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どんな高級車より目立っていた、あの頃の「スマート」!

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どんな高級車より目立っていた、あの頃の「スマート」!

2代目スマートが好きだった!!


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第188回

価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?


僕はスマート(SMART)が好き。1998年に最初の「シティクーペ(後のフォーツークーペ)が出た時からのファンだ。

スイスの時計メーカー「スウォッチ」とダイムラー・ベンツ(当時)が、「共同でシティカーを作る」と聞いた時はワクワクした。

スウォッチは、特徴あるデザインと安い価格で1980年台半ば頃から急成長を遂げた。ファッション性の高さによって、幅広い世代/人たちを虜にした。

いつもは高価な時計を付けているような人たちでさえ、一時期、熱烈なスウォッチファンになった人は多い。

ダイムラー・ベンツの関係者たちはもちろん、ライバルメーカーの人たちにまで、スウォッチ人気は拡大していった。

とくに欧州メーカートップの腕にスウォッチを見るのは珍しくなかった。

スウォッチ人気は、ブームというか、ある種の社会現象のような勢いで拡がっていった。

スウォッチの爆発的成功で、安価でファッション性のある時計を送り出すメーカーが次々に誕生。


「時計は一生もの」という堅苦しさから抜け出し、その時々の装いに合わせていくつも所有する、、、スウォッチは、今につながる、新たな時計の世界の創造者になった。

そんなスウォッチとダイムラー・ベンツ(当時)が組むとなると、当然期待は膨らむ。

ところが、スウォッチが求めた、「ファッション性は追っても、多くを削ぎ落とした安価なクルマ」の実現は困難だった。

結局、スウォッチは計画から離れ、ダイムラー・ベンツが単独で計画を進めることに。

そして、1998年、、全長が2.5m、全幅が1.51m、全高が1.52mという超コンパクトな2人乗りモデルが欧州で発売された。

初代モデルは、1998年から2007年まで生産されたが、最初のラインナップは2人乗りの「フォーツー」のみ。

2004年から4人乗りの「フォーフォー」が加わったが、この稿では「フォーツー」のみをピックアップし、「スマート=フォーツー」として話をさせていただく。

それに、僕個人のイメージとしても「スマート=フォーツー」であり、フォーツー以外のイメージはあまり浮かんでこない。それも「2代目フォーツー」が中心になる。

多くの物語を僕に語りかけ、楽しい想像力を掻き立て、夢想を膨らませてくれたのは2代目フォーツーであり、これから書くあれこれも、そこに焦点を当てたものになる。

2代目は2007年にデビューしたが、初代の欠点 / 弱点を見事にカバーしていた。初代はセンセーショナルではあったが、物理的にも感覚的にも「我慢を強いられる」ところが目立った。


キャビン空間にしても、走り味にしても、乗り味にしても、、、日々を共に過ごすことに喜びや楽しさを感じるのは難しかった。

しかし、2代目は、すべての面で「ひとまわり大きくなり、大人になり、磨きがかかった」。品質感も大幅に上がった。

ユニークながら我慢を強いられる初代から、2代目は、日々を楽しめて、周りに自慢もできるクルマへと、大きく進化したのだ。

全長が190mm、全幅が50mm、全高が40mm、ホイールベースが60mm、、サイズはひと回り大きくなったが、それでもスーパーコンパクトであることに変わりはなかった。

初代が求めた「我慢」から解き放たれた2代目スマートは、市場から大きな拍手で迎えられた。

短時間の間に、ミラノ、ローマ、パリ、ロンドン、、、欧州の大都市で、スマートは急速に繁殖していった。道路事情のいいドイツの街でも、、。

当時、上記のような欧州の都市には、公私ともによく行っていた。なので、2代目スマートの繁殖ぶりをダイレクトに目にすることができた。

スマートは小さいが非常に目立つ。極端な言い方をすれば、RRよりも、メルセデス Sクラスよりも、ポルシェ911よりも目立つ。

例えば、モナコのカジノ前広場は、RRも、フェラーリも、ポルシェも、アストンマーチンも、、日常の光景のひとコマであり、とくに目立つことはない。、、が、そこに、艶やかな装いを纏ったスマート・カブリオレが入ってくると、、俄然目立つ。

スマートが似合う街を挙げるとすれば、ミラノ、ローマ、パリがベストスリーだろう。

いずれの街も、駐車事情が極めて厳しいことは共通しており、それがスマート人気と結びついていることは間違いない。経済面でのメリットももちろんあるだろう。

でも、ミラノでは、ハイエンドモデルが多く見られた。例えば、チョコレートとシルバーの2トーンカラーに上等なアルミホイール、内装は革仕立てのカブリオレ、、といったところだ。

これは、経済面よりも、ファッション面やインテリジェンス面でのアピール、、つまり、カッコよさに照準を当てての選択と言っていい。そして、そんな人たちの家のガレージには、きっともう1台、プレミアムなクルマが駐っているはずだ。

ミラノほどではないが、パリも上級モデルの比率は高かった。例えば、モンテーニュ通りやサントノーレ通りといった高級ブランド店が軒を連ねる通りでは、とくに上級モデルに多く出会った。

ところがローマでは、ファッション嗜好よりも実用嗜好をより強く感じた。上級モデルよりも標準的モデルが多く見られ、さらには「乗りっぱなし状態のまま」が多かった。

古代から受け継いだ都市遺産を大切にするローマは、道路事情も駐車事情も、世界でもっとも厳しい街として知られる。

なので、より多くの人たちが「実利」を求めてスマートに乗っていたのだろう。そう考えれば、スマートの、ミラノとローマでの佇まいの違いは納得できる。

スマートは巨大なクルマが道路を埋め尽くすアメリカでも人気があった。ディーラーは、いくつかの大都市にしかなかったと記憶しているが、LAのディーラーを訪ねたことがある。

裕福な人たちが住むビバリーヒルズエリアのディーラーだった。

アメリカでのベース価格は1.4万ドルくらいだったが、訪ねたディーラーの話によると、「ほとんどのお客様はフルオプションを注文する」とのこと。軽く2万ドル超えになる。

4万ドルもする限定特注モデルもあったが、「すぐに売れてしまった」そうだ。

「アメリカではスマートは売れない」と、僕は予想していたが、見事に外れた。訪ねたディーラーの担当者は、「大いに儲けさせてもらっています」とホクホク顔だった。

でも、アメリカでスマートが愛された理由は実用価値ではない。スマートに乗ることは、時代にミートした「ファッショナブルでクールなこと!」と受け止められたからだ。

それは、「高価なモデルから売れていく」とのディーラーの証言が裏付けている。

僕がいちばん惹かれたのは、2012年から販売されたEV仕様の「フォーツーed」。

航続距離は135kmで、走りもまずまず。だが、乗り心地の粗さは気になった。

とても気に入ったのは、白と明るい若草色のボディカラー。加えて、ボディサイドに貼られた「electric drive」(同じ若草色)のデカール(OP ?)にもビビッときた。

表参道や銀座を走っていても多くの視線が集まった。「ほんとうにクールだ!!」と思った。もう少し出足加速が良くて、乗り心地が優しければ、、買っていたかもしれない。

3代目SMARTのEVモデル(EQと呼ばれる)にはまだ乗っていない。でも、白と若草色のカブリオレもあるようだし、走りも快適性も上がっているようだし、、気になっている。


● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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開催日:7月21日(木)~7/31(日)月曜休館
時間:10~18時(最終日は14時まで)
入場無料
住所:目黒区美術館区民ギャラリー
※市ヶ谷山脇ギャラリーではありません

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みんなのコメント

7件
  • 初代スマートから三代目スマートに乗り換えました。
    走り、居住性、快適性の全てが大幅に進化しています。
    ただ、初代の様な驚きはなく、良くも悪くも「車になった」という感じです。
    次のスマートには、初代の様な驚きと新鮮さを期待します。
  • 初代の初代598ccの1990年製Limited/1の並行輸入、ドイツ国内でブラバス化されたものに乗ってましたが高速で余裕で追い越し車線を巡航できることに驚いた、ブローオフバルブにオイルクーラーまでついていてメーターは250km仕様だった。日本の軽規格以下の排気量で動力性能、コーナーリング性能の高さは特筆ものだった。ビルシュタインの車高調が入って事にもビックリだった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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