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いかにも「カッコイイ」クーペ風SUVは日本で成功しない? 海外とは異なる日本の特殊な市場とは

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いかにも「カッコイイ」クーペ風SUVは日本で成功しない? 海外とは異なる日本の特殊な市場とは

 この記事をまとめると

■日本ではクーペSUVモデルが海外に比べて人気を得ていない

目の付け所はいいのに時代がついてこなかった! 登場が早すぎて消えたSUV5選

■過去に日本で販売していたクーペSUVモデルを振り返りつつ世界での人気ぶりを解説

■日本の独特な社会環境が影響していると筆者は考察している

 ホンダWR-Vにかかる期待

 販売現場で話を聞くと、ホンダWR-V(正確にはインドでのエレベイト)の国内導入の背景については、「ヴェゼルが個性的なクーペSUVスタイルを採用しているため、それを敬遠されるお客様もいるので」との話を聞いた。ヴェゼル比でWR-Vの全高が70mmも高い。一方でヴェゼルは低めのルーフデザインを採用し、リヤドアのドアハンドルはドアサッシュ内に装着することで、「2ドアクーペ風」のデザインを強調しているようにも見える。

 街なかを走っているヴェゼルを見ていると、ディーラーオプション扱いとなっている、クロームメッキタイプなどのフロントグリルを装着しているのをよく見かける。これも販売現場で聞くと、現行ヴェゼルデビュー以来の人気装着オプションになっているとのこと。「グリルレス」とまではいかないまでも、極力グリルの存在感を抑えたオリジナルデザインを購入時に「唯一レベルの気になる点」としているお客の「駆け込み寺」的な装備となっているようである。

 一方でそもそも海外のWR-Vシリーズ(エレベイト含む)は、新興国向けモデルという側面もあり、押しの強さを強調するためにフロントグリルの存在感が強い。そもそも日本の消費者におけるクルマに対する趣向性はどちらかというと、アジアの一国ということもあり、東南アジアや中国などのアジア新興国地域とトレンドが近いものがあると筆者は感じている。その点ではヴェゼルよりWR-Vのほうが顔つきでは日本においてウケがよりよいものになっているともいえよう。

 欧米では受け入れられにくいキャラクターともいえる、トヨタ・アルファード&ヴェルファイアが日本でも大ヒットし、そしてアジア各国でも大ヒットしているのも一例といえるだろう。

 トヨタは2016年にクーペSUVスタイルを採用した「C-HR」の初代モデルをデビューさせている。当時のトヨタはSUVラインアップが少なめとなっており、そのなかでもコンパクトサイズのクロスオーバーSUVを待望する声のなかデビューしたこともあり、デビュー当初は大ヒットしたのだが、その後販売台数が伸び悩みを見せるようになり、2023年7月に生産終了となっている。そして世界市場では2023年6月に2代目がデビューしたのだが、いま現在国内ではラインアップされていない。

 日本で待ち望んで初代C-HRを購入したユーザーのなかには、後席居住性やリヤラゲッジルームの使い勝手に不満(狭い)を覚えるひとが目立ったそうである。そして、C-HRデビューからしばらくして、現行RAV4がデビューするとそちらへ乗り換える人も目立っていたということである。

 成功している例もあるが……

 世界的にはクーペSUVはある程度の市民権を得ている。SUVがここまで世界的に人気となる前、諸外国では2ドアクーペがパーソナルユースを取り込んでいた。そしてSUVがブームとなるなか、クーペユーザーのSUVへの移行を狙う意味もあり「クーペSUV」という、腰高なSUVながら流麗なクーペのようなスタイルを持つモデルが多くラインアップされるようになっていた。そもそもクーペはアメリカでは「セクレタリー(秘書)カー」と呼ばれるように、古い言い方をすれば「キャリアウーマン」がコンパクトサイズを中心によくクーペに乗っていた。そして、そのニーズがコンパクト・クーペSUVへと移行していったと見ている。

 2010年、日産はコンパクトSUVとなる「ジューク」の初代モデルをデビューさせる。クーペSUVと単に表現できるだけではなく、圧倒的な個性を発揮しているそのスタイリングもあって、日本でも注目されたがそれ以上に海外では北米、欧州、新興国などでブームといえるほどの大ヒットを見せた。

 当時、すでにルノーがコンパクトSUVを販売していた中国では、「競合するのを避けるため」などともいわれたが、海外でのジュークの人気ぶりが中国の消費者の間でも話題となり、日産ブランドではなく、インフィニティブランド(インフィニティESQ)として市場投入されていた。ジュークもデビュー直後の盛り上がりに対し国内販売の失速傾向が目立っていた。C-HRと同じくジュークも2019年に2代目がワールドデビューしているのだが、日本国内にはラインアップされていない。

 日本市場では「ないよりはあったほうがいい」という消費者マインドというものを強く感じる。「普段は家族4人しか乗らないけれど、たまにお爺ちゃん、お祖母ちゃんとドライブに行くから」として3列シートを持つミニバンが日本ではよく売れているともいわれている。いまでこそ2WDモデルもよく売れているようだが、過去には「SUVなのだから4WDなのは当たり前」といった趣向性も目立っていた(アメリカではSUVスタイルであってもそのほとんどが2WDとなっている)。当然、後席もしっかり座ることもでき、荷物もできるだけ多く載せることができたほうがいいねとされることが多い。

 一方欧米では乗っているクルマを見て、その人の趣向性やステイタスを探るとされている。つまり乗っているクルマがそのユーザーの「人となり」を表すことにもなるので、いまだにSUV偏重とはいうものの、日本よりラインアップされるモデルのバリエーションは幅広いものとなっているようにも見える。「よりなんでもできるほうがいい」という選択肢ではなく、自分の人生観や個性を表現できるクルマを求める購買行動のほうが目立つのである。

 クーペSUVでも日本で成功している例としては、トヨタ・ハリアーを挙げることができる。クーペSUVといってもオーソドックスなSUVとクーペSUVの中間的存在にも見えるので、「クーペSUV風」といってもいいので、極端にスタイルを優先し、その分実用性が犠牲にもなっていないのだが、「格好いいSUV」に映るのも人気のひとつと考えられる。もちろん乗ってみると、過去の「トヨタ・マークII」のような価格設定に対する質感などの満足感、つまりトヨタの真骨頂ともいえる「コスパ」の高さがあることも間違いないだろう。

 C-HRの2代目をみると、日本市場でラインアップしないことを前提としているのか、クーペSUVとしてさらにブラッシュアップされたと筆者は見ている。日本市場を意識するとどうしても「抑え」がきいてしまい、本来のクーペSUVとして思い切り作りこめないのかもしれない。

 その意味ではヴェゼルは逆に日本市場をより強く意識してしまったので、そこを「中途半端」と感じ、購入に踏み切れない人がいるのかもしれない。ただ日本市場でも人気モデルということには変わりない。しかし、ライバルともいえるトヨタ・カローラクロスの勢いに一歩及ばないような売れ行きに見えるだけの話ということは確認しておきたい。その意味では趣向性が日本と似ているタイのバンコク辺りで見ているとヴェゼル(現地名HR-V)はカローラ・クロスとともに大ヒットしている。

 世界市場でもクーペSUVがメインで売れているわけではない。ただ、とくに多様性のある欧米先進国では日本よりは選択される傾向が高いのは確か。過去には日本でも「他人と同じクルマには乗りたくない」という人も目立っていたが、いまでは「知り合いや近所の人と同じクルマに乗りたい」とする人も目立っているとのこと。日本でクーペSUVが受け入れられにくいというのは、独特な社会環境(つまりガラパゴス化)が影響しているのかもしれない。

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