■「904GTS」は、ポルシェ「GTS」の開祖
ポルシェでは、「928GTS」以来途絶えていた「GTS」のバッジを、997系911に設定された「911GTS」を皮切りに、今や911シリーズや「718ケイマン/ボクスター」などの純粋なスポーツモデルはもちろん、「パナメーラ」や「マカン」、「カイエン」などのセダン/SUVにも設定。また、ブランド初のBEVとなった「タイカン」にも、いずれは追加されると見込まれている「GTS」グレード。その歴史は、遥か半世紀以上も昔に開発された伝説的レーシングモデルまで遡ることができる。
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その名は904GTSこと「カレラGTS」。ポルシェの栄光の歴史に輝く、小さいけれども偉大な一台である。
第二次大戦後のスポーツカーレースにポルシェが関与していない時期は、ほぼ皆無に等しい。ポルシェは、1948年の創業から3年後にあたる1951年から、ル・マン24時間レースに挑戦し、クラス優勝を獲得したことに端を発し、特に1960年代後半からは「グループ6」、1970年代の「グループ5」、1980年代の「グループC」、そして2010年代の「LMP1」と、その時々のトップカテゴリーにおいて、数々の勝利とタイトルを獲得してきたのだ。
ここ数年は、ヴァイザッハのファクトリー自らがチームを結成して、トップカテゴリーに参戦することこそなくなっているものの、それでもGTEカテゴリーでは、プライベーターにデリバリーされたおびただしい数のポルシェ911の大軍勢が熱戦を繰り広げている。
時にはプライベーターの駆るGTカーが、しばしば総合優勝をはじめとする好成績を挙げて、ポルシェ全体のスポーツイメージのボトムアップをしている状況だ。実は、そんな図式が、いまから60年近く前にもあった。
国際自動車連盟(FIA)のもとスポーツカー/GTレースを管轄していたCSIが、1963年からのスポーツカー世界選手権GTカテゴリーのホモロゲート取得に必要な最低生産台数を「100台」に改訂したことから、ポルシェはその直前までGTタイトルを闘ってきた「356B 2000GS」に代わるニューマシンとして、より先進的かつ戦闘力の高いミッドシップ車を開発する。
これが巷では「904GTS」とも呼ばれることの多い「カレラGTS」である。
904では、550スパイダー以来のポルシェ「レン・シュポルト(レース用スポーツカー)」で伝統となっていた、鋼管スペースフレーム+アルミ製ボディ表皮という手法を、生産性を向上させるためにあっさりと放棄する。
深さ20cmにもおよぶプレス鋼板で組んだ箱型断面のラダー型フレームと、そのフレームに強固に接着されることによって、構造材として応力も担うハインケル社製FRPボディシェルが組み合わせられた。
一方パワーユニットについては、904プロジェクトがスタートした当初の案では、のちの後継車となる「カレラ6」にも搭載された911系フラット6の搭載で開発が進められたが、これは結局間に合わなかった。
そこで、旧カレラ2000GS系の587/3型空冷水平対向4気筒4カムシャフト(バンクあたりDOHC)1966ccユニットを選択。サイレンサーを持たないレーシングバージョンでは最高出力180psを絞り出し、265km/hの最高時速を標榜していた。
その一方で、ポルシェの名作901(のちの911)のアウトラインを引いたことでも知られるハンス・トマラ技師ほか、当時のポルシェ技術陣がこの904の性格付けをいかなるものと考えていたかは、以下の装備を与えたことから窺い知ることができる。
まずは、レーシングカーとしては当たり前の直管エキゾーストに加えて、パワーは155psまで低下するものの、ロードユーズも可能とするサイレンサー付エキゾーストが選択できた。また、メーカー指定のタイヤも通常のレーシング用ではなく、165HR15のロード用ラジアルとされ、レース参戦時にはそれぞれのエントラントが各自、タイヤメーカーから供給を受けることになっていた。
さらに市販モデルである904には、レーシングモデル/ロードバージョンを問わず、当時のレーシングカーとしてはおおよそ無縁とも思われていた装備、独ヴェバスト社製のガソリン燃焼式ヒーターまで全車に標準装備されていたのだ。
つまり、904に与えられたキャラクターは、より理解しやすくするために近年のポルシェ製レン・シュポルトになぞらえると、その時々のレギュレーションが要求する生産台数によって性質にいささかの違いはあるだろうが、本質的には往年の「962C」や「911GT1」、あるいは「919ハイブリッド」の祖先というよりは、現代の「911GT3RS」や「ケイマンGT4」に近い存在だったとも考えられる。
それは、当時のポルシェ技術陣が構築した企画コンセプトにもはっきりと謳われ、曰く「自宅からサーキットまで自走で往復できるため車載トラックを必要せず、ユーザーに優しい」GTカーという性格づけがなされていたのだ。
■オールマイティ、あるいは文武両道
発売当初、「カレラGTS」というシンプルな名称とともにデビューした904は、ポルシェ首脳陣の見込みどおり、世界スポーツカー選手権GTカテゴリーで素晴らしい強さを見せる。
当時の2000cc以下クラスでライバルだった「アルファロメオ・ジュリアTZ」や「アバルト・シムカ2000GT」を圧倒するが、さらに驚くべきはル・マンなどのビッグレースにおいても、フェラーリ勢やシェルビー・コブラ・クーペに続く7位入賞を果たすとともに、当然のごとく2000ccクラスを制覇。
そしてイタリア・シチリア島の「タルガ・フローリオ」では堂々総合優勝まで獲得するなど、排気量や所属カテゴリーさえも超越してしまう。
つまり、904はGTカテゴリーのために開発された市販車ながら、1963年シーズンまで上位の「スポーツカーカテゴリー」で闘っていた「RS718」系8気筒シュポルト・スパイダー/クーペ後継モデルの役割まで、立派に果たしたことになるのだ。
しかも、904が強さを示したのはサーキットレースのみならず、レーシングカー上がりのスーパースポーツには似つかわしくない、本格的なラリー競技でも実力を発揮した。
なかでも伝説となっているのが、1965年のモンテカルロ・ラリーにおいて、ポルシェとオイゲン・ベーリンガー/ロルフ・ヴュッターリッヒ組に総合2位入賞をもたらしたことだろう。ちなみに前述したヒーターは、氷点下を大きく下回ることも多いラリーのスノーステージにおける厳寒対策としても、大いに役立ったといわれている。
結局、904は1964から1965年の2シーズンにわたって大活躍することになり、当初の予定から20台増産された120台が製作された。そして1966年シーズンに向けて、新たに50台の生産でホモロゲートできるFIAグループ6カテゴリーに照準を当てた後継車「カレラ6」こと906が製作されることになる。
ポルシェ906では、ミッドシップやFRP製ボディなどは904から踏襲されたが、新たにポルシェ技術陣のリーダーとなった、若き日のフェルディナント・ピエヒ博士の意向によって、再び鋼管スペースフレームに戻されることになった。
エンジニアとして純粋主義的だったピエヒ博士は、904のオールマイティな一方、どっちつかずとも取れるキャラクターに懸念を示していたという。
しかし、906以降に開発された本格的レーシングスポーツについても、904で実証された人間工学に基づいた設計は大いに反映され、その後のスポーツカー耐久レースにおける強さを決定的なものとしたのも事実である。モータースポーツ史に輝く傑作である904は、その点についても偉大な一台と言えるだろう。
快適性・実用性を重視しつつも、クラスの常識を超えた高性能をまとった904。現代ポルシェが「GTS」の名跡を復活させた要因には、904から構築された哲学がいまなお受け継がれていることの証でもある。
※ ※ ※
●Porsche Carrera GTS
ポルシェ・カレラGTS
・生産年:1964年
・全長×全幅×全高:4090×1540×1065mm
・ホイールベース:2300mm
・エンジン:水平対向型4気筒DOHC
・総排気量:1966cc
・最高出力:180ps/7200rpm
・最大トルク:20.5kgm/5000rpm
・トランスミッション:5速MT
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みんなのコメント
6気筒や8気筒まで積んだ904は当時クラス最強でした。世界に現存2台と言われる8気筒の904を鈴鹿サウンドオブエンジンで見た時は感動したなぁ。