最新『グランツーリスモ7』は雨の再現度も格段に進化
雨天時の運転はドライバーにとって非常に厄介だ。雨足が強くなると視界が悪くなり、タイヤが滑る「スリップ現象」や「ハイドロプレーニング現象」なども起きやすくなる。しかし、雨は突然降ってくることもあるため、いざという時の対処法を知っておくに越したことはない。それでは、雨天時の高速走行で気を付けるべきことは何だろうか。
運転中「ゲリラ豪雨」に遭遇したら? あなたの命を守る「17の回避行動」
2022年3月にソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されたPlayStation 5、PlayStation 4用ソフト『グランツーリスモ7』は、最新のリアルドライビングシミュレーターとして、じつはウエット路面の再現性が格段にリアルに進化したこともトピックのひとつ。実際に雨の高速道路にクルマを用意して試すことは危険であるが、同ゲーム内でFF、FR、四輪駆動車、MRと駆動方式別に、雨天時の高速走行を試してみた。
eモータースポーツのトッププレイヤーが検証してみた
ハイドロプレーニング現象とは走行中にタイヤと路面の間に水が入りこみ、アクセルやブレーキほか一切の操作が効かなくなってしまう現象のことである。とくに高速道路では速度域が高く、ハイドロプレーニング現象を起こしてしまうと大事故に繋がってしまうリスクは高くなる。
ではクルマの駆動形式によってスリップやハイドロプレーニング現象の起きやすさは変わるのかどうか。これをPlayStation 5版の『グランツーリスモ7』を使って検証していこう。
検証の際に用いたコースは、首都高速道路をモチーフにした東京エクスプレスウェイ・東ルートの外回り。タイヤは市販タイヤに近いコンフォートハードを使用し、なるべく現実的なシチュエーションとした。
クルマの駆動形式ごとに滑りやすさはどう違う?
まずFF車の場合。車両はトヨタ・アクアを使用した。馬力が低いこともあり、加速時にハイドロプレーニング現象が発生することはなかった。高速巡行時のステアリング操作もよほど乱暴に行わない限りはスピンに至ることはなく、FF車の長所である直進安定性が活きた結果だ。
次にFR車では、トヨタ86を使用した。加速時は2・3速であっても後輪が空転し、そのままスピンした。高速巡行は直進している分には問題ないが、急なステアリング操作をすれば途端にスピンしてしまう。急アクセル、急ハンドルといった急のつく操作は厳禁と言える。
四輪駆動車はスバルWRX STIで試してみた。このクルマは約300psとハイパワーながら、フルアクセルをしてもタイヤが空転することなく加速し、多少であれば急なステアリング操作をしても大きく姿勢を崩すことはなかった。
最後にMR車としてホンダS660で走ってみた。このクルマは64psと馬力が低いため、加速で後輪が空転することはなかった。しかし急なステアリング操作によって一度姿勢が崩れると、立て直すのが最も困難であった。
今回の検証はゲーム上のサーキットで行ったため、実際の高速道路のような轍(わだち)がなく、かつタイヤも摩耗していない状態での走行となったが、実際には轍による水たまりやタイヤの摩耗によって、さらにスリップやハイドロプレーニング現象は起きやすい状況となる。
©2022 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. Any depiction or recreation of real-world locations, entities, businesses, or organizations is not intended to be or imply any sponsorship or endorsement of this game by such party or parties. All rights reserved. “Gran Turismo” logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc.
スリップしたら下手なカウンターより「アクセルとブレーキの両踏み」
では、実際にスリップやハイドロプレーニング現象が起きた場合にどのような対処をすべきだろうか。
このような現象が起きるとハンドルが取られてしまい、焦りからカウンターを当てたくなってしまいがちだ。しかし、じつはカウンターを当てるというのは難易度が高い。なぜならカウンターを当てすぎた場合、タイヤのグリップが戻ったときに最初滑った方向と逆の方向に、さらに勢いよくクルマが振られることとなってしまうからだ。サーキット走行等を通じて「カウンターを当てる」という行為そのものに慣れていない限り、一般ドライバーには難しい対処方法だと言える。
そこで現実的な対処方法として、「アクセルとブレーキの両踏み」を推奨したい。右足でアクセルを、左足でブレーキを、両方ともに踏力半分程度で踏むことによって車体を安定させることができるテクニックで、日常的に行うとエンジンの駆動系に悪影響を及ぼすものではあるが、実際のレースで用いられていると同時に、今回の検証においても効果を発揮することを確認できた。
焦りがあるなかで咄嗟にこの操作をすることも決して簡単なことではないし、「左足ブレーキ」についても普段、安全な状況で慣れ親しんでおく必要があるテクニックではあるが、ぜひ念頭に置いてほしい。
もっとも、このような事態に陥らないことが一番大切であり、急アクセルや急ハンドルをしないこと、タイヤの溝をチェックし、必要があれば交換を検討することが不可欠である。
リアルワールドではタイムより安全が第一
また、スリップやハイドロプレーニング現象と直接的に関係するものではないが、雨天時に高速道路を走行していると、トンネル区間で加速して抜けた後に、雨風を警戒して速度が遅くなった前車に追いついてしまい、ブレーキをかけて減速するドライバーが散見される。交通量が多ければ玉突き事故にも繋がりかねないと同時に、雨天であればブレーキによるスリップも起こりうる大変危険な行為と言わざるを得ない。
少しでも早く目的地に着きたいという気持ちはわかるが、数kmのトンネル区間で少し加速して果たしてどれだけ早く着くのだろうか。事故のリスクが増すことを考えればあまりに割に合わないのではないかと思う。
* * *
大切な家族や友人のため、頑張るドライバーにとって雨は非常につらいものがある。もしもの時のため、そのもしもが起きないようにするために上記の内容が少しでも役に立つことを願うばかりである。
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みんなのコメント
水に乗ったら神に祈るしかないよ。
運が良ければスピンして助かる