F1イタリアGPは、フェラーリのシャルル・ルクレールが1ストップでレースを走り切り、2ストップを選んだマクラーレン勢を抑え込んで優勝。マクラーレン勢はチームメイト同士の戦いに集中する中、まさかまさかの逃走劇であった。
ピレリのモータースポーツ・ディレクターであるマリオ・イゾラは、レース中に路面が改善し、グレイニング(ささくれ摩耗)が減少したことで、ルクレールは1ストップで走り切れたのではないかと考えている。
【リザルト】ルクレール華麗な1ストップで勝利を掴む:F1イタリアGP決勝結果
当初イタリアGPの決勝レースは、各車が1ストップを目指すことになるのではないかと思われた。しかしスタート時の路面温度は54度と異常に高く、レースが始まると各車のタイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きいように見え、早々にピットストップするマシンも見られた。この時点で、多くの人たちが「2ストップが主流になった」と思い込んだ。
マクラーレンのオスカー・ピアストリも、そのセオリー通り2ストップを選び、先頭を走っていた38周目の時点で2回目のピットストップを行なった。
これで首位に立ったのはフェラーリのルクレール。しかもペースが落ちず、2回目のピットストップを行なう気配がない。その当時のマクラーレンは、チームメイト同士のバトルに集中していたきらいがあったが、ルクレールのペースが落ちてこないことに慌ててペースアップ。しかし結局は届かず、ルクレールに勝利を献上する形になった。
「今回のハードタイヤはC3タイヤであり、今年初めて使われたわけではない。チームはこのコンパウンドのことをよく知っているはずだ」
そう語るのは、ピレリのイゾラ氏だ。F1では5種類(C1~C5)のコンパウンドが用意されており、その中から3種類が各グランプリごとに割り当てられ、硬い方からハード、ソフト、ミディアムとされる。今回のハードタイヤはC3であり、全5種類のうち中間のコンパウンド。そのためグランプリによってはソフトやミディアムとして使われるため、登場したのは今年初めてではないどころか、ここまで全てのレースに登場している、最もデータ豊富なタイヤとも言える。
「我々が話していたのは、コースが改善したということだ。特に第1スティントから第2スティントにかけて、コースはかなり良くなった」
「第1スティント後にタイヤをチェックすると、『ミディアムとハードの両方にまだグレイニングが残っている』というフィードバックがあった。金曜日には両方のフロントタイヤにグレイニングがあったが、第1スティントでは左フロントだけだったんだ」
「第2スティントの後、2ストップを選択したドライバーのグレイニングははるかに小さく、これはコースが改善していた兆候だった。それから雲がかかり、気温が変化したことも原因かもしれないし、路面にラバーがついた(タイヤのゴムが付着した)ことも原因だったかもしれない」
「このコースは、60日前に再舗装が行なわれたばかりで、それ以降はレースは行なわれていない。だから路面は大きく変わったんだ」
■グレイニングの発生を低減する方法
グレイニングは、発生しても消えてしまう可能性があるとイゾラ氏は言う。しかしそれでも、パフォーマンスが改善することは稀なのだ。
「グレイニングは、発生しても通常の摩耗と共に消えていくものだ。ただそれは同時に、タイヤが熱くなっていることを意味する。つまりグレイニングが綺麗になっても、パフォーマンスが回復しないか、ほんの少しだけ回復するかのどちらかなんだ」
そうイゾラ氏は説明する。
「モンツァでも、過去の他のレースと同様に、パフォーマンスに影響するようなグレイニングがあった。特に左フロントタイヤのグレイニングは、アンダーステアの原因になった。このグレイニングが綺麗になるとグリップが回復したが、それほどパフォーマンスは上がらなかった。その時点でトップチーム、特にレッドブルが2ストップを選んだのは明らかだった。ハード→ハードと繋いだからね。フリー走行で誰もハードを使っていなかったから、それは保守的な選択だったんだ」
そんな中で1ストップでレースを走り切ったルクレールは、他とは何か違うことをしていたのか? そう尋ねると、イゾラ氏は次のように語った。
「レース中にチェックしていたが、適切な分析を行なう時間はなかった。しかし金曜日のロングランで何が起きたのかを見てみると、タイヤを穏やかに使い始めたドライバーのデグラデーションが、はるかに低くなっていたんだ。一方で、1周目からプッシュしたドライバーのデグラデーションは大きい」
「レース中にそういうコントロールをするのは難しい。なぜならコース上でポジションを守るためには、あまり減速できないからだ」
「グレイニングが始まるのを避けるためには、フロントもしくはリヤに過度なストレスがかからないよう、注意すればいい。ただハードコンパウンドを履いた最初の数周はうまく機能していたため、最後までタイヤが持ちこたえたのだと思う」
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そうでしたっけ?