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「ピーキー」な1.6Lツインカム フォード・エスコート Mk1 サファリラリー(2) タイトすぎたペダル

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「ピーキー」な1.6Lツインカム フォード・エスコート Mk1 サファリラリー(2) タイトすぎたペダル

ヘッドライト・ワイパーやシートも完全復元

フォード・エスコート Mk1 ツインカム・サファリラリーのレストアでは、細かな部品にも手を焼いた。その1つが、ワイバーブレードが半径ぶんのヘッドライト・ワイパーだ。

【画像】「18年」で完全復元! フォード・エスコート Mk1 サファリラリー 宿敵240Z MSTのレストモッドも 全118枚

フォードのワークスチームは、東アフリカ・サファリラリーへ挑んだ6台にだけ、この部品を採用した。それ以外はルーカス社製で、直径の長さのブレードが付いていた。

通常のレストアでは、ルーカス社のシステムで妥協するだろう。だが、オーナーのニール・ロビンソン氏は、オリジナルへ強くこだわった。クラシックカー・イベントで、同じワイパーが付いたクルマを探す日々が続いた。

ところが、たまたま目にしたボルボP1800の写真に、同じワイパーを発見。それは、スウェーデンにある同社の博物館が収蔵するプロトタイプで、それ以外のボルボに同じワイパーは装備されていないことも判明した。

スウェーデンを中心に捜索し、お隣のフィンランドに部品があるという情報を入手。「現物も見ないで、とりあえずお金を送りました。ボロボロでしたが、作り直すのに充分なカタチは残っていました」

つい数か月前にも、新たな部品を入手した。コ・ドライバー側のリクライニングシートなどだ。

ボディの復元を担当した、デイブ・ワトキンス氏が振り返る。「ハントマスター社製のシートです。写真では違って見えましたが、先日のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、スカンジナビア人のために作られた4脚の1つだと判明したんです」

ドロドロに溶けるエンジンルームの塗装

これを証言したのが、ハントマスター社を創業したテリー・ハンター氏。ラリードライバーのティモ・マキネン氏の古くからの知人で、かつてサイドボルスターを強化したらしい。その違いを図に描き、教えてもらった。

1970年代のシートもまた、入手は困難。そこでワトキンスは、図を頼りにシートを再現したという。

トランクリッドの固定クリップは、現在流通する部品とサイズやスプリングが違った。オリジナル部品を製造していた会社を探り当てるべく、グレートブリテン島中部のレディッチを訪れたロビンソンは、偶然にも当時の製造工場を発見した。

それが、現在はミドルトン・スプリングス社へ改称した、テリー・スプリングス社。ブラシをぶら下げるスプリングが流用されていた。「オリジナルの図面が全部残っていました。当時の機械で、再生産してもらえたんです」

「機械を操作した女性も、1971年の製造ラインにいた人物と同じかもしれません」。再生産の最小ロットは50個だったから、当分は入手に困らないだろう。

一方、あえて正確には再現しなかった部分もある。その1つが、エンジンルームの塗装。現状は、一般的なフォードのワークスマシンに準じて、ホワイトに塗られている。

「本来はシルバーに塗られていたんですが、完全には硬化しない塗料なんです。溶剤やガソリンが付くと、ドロドロに溶けたとか。なぜか1971年のサファリラリー・マシンだけ、その塗料が使われたようですね」

ペダルがタイトで普通の靴では運転できない

マグネシウム製のオイルパン・ガードも、本来は鉄板で保護されていたが、省かれている。「未塗装で簡単に傷が付き、すぐに錆びるんですよ」

車内を縦断していたオイルラインも違う。オリジナルでは金属とゴムを繋ぎ合わせた配管が、助手席のシートレール部分を通っていた。しかし、一体のゴム製ホースに置き換わっている。

「接合部が壊れたら、助手席の人へ深刻な怪我を与える可能性があります。内装とエンジンもダメになります。リスクを犯す必要はありません」

2021年までに、ツインカム・サファリラリーへ16年を費やしたロビンソンだったが、ロンドンのクラシック・モーターショーにはトレーラーで輸送した。「完全に運転を習得するまで、誰も助手席には乗せませんでした。正直、最初は怖かったです」

ZF社製の5速マニュアルを組むため、トランスミッション・トンネルはハンマーで叩いて加工されていた。それが、高身長の彼に深刻な問題を生んでいた。175cm程度だったマキネンは、平気だったのかもしれないが。

「ペダルの位置がタイトだったんです。普通の靴では運転できないくらい」。最終的にワトキンスの手で、ペダルの間隔は広げられた。過激なラリー仕様だったプラグとキャブレター・ジェットも、公道を前提とした仕様へ交換された。

現在は、だいぶ運転しやすい状態にあるようだ。クラッチは重すぎない。1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンのシフトレバーも扱いやすい。

次は1300スポーツのクラブマンレーサー

油温が上昇するまで、回転数は7000rpm以下を保つよう告げられる。ところが、トランスミッションには極端にショートなギアが組まれ、ツインカム・エンジンはピーキー。4000rpm以下ではトルクが細く、あっという間に8500rpmまで吹け上がる。

実際に守ることは簡単ではない。それでも、5速は長距離のサファリラリーに備え、オーバードライブでロング。運転に慣れたロビンソンは、自走でクラシックカー・イベントに向かい、お気に入りの峠道を楽しんでいるという。

排気音はドライでスリリング。ステアリングはダイレクト。気持ち良くカーブを旋回できる。タイヤはブロックパターンで、舗装路でのグリップ力は限定的。乗り心地は驚くほど滑らかだ。

専用のサスペンションと、軽くない車重が影響している。「フォードは軽量化しています。オーバーフェンダーはアルミで、ボンネットとトランクリッドはFRP。ホイールはマグネシウムなんですよ」

「それでも、スペアタイヤ2本と、巨大な燃料タンク、大きな金属製バンパーバーが付いていますからね。通常より150kgは重いでしょう」

ツインカム・サファリラリーの仕上がりに納得したロビンソンは、若い頃に叔父さんから譲り受けたエスコート 1300スポーツのレストアを始めた。当時のクラブマンレーサー風に仕上げるつもりだという。

このクルマこそ、彼が徹底的なエスコート・マニアになるきっかけを作った1台。ワークスマシンの復元には成功している。恐らく、今回は18年間も費やすことはないだろう。

協力:ニール・ロビンソン氏、デイブ・ワトキンス氏、デニス・チック氏、オーウェン・ヘンダーソン・ハミルトン氏

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