MotoGPで現在大きな話題を占めているのは、ホンダを離脱してドゥカティ陣営に移籍したマルク・マルケスの存在だ。何度も王者となってきたマルケスがホンダを離れるという衝撃は今も界隈を揺らしてるが、同様の事態が起こる可能性があるのがヤマハだ。
ヤマハは2021年にファビオ・クアルタラロがホルヘ・ロレンソ(2015)以来となるタイトルを獲得したが、2023年には大苦戦に陥ってしまった。獲得ポイントだけを見ても、スプリントレースで大幅に総ポイント数が増えたにもかかわらず、クアルタラロは172ポイントしか獲得できなかった。これは3勝を挙げてランキング2位となった2022年よりも76ポイント少ないものだ。
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マレーシアGPで行なわれたmotorsport.comのインタビューで、クアルタラロは2023年のタイトル争いが無理だといつから考えていたかと聞かれ「正直に言うと、最初のレースからそう思っていた」と答えた。
「2022年でさえ、戦えるとは思っていなかった。もちろん、ライダーとしてどんな状況でも諦めないという思いはあるよ。でもシーズン前半から中盤までは、直面する状況を想像してすらいなかったから、大変だった」
「10位とか17位になったかと思うと、7位とかもあった。常にフラストレーションを感じていて、自分のポジションに全く満足できていなかった。僕のライディングが良い時や、明らかにポテンシャルがある時もあった。でもそれが僕らが受け入れなくちゃいけないことだったんだ。後半戦はかなり良くなって、100%を発揮するだけだった。シーズン前半は本当に大変だったよ」
クアルタラロは前半戦では73ポイント、そして後半戦では今季3回の表彰台のうち2回の表彰台を得て99ポイントを記録した。この要因の一部には、ミシュランが暑さ対策のためインド、インドネシア、タイに、より硬い構造のタイヤを持ち込んだことで、ライバルとの差が縮まったことも関係している。
クアルタラロはシーズン後半戦にはメンタル面でも進歩があったと語る。
「僕は傲慢だった。悪い意味ではなく、改善していくという意味でね」
彼が念頭に置いているのは、2023年シーズン初期にヤマハの進歩のなさをメディアに対して嘆いていたことだ。
「もちろん、これまで話してきたようにこうしたポジションは受け入れられるものではない。僕はヤマハに限界までプッシュしてほしかったんだ。だけど、僕の言い方は良くなかった。でも僕は常にトップでナンバーワンになりたいと思っているんだ。ベストを尽くしてそのポジションにいた経験もある」
「だけどどのレースでも期待できないんだ。当然金曜日は予選Q2に進むことが目標で、それが週末の主な目標なんだ。日曜のレースで6位になることですらなく、ね。金曜日にQ2に進むこと、それが毎週末の目標になっていた。でもそれを受け入れるのは難しい。今ですら、その感情を受け入れきれていない。マンダリカ(インドネシア)でも、僕は最速だったのにオーバーテイクができなくて3位だった。確かに表彰台は久しぶりだったけど、そのポジションは決して受け入れられなかった」
そうした苦しい状況にあるヤマハだが、クアルタラロはエンジンパワーの向上を常々要望してきた。来季は新たなコンセッション(優遇措置)制度により、ヤマハはシーズン中にエンジンのアップデートが行なえるようになるため、クアルタラロの要望に対して対応しやすくなるかもしれない。
そしてクアルタラロがパワー以外で改善を望んでいる領域のひとつが、シャシーだ。クアルタラロはこの4年間でシャシーに進歩が無いと感じており、それがヤマハの「一進一退」の開発に繋がっていると考えている。
「パワーがなければより大きなエアロを使えないから、トップスピードも重要なんだ」とクアルタラロはいう。
「とても重要なことなんだ。でも僕らが過去に持っていたはずのコーナリング(のアドバンテージ)が何処かにいってしまった。それは取り戻すべきモノだろう。2019年のバイクはコーナリングが素晴らしく、大いに僕の助けになってくれていたんだ」
「でも僕らは多くのモノを失って、それでいて得たものはわずかだ。4年間でそうなるのは普通じゃない。タイとかのラップタイムをチェックすると、4年前と全く同じなんだ。でももっと限界に近いと感じているし、僕自身は4年前よりも優れたライダーになって力があると感じている」
「僕たちは常に一歩前進して一歩後退しているから、ポジティブさをキープして改善し続ける方法を探さなくちゃいけない」
■クアルタラロの離脱を防げるのか?
こうしたクアルタラロの状況と比較できる唯一の事例は、マルク・マルケスだろう。マルケスもホンダ陣営が苦しむ中、クアルタラロのように気を吐く走りを見せつつも、最終的に2023年限りでホンダを離れる決断を下した。
当然、ヤマハとしてはマルケスのようにクアルタラロに“逃げられる”ことは防ぎたい。しかしそのためにはクアルタラロを説得できるような姿勢や行動を示さなくてはならないだろう。そしてクアルタラロを含め2024年にはほぼすべてのライダーが契約の節目を迎えるため、そのための時間はあまり残されていない。
「ライダーとして、ヤマハがMotoGPで走る機会を与えてくれた存在だというのは、もちろんあるよ」
ヤマハのライダーとして再び勝つことが重要なのか、それとも単に勝つことが重要なのかと聞くと、クアルタラロはそう答えた。
「僕は彼らにタイトルをもたらすことができた。関係も良好だ」
「ライダーとしてヤマハとカムバックして、また勝利したいと思っている。僕らは頂点もどん底も経験してきたけど、またトップに戻りたいんだ。だけど問題は、僕自身がこれは成功するプロジェクトだと確信するための時間は、本当に短い時間しか残されていないということなんだ。当然、プロジェクトを確信できず離脱しなくてはと感じたなら、僕はそのステップを踏み出さなくちゃならないだろう。でもヤマハはかなりプッシュしているのが分かるし、彼らと共にトップに戻りたいと思っている」
ヤマハとの成功を念頭に置いているクアルタラロだが、ヤマハから乗り換えるライダーやマルケスの事例については、当然注目しているという。なおチームメイトのフランコ・モルビデリも来季はプラマックに移籍し、マルケスのようにドゥカティのマシンを走らせることになる。
「もちろん来年マルクがどうなるかを確かめるのは、僕としても本当に興味深いものだ」
「マーベリック(ビニャーレス)と半年組んでいたけど、基本的にはフランコが僕の長年のチームメイトだった。だから彼がドゥカティのファクトリーマシンで何ができるのか、どれくらい早く適応できるのかは興味深い。彼は僕と同じ期間をヤマハで過ごしているんだ。僕の2024年前半戦にとってもそれは大事になってくるだろう」
クアルタラロは来季に向けたテストが非常に重要だと考えており、表彰台争いの常連に戻れることを望んでいると語った。
「知っての通り(9月の)ミサノテストは心を落ち着かせるためにも本当に大事だった」
「僕としては素晴らしいテストにはならなかったというのはある。だから(最終戦後の)バレンシアと、2月のセパン、この2つのテストは僕の将来にとってとても大事になってくる。特に僕は表彰台常連に戻って毎週表彰台を争いたいと思っているんだ」
「こういった状況にあるから、毎週末優勝争いをすることを期待はできないけど、表彰台をもっとコンスタントに争うことができれば素晴らしいと思う。『来年はチャンピオンシップを争うぞ』と言うには離されすぎているからね。もちろんそれが僕の目標だけど、現実的になって一歩ずつ考える必要がある。来年、もっと表彰台や勝利を争えるようになるというのは、とても大事になってくる。そうなればヤマハは素晴らしい仕事をしたということだからだ」
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みんなのコメント
おそらく、マルケスもモルビデリもドカでジャンプアップするだろう、それを目の当たりにしたらヤマハから離れるだろう。それは、もう、仕方がない事だ。
只、エアロの相性が悪い。欧州勢は最適解の見つけ方を知っている。出来ることならエアロなんて外してほしいが、早く規格を統一してほしい。
四輪レースでは後付パーツは厳しく規制されてるのに二輪レースが野放しなのが分からん。