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猪突猛進型ル・マンウイナーと48歳の苦労人。富士後は日本の田舎へ【WEC俺の相方“キャラ”紹介(3)キャデラック編】

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猪突猛進型ル・マンウイナーと48歳の苦労人。富士後は日本の田舎へ【WEC俺の相方“キャラ”紹介(3)キャデラック編】

 9月8~10日に迫ってきたWEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レース。今年は多くのハイパーカー&LMDhマニュファクチャラーが日本初上陸ということで、このコーナーでは各メーカーを代表するドライバーたちに、自分のチームメイトを紹介してもらおう。第3回は、キャデラック・レーシング編だ。

 キャデラックはWECだけでなくIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権にも新型LMDh車両『キャデラックVシリーズ.R』を送り込んでいる。WEC第4戦ル・マン24時間には3台体制でエントリーしたが、富士への来日はWECにフル参戦する2号車の1台のみ。カスタマー車両合わせ4台が来日するポルシェとは対照的だが、2号車のクルーはル・マンで3位表彰台を獲得しており、富士でも孤軍奮闘してくれることだろう。クルマの信頼性は高く、タイヤにも優しい性格のようだ。

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■ニックネームは“雄牛”

 さて、チームメイト紹介を担当してくれたのは、ちょっとクールな感じのアレックス・リンだ。

 ちなみにリン自身は、イギリス出身の29歳。このチームの中では最年少のドライバーだ。11歳からレーシングカートを始めたリンは、2013年のF3マカオGPウイナーだ。この年、マカオは60回記念大会。また、リンはこの時、セオドール・レーシング・バイ・プレマのマシンを駆った。セオドールにとっては、1992年以来のマカオ出場。さらには、1983年に彼らがアイルトン・セナとともにマカオを制して以来30年ぶりの優勝ということで、リンの優勝は世界的にも話題となった。

 さらに、リンは2014年にGP3でチャンピオンタイトルを獲得しているが、この年からはF1のウィリアムズ・マルティニ・レーシングで開発ドライバーも務めた。2015年から2年間はGP2に参戦。その2年目となるシーズンには、マノーからLMP2クラスでWECにスポット参戦という形でデビューしたが、彼にとって最初のWECレースは何と富士だった。その後、リンはフォーミュラEにフル参戦し、5シーズンを戦う。と同時に、IMSAやWECで活動。2018-2019シーズンには、アストンマーティンのファクトリードライバーとなった。昨年は、ユナイテッド・オートスポーツUSAからほぼフル参戦し、今年はキャデラックからWECに出場している。

 そんな彼のチームメイト、ひとり目はアール・バンバーだ。バンバーはニュージーランド出身の33歳。ブレンドン・ハートレーとは幼馴染で、バンバー家の広い農場でバギーを乗り回して遊んだり、一緒にカートをしたりという間柄だった。

 その後、ニュージーランドのフォーミュラ・フォードでシングルシーターのキャリアをスタートさせ、アジアン・フォーミュラBMW、オーストラリアF3などアジアやオセアニア中心の活動を経て、ヨーロッパに活動の場を広げると、2013年にスポーツカー転向してポルシェのワンメイクレースに出場を開始すると、2015年にはポルシェ919ハイブリッドのドライバーに抜擢。そしてその年のル・マンでいきなり総合優勝という快挙を達成する。2017年には、2度目のル・マン制覇を遂げている。

 2021年、IMSAでキャデラック陣営入りして、スポット参戦。昨年はフル参戦を果たした。そして、今年は、WECでもキャデラックを走らせている。富士のWECに出場するのは、6年ぶりとなる。

 そんなバンバーはどんな人物なのか。リンに聞いてみた。

「アールは、もちろん素晴らしいドライバーだ。それに彼の性格を表しているのは、OX(オックス=雄牛)っていう彼のニックネームなんだ。その由来は、クルマに乗ったら、決してストップしないから(笑)。彼が、常にプッシュしていて、常に速く走るからなんだ。とてもいいドライバーで、決して諦めないんだよね」

 日本語でいうと“猪突猛進型”といったところだろうか。クルマを降りている時のバンバーはとても物静かな雰囲気だが、ひとたびステアリングを握るとアツい、ということなのだろう。

■48歳の“大先輩”は「とてもシリアス」

 さて、もうひとりのチームメイトはリチャード・ウエストブルック。彼はイギリス出身の48歳、生年月日は、最近GT500引退を発表した立川祐路と5日違いだ。

 ウエストブルックはドイツF3時代、ニック・ハイドフェルドやヤルノ・トゥルーリと戦いを繰り広げていたが、参戦資金が尽きたことで1997年から数年間は一切レース活動ができなかったという苦労人だ。その後友人から資金を借りてポルシェのカップカーを入手し、なんとかキャリアを再開。2011年から2015年はコルベット、2016年はフォードのファクトリードライバーを務めるまでになった。

 WECには2019/2020シーズンのル・マンとバーレーンにアストンマーティンからスポット参戦。2021、2022年はグリッケンハウスをドライブしていた。そして、今年はキャデラック陣営へ。WEC富士で走るのは今回が初めてとなる。

 この“大先輩”ドライバーはリンから見て、どんな存在なのだろう。

「ウエスティン(ウエストブルックの愛称)もOXと同様に、とても速いドライバーだ。彼はとても経験豊富で、僕らのチームキャプテンなんだ」

「クルマに乗っていない時、 OXはとてもリラックスしている。一方、ウェスティンはとてもシリアス(真面目)だ。まったく正反対だから、僕からみていると、両方ともとても面白いよ」

 それぞれのキャラクターは異なるものの、サーキットの外では3人で楽しく過ごしているとリンは語る。

「僕らはパドルテニスが好きで、サーキットの外では一緒にプレイしたりする。サイクリングやランニングもするね。食べ物はみんなイタリアンが好きで、和食も好き。僕は個人的に、より和食が好きかもしれない。チームとして、僕らは多くの時間を一緒に過ごしているよ。一緒にいて、とても強いチームだと感じている」

「僕らは全員、モータースポーツの大ファンなんだよね。だから、サーキットの外でも、ほとんどレースの話をしている。モータースポーツの歴史やそれにかける情熱が大好きだからね。だから、あまりレース以外の話はしないんだ」

 どうやら2号車キャデラックの3人は、“レースホリック”なトリオらしい。その点、ポルシェのフレデリック・マコウィッキ組とはかなり違うようだ。

 なお、リンは富士のレースの1週間後、誕生日を迎えるとのこと。そこで、富士の後には休暇を取って、ガールフレンドと一緒に東京以外の日本の田舎をいろいろと見て回る計画なのだという。馬籠宿や妻籠宿、白川郷など、古き良き日本を堪能していってほしいものである。

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