■ウクライナも欲しがった? 厳ついバズこと「ブッシュマスター」ってなに?
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は、2022年3月31日オンラインでおこなわれたオーストラリア議会での演説で「ブッシュマスター」装甲車の供与を強く要望。
1両3000万円の装甲付きジープ!? 自衛隊の「軽装甲機動車」は他国から羨望の存在だった?
それを受けて、オーストラリアのモリソン首相は4月7日、同国製の装甲兵員輸送車「ブッシュマスター」20台をウクライナに送ると発表しました。
9日にはウクライナの隣国ポーランドに最初の4台が空輸されています。
このブッシュマスターは前面には大きなフロントガラス、側面にもガラス窓があり、いずれも防弾ガラスではありますが本格的な戦闘用装甲車というより「厳ついバス」といった印象の兵員輸送用の装甲車です。
車体構造は爆発物から車内の乗員を護る為ラダーフレームの上に装甲化されたモノコックボディを載せ、ボディは底部の形状をV字型にして地雷の爆風を逃がすような形になっています。
装甲は7.62mmまでの小銃弾や対人地雷程度に耐えられるレベルです。
このブッシュマスターはオーストラリアの他ほかにオランダやイギリスなど8か国で採用され、日本も「輸送防護車」の名称で輸入していますが数は8両と少なく、ほとんど見かける機会のないレア車両といえ、ウクライナに送られれば9か国目になります。
軍需業界ではメジャーとはいえないオーストラリア生まれの装甲車を日本が買い、ウクライナが欲しがったのにはそれぞれワケがあります。
日本がブッシュマスターを買ったワケとなる契機になったのが2013(平成25)年1月に発生したアルジェリア人質事件です。
この事件では人質となった各国から特殊部隊が派遣され、日本でもソマリア沖海賊の対策部隊としてジブチに派遣されている陸上自衛隊の部隊を派遣する案も出ましたが法的な問題から実現しませんでした。
当時の自衛隊法では在外邦人救出で自衛隊には航空機と船舶による輸送しか認められず、輸送機を空港に持って来て待機するしかなかったのです。
そこで自衛隊による在外邦人の陸上輸送もできるように2013(平成25)年11月に自衛隊法が改正されました。
同年度末には防衛省が「輸送防護車」の購入する補正予算を計上。そこで選定されたのが「ブッシュマスター」です。
それまで陸上自衛隊の装輪装甲車はすべて国産であり輸入車というのは異例でしたが、既存の国産装甲車にはない特徴も勘案されたといいます。
オーストラリア軍仕様では広大な国土での作戦を考慮して9名を載せて3日間燃料や物資補給無しで行動できる能力と居住性を持っていましたので、民間人を乗せて長距離移動するには適しているとされたのです。
オーストラリアは日本と同じ左側通行の右ハンドルで、車幅も2.48mに抑えられている為国内で運用し易いこと挙げられたほか、C-130やC-17といった輸送機で空輸することもできます。
また購入が検討されていた2013年という時期にも注目する必要があります。
オーストラリア海軍が新型潜水艦の選定をしている時期で、日本製潜水艦もその候補になっていたのです。
大型武器輸出商談として日本も力を入れており、オーストラリア製品を購入することで商談を有利に進めようという営業的な意図も働いていたといわれます。
結局この潜水艦商談はフランスメーカーが受注しますが、2021年9月になってフランスとの契約は破棄され、アメリカ・イギリスと改めて原子力潜水艦計画を進めると発表して外交問題ともなりますがこれは別の話です。
一方、今回のウクライナがブッシュマスターを欲しがったワケ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は世界各国に援助を直接呼びかけていますが、内容は相手国の事情や立場を考慮したかなり練ったものになっている印象です。
日本に対しては、兵器ではなく戦後の復興支援を要望する演説をおこなったのは記憶に新しい所です。
戦争放棄を謳う憲法を持ち、防衛装備品の輸出に高いハードルを設けており、兵器を要望しても即応できないことを踏まえた内容でした。
オーストラリアにはブッシュマスターを名指して要望しましたが、何が一番迅速で確実に受け取れるのかを検討したに違いありません。
ブッシュマスターは扱いやすい4輪装甲車で特別な操作訓練は不要、オーストラリアが自国で製造しておりすぐ納品可能で、空輸もできるということから即戦力化できると見込んだのです。
ブッシュマスターは日本では海外派遣や国内有事の際の緊急展開部隊である中央即応集団中央即応連隊に配備され、万一の邦人等救出作戦に備えていますが、ウクライナではどのように使われるのでしょうか。
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みんなのコメント
機動性や速度に優れ、道が狭くて河川も多い日本の地形にも最適。
ゴムタイヤでは走破性に難があるのでやっぱ無限軌道は捨てがたい。