーケットのすべての消費者をターゲットにしています。私たちデザイナーは将来を定義しているのです。5年後に何が欲しくなるかと消費者に尋ねても、ほとんどの人はそれに答えることができません。私たちメルセデス・ベンツの仕事は、もっとも望ましい車をデザインすることです。私たちは美しさと“特別であること”を再現しています。
300万ピクセルのヘッドライトやタイヤの配置、Cピラーに輝くロゴ。このような嗜好は世界中どこでもおなじであると考えています。日本、中国、アメリカなど世界の国々で明らかに異なる点といえば、オプションの選択率や内外装のカラーだけです。
Mercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansQ:かつて北京にあるメルセデスのアドバンスト・デザイン・センター責任者だったオリビエ・ブーレイ氏は、中国には2つの消費グループが存在し、国際的で洗練されたグループと、とにかく高額なものを好むグループがあると語っていました。ブーレイ氏は前者にフォーカスするべきとのことでしたが、その点についてどうお考えですか。
A:ブーレイ氏はすでに退職していますが、彼のことは良く知っています。彼の言ったとおり中国には異なる消費グループが存在します。われわれの調査によると、中国のお客様はもっとも若く、もっとも革新的です。ふたつのグループのお客様は違うバックグラウンドを持っているかもしれませんが、デザイナーとしてはどちらにも満足していただく必要があり、世界で最高の商品を提供している限り、どんなお客様も満足されると思います。
Q:今回のモデルには前席と後席を隔てるパーティション(隔壁)が用意されないという認識で間違いないでしょうか。またパーティションを設定するメリットとデメリットを教えてください。
A:新しいマイバッハにパーティションは用意されません。新型の開発には多額の投資を要するので、仕様を決めるにあたっては、前段階で入念な顧客調査を実施しました。純粋に運転手だけが運転するリムジンである場合はパーティションが好まれる場合がありますが、マイバッハは先にも述べたとおり、運転手だけが運転するような車ではないので、大半のお客様が必要ないと答えています。
パーティションを設けると、ノイズ低減やプライバシーの点では有利ですが、スペースユーティリティや安全性の点で妥協を強いられることもあります。ノイズ低減については、ノイズキャンセリング・システムの導入など最高級車にふさわしい配慮をしています。
Mercedes-Maybach S-Klasse (Z 223), 2020Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & VansQ:新型マイバッハのプレゼンテーションでは、“指先の感触”について言及していました。Sクラスと比べてどれくらい、感覚的な側面を重視して開発したのでしょうか。
A:“指先の感触”とは、具体的な感覚というよりはお客様の求めるものをいかに繊細に感じ取って製品に具現化するかを意味しています。お客様が感覚的に求めていること、目に見えないものを、しっかりつかみ取って反映するということを表しています。そうすることでこれ以上にないくらいハイテクでラグジュアリーな美しさ、そういったお客様自身も気付いていないものを体現し、マイバッハで表現しています。
文・田中誠司
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専用設計できないご時世なのはわかるけど、差別化あんまりできてないな。