WEC富士6時間レースを前に、シリーズに参戦している気になるドライバーをご紹介するこのコーナー。第2回としてご紹介するのは、LMGTEアマクラスに参戦しているリシャール・ミルAFコルセのリル・ワドゥだ。
フランス籍のワドゥは、ルイス・ペレス・コンパンク/アレッシオ・ロベラとともに83号車フェラーリ488 GTE Evoを駆り、天気に翻弄された今季の第3戦スパで見事にクラス優勝。WEC史上初の女性ウイナーとなったドライバーだ。
WEC初の女性ウイナーとなったリル・ワドゥ。自らのオーバーテイクで勝利つかみ「とても誇りに思う」
■キャリア開始は14歳と遅咲き
ワドゥは、パリから100kmほど北にあるアミアンという田舎町出身の22歳。モータースポーツでのキャリアはカートも含めて、まだわずかに8年という。
「14歳の時、両親とカートを始めたの。最初に家族や友人と行った時に楽しくて、『また行きたい、また行きたい』という感じでね。その後、16歳の時には、プジョー208のレースを始めて。そのカテゴリーを2年戦った後、アルピーヌ・カップに出るようになった。そして、去年WECのLMP2クラスにフル参戦することになったの」
なんとあっという間のステップアップ! と驚かされるが、それだけ彼女のスピードが最初から優れていたということのなのだろう。それにしても、普通ではありえない驚速ステップアップだ。ちなみに彼女は2021年末のWECルーキーテストでLMP2ドライブの機会が与えられ、フル参戦後の2022年末の同テストではトヨタGR010ハイブリッドのステアリングも握っている。
しかも、「カートを始める前は、特にモータースポーツにまったく興味はなかった」というのも衝撃的だ。
「たまにF1を見たり、ル・マン24時間レースを見るぐらい。少ししか見たことがなかったし、いつ自分がレーシングドライバーになりたいと思い始めたかも覚えていないぐらい。子供の頃は、自分が何になりたいかなんて、考えたこともなかったんじゃないかな」
「今の夢は、いつかル・マン 24時間レースで勝ちたいとうこと。それに、ハイパーカーのドライバーになれたらいいなって思っている」
「ただ、F1を夢見たことは全然ないし、耐久レースでやっていきたい。レーシングカーに乗るために、スポーツは毎日しているわ。クルマに乗るといろいろなことがあるし、鍛えておかなければならないから」
■すべてにおいてシンプル、常に冷静。それが強さ
WECの国際映像を見たことがある人なら、レース中、彼女がピットリポーターのルイーズ・ベケットさんにインタビューされるシーンを覚えている人もいるだろう。今回、いくつか質問をさせてもらったが、ワドゥはそのベケットさんのインタビュー時と同じく、答えがとても短い。ある意味、取りつく島がないという感じだが、別にフランス人だから英語が苦手というわけでもなく、単に無口な性格のようだ。
ということで、もう少し彼女のことを知るために、マネージャーを務めているフィリップ・デュマ氏に話を聞いてみよう。
このデュマ氏は、以前ヘクシス・レーシングという自分のチームを持っていて、それが解散した後に、OAKレーシングのチーム代表を務めていた人物。その後、AFコルセでも働いていたが、いつの間にかドライバーのマネージャーになっていて、現在はプジョー9X8をドライブするミケル・イェンセンをはじめ8人の面倒を見ているのだという。
デュマ氏から見たワドゥは、どんな人物なのだろうか?
「彼女はすべてにおいて、とてもシンプル。スポーツ好きだし、田舎に住んでいるので、愛犬との散歩も好きだね。いつも冷静だ。そこが彼女の強さだと思う」
「また、クルマの運転やWECの場にいるのは好きだけど、それと同時に普通の生活が好きなんだ。犬と散歩したり、友人とレストランに行ったりね。パドルという小さなラケットで球を打ち合うテニスも好きだよ」
ワドゥはデュマ氏に対しても、口数は少ないそうだ。ということで、日本のことを聞いたり、日本のファンにメッセージを、とリクエストした際も、やはりとてもシンプルな答えが返ってきた。
「日本には去年初めて行ったけど、何も見ることができなかった。COVIDによる制限がまだあったから、レースのための4日間だけしかいられなかったし、何も見ることができなかった。今年は1週間滞在する予定だし、東京を見たいわ。フランスと違いがあると思うし、その違いを見たい」
「みなさんこんにちは。富士でお会いしましょう」
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