この記事をまとめると
■ルノーが媒体対抗のエコラン大会を実施
EVもいいけどHVを忘れちゃいかん! 2022-2023COTY10ベストのハイブリッド車4台の進化っぷりがヤバい
■車両はルーテシア E-TECH フルハイブリッド
■優勝するとフランス取材に招待される
呼ばれたのは総走行距離800kmオーバーの過酷なエコラン大会
「本場フランス取材だと!」。メールを見て思わず声に出す、不肖編集長の私、石田。
まわりの編集部員達はキョトンとした表情だ。その後の編集会議で詳細を話すと全員が色めき立った。このメール、ルノージャポンから届いたもので、なんでも媒体対抗のエコラン大会で優勝すると、ルノーの本拠地であるフランスの取材に招待してくれるというのだ! これは当然参加せねばならない。
だが、その大会の詳細をみて、思わず唸ってしまった。これはしんどい! しかも勝つとかムリなんじゃないか?
・車両はルーテシアE-TECH フルハイブリッド ・無給油で目的地を目指す ・出発場所はルノージャポン本社の隣にある日産本社 ・愛媛県の松山市にある「重要文化財 萬翠荘」がゴール ・ルートは自由 ・途中の宿泊等も自由 ・燃費は燃費計によって計測 ・燃費が一番良かったチームが優勝 ・燃費が同数値だった場合は所要時間が短いチームが優勝
これが詳細のルールなのだ。じつは私、かつて国産メーカーが「燃費」を一番のウリにしていたころ、雑誌のCARトップに所属しており、毎月のようにエコランに明け暮れた過去がある。そう、3代目プリウスや2代目インサイトが登場したり、アルト エコ(名前がもう時代を表している!)、ミライースなどが続々とリリースされたころだ。燃費をメインに据えた記事は人気があり、編集部内でも、そしてジャーナリストとも競って腕を磨いた……と思っている。
この時代、自動車メーカーもメディア向けにエコラン大会を多数開催し、その甲斐あってか私は何度も優勝を果たすことができた。というわけで、エコランには少々自信……はないのだが、エコラン奉行的な小うるささはある、って文字にすると、単なる面倒くさいヤツな気もしてきた。
さて、話を元に戻すと、そんなエコラン奉行の私から見ると、このルールはかなり厳しい。何しろグーグルマップで調べた走行距離は800kmにも達する。ほぼすべてを高速で走行するとはいえ、休憩などを挟めば10時間以上はゆうにかかるだろう。その間、普通の走行の何倍も右足と周囲の流れに神経を使うエコランをし続けなければならないのだ。かねてから「エコランってのはなぁ」と編集部で吹聴してしまっていたので(後悔)、編集部員はもう「石田さん、いっちょやっちゃってくださいよ!」「期待してますよ! フランスへGOですね」「圧勝してほかのチームをドン引きさせちゃったりして」と、たまたま幼なじみに大谷翔平がいてお盆の帰省時期にチームに加わってくれた草野球チームのごとくのノーテンキな会話で盛り上がっている。
「あ、ところでね、1台伴走車が可能なので、カメラマンの宮本と先導しつつ、道路情報などを無線で連絡してもらいたいんだよね。なので誰か1名……」。
「……」「……」「……」。
急に黙り込む面々。しばしの沈黙ののち、だが目の前にいるのが編集長であることを次第に思い出した彼らは、「……今日中に決めてご報告いたします」と、フレンドリーな編集部にあって突然の堅苦しい敬語で話すのだった。
「あ、じゃあよろしくね!」、と言い残し会議室を出て行く私の背から、「ジャンケンで負けたやつが……」というセリフがうっすら聞こえてきたのは言うまでもない。
30分後、私のデスクの前にややうつむき加減で立ったのはひかぴ(乾)とカメラマンのけんけん(宮本)だった。
「私が同行します!」と元気に言ってのけるひかぴ。まるで率先して志願したような雰囲気を出してくれるだけでありがたい! だがきっと、壮絶なるジャンケンバトルに負けたのだろう、スマンな、ひかぴ!
「フランス、行け……るんですよね?」と、ホンキっぽい表情のひかぴ。
「いやそれはムリでシルブプレ」と心のなかで呟くのが精一杯だった。
そして迎えた本番。せっかくなので伴走車にはガソリン仕様のルーテシアを用意。伴走車は2人乗車などの条件は異なるが、それでもE-TECHとガソリン車でどのぐらい燃費が異なるのか、楽しみだ。早朝の5時にクルマを受け取ると、ナビに従ってスタート! 首都高に乗るまでのわずかな区間だが、市街地はアクセル操作に気を付けると、メーターにEVマークが点灯してモーターのみで走行できる。もちろんドライブモードはエコ、そしてエアコンはオフ、メーター照度も一番暗くしてモニター画面も消しての走行だ。
高速に入ると伴走車の助手席に乗るカメラマンのけんけんから無線で交通情報が入る。「渋滞はないですね!」、早朝出発にしたかいがあった! 基本一番左車線を流れに乗って、80~90km/hで走行する。ルーテシアの場合、平均燃費と瞬間燃費が一緒に表示できるため、メーターは常にその表示にしておき、瞬間燃費の数値を気にしながら走り方を考える。
エコランというと、できるだけゆっくり走ればいいと考える人もいるけど、色々な意味でそれは違う。高速道路は基本最低速度が60km/hと決められているから、それを下まわらないのは当然として、流れがいい場合は80km/h程度をキープしないとまわりの迷惑にもなる。俗にいわれる「エゴラン」になってはダメ。このあたりは荷物を積んでいるであろう大型トラックにうまく混ざって走れば、概ね80km/h前後がキープできる。
加えて、遅く走れば燃費にいいというものでもない。80km/h付近を基本に、下り坂はジワジワと加速して、その後の上りは勢いを利用しつつ少しずつ速度を80km/hあたりまで落としていくなど、道路状況に応じて速度を調整して走る。と、これがこれまでのエコランで培った基本。
ところが、ルーテシアE-TECHは12通りとも言われる変速パターンを持った、オリジナルのトランスミッションを積んでいて、かつマニュアル変速ができない。「あ、どう考えても低いギヤだな」と思うシーンで、エンジン回転が高まって瞬間燃費計の数字が跳ね上がっても(ルーテシアの表示単位は、L/100kmなので数字が少ないほど燃費がいい)、アクセルの踏み方で変速を促すしかないのだ。さらに、基本走りっぱなしの高速で、いかにしてバッテリーに充電して必要なところでEVモードに入れるかが重要な様子。
そんなこんなで200kmあたりまでは走り方を工夫しながら走行。その後はなんとかE-TECHと仲良くなれたようで、燃費よく走るコツがわかってきた。
暑い! そして雨! エコランは忍耐勝負になってきた
エコランの基本は走り続けること。エンジンを積んだクルマは発進時に多く燃料を使うと言われる。だけれども、E-TECHはシッカリとEVモードをもつので、あまり燃費に影響せずに停止、発進ができるのがいいところだ。だから今回も気にせずバンバンとSA・PAに寄ることができた。
それはそうと、伴走車から、最初の1時間は無線がバンバン入り、「石田さん、いま燃費どのぐらいですか?」「この先も流れは順調です!」「疲れたらすぐ言ってください」なんてねぎらいも含めて盛り上がっていたのに、気がつけば無線はウンともスンとも言わない。もちろん無線が壊れたわけでもバッテリーがなくなったわけでもない。コチラの相手をするのに飽きちゃったのだ。向こうは2乗、こちらは延々孤独の旅。なんとなく予想はしていたものの、あぁ、ツライ……。それでもSA・PAに入れば、「お疲れ様です!」と笑顔を見せてくれるひかぴとけんけん。それだけでも癒されるというもの。
そして大好きなコーヒーを飲み過ぎ、お腹もたっぷんたっぷんでもはや何も要らない=運転以外やることがなくなった4~500kmあたりで次の辛さがやってきた。天気に恵まれたこの日、外気温計はなんと20℃を超えて22℃まで上がったのだが……暑い! 燃費のためにエアコンを消した車内は猛烈に暑い! だが早朝出発時は寒かったのでヒートテック、しかもエクストラウォームを上下に着込んだ私、3月なのに汗だくになってしまった。季節柄、エアコンを入れなくても窓を開ければ至極快適なのだが、窓を開ければ僅かとはいえ空力が悪化して燃費に響く。ちょっとだけ開ければ? などと思うかもしれないが、じつは私は重度の花粉症。この季節、もはや外はナウシカの腐海にしか見えないのだ。とりあえずSAのトイレでヒートテックを脱いで、汗をふきふきひたすら走った。
そんなこんなで夕方にやっと四国へ到達! だが、日本ってこんなに広かったっけ? と思うほど、四国も長い。さらに普段の行いが悪かったのか、それともひかぴが雨女なのか、けんけんが雨男なのか、予報は曇りだったのに雨がパラついてくるという悲劇! 濡れた路面は燃費が落ちるし、ワイパーを作動させることだって燃費にはマイナスだ。だが安全には代えられない。できる限りのテクを使いながら、松山で高速を降りた。
そして最後はEVボタンをオン! これは速度やバッテリー残量などの条件が整っていれば、基本モーターのみで走れるモードだ。市街地はほぼEVのみで走り、目的地へと到着した。休憩やら撮影やらも含めて、なんと出発から15時間! もうひかぴもけんけんも私も、達成感から落涙寸前だ。3人の共通意見としては、長距離移動が当たり前のフランス車だけあって、ルーテシアのシートがよくて助かった、というもの。クルマを降りて屈伸こそしたくなるものの、腰をトントンするようなシーンはなかった。
さて、結果だが、これは後日表彰式があるので、そこで発表となるので、まだわからない。自車の燃費数値もそのときに改めてお伝えしたいと思う(記事に追記&Facebook/Twitterで発表いたします)。
一方、伴走車のガソリンエンジンのルーテシアだが、エアコンは普通に使い、常に2人乗車。さらにオーディオもスマホの充電も普通に行った上に、ペースこそE-TECH車と同等だけれど、エコランを意識せずに走って、なんと3.6L/100kmを記録! 日本式の燃費に直せば、27.8km/Lという数字だ。ガソリンのルーテシアのWLTCモード燃費は17.0km/L(高速道路モードは19.8km/L)となっているので、高速道路モードで計算してもモード燃費に対して140%の達成率となる! これには正直驚かされた。42リッタータンクだが、もちろん無給油で走りきることができた。
久しぶりのエコラン、いい体験になった! エコランは周囲の流れにも常に気を配るので安全運転にも繋がるし、読者の皆様もぜひ挑戦してみては? あ、伝えるの忘れてた、ひかぴ、けんけん、スマン! 帰りもルーテシアで自走だった……。
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