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ロールス・ロイスCEO、躍進の理由と電動化について語る【単独インタビュー】

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ロールス・ロイスCEO、躍進の理由と電動化について語る【単独インタビュー】

Rolls-Royce Motor Cars CEO Torsten Muller-Otvos

ロールス・ロイス モーターカーズ CEO トルステン・ミュラー-エトヴェシュ

ロールス・ロイスCEO、躍進の理由と電動化について語る【単独インタビュー】

2018年は過去最高の販売台数を記録

100年を越すロールス・ロイスの歴史にあって、2018年は「記録的な1年」だった。年間販売台数の4107台は史上最高。ファントム、ゴースト、レイス、ドーンに続く「第5のモデル」として発売された同社初のSUV“カリナン”のセールスも好調なうえ、黒基調でエッジが効いたデザインで若年層に好評なブラックバッジ・シリーズは一部モデルで4割を越す人気を博しているという。

スーパーラグジュアリーという孤高のセグメントにあって、いまも進化を続けるロールス・ロイス。そのチーフエグゼクティブであるトルステン・ミュラー-エトヴェシュにBMW NEXT Genの会場で単独インタビューを行なった。

顧客層はグループ内でもっとも平均年齢が若い

「昨年はファントムがとてもたくさん売れました」とミュラー-エトヴェシュ。「日本での販売も順調で、とりわけファントムが好評です。しかも、昨年末にはカリナンが発売されて、これも私たちのビジネスを強力に加速させています。2020年も記録を更新できそうです。ロールス・ロイスはいま非常に好ましい状況にあって、私はとてもハッピーです」

ちなみに同社初のSUVであるカリナンは週末に家族と出かける若きエグゼクティブたちをターゲットに開発されるなど、ロールス・ロイスはいま顧客層の若返りに取り組んでいる。

「10年前、私たちの顧客の平均年齢は56歳でした。それが昨年は43歳まで若返りました。これは驚くべきことです。ちなみに、BMWグループではMINIを抜いて私たちがもっとも平均年齢の若いブランドとなりました。しかも、年を追うごとに年齢層は若くなっています」

なぜ、若い顧客がロールス・ロイスのような高価なクルマを買えるのか?「現代社会ではITや様々な投資によって若い方でも経済的に成功することが可能になりました」。ミュラー-エトヴェシュは続ける。

「私が10年前にロールス・ロイスにやってきたとき、今後の市場予測を徹底的に行いました。非常に裕福な方々にどのような変化が起きるのかを調べたのです。その結果、顧客がどんどん若返ると予想されることが明らかになりました。おそらく、運転をショーファーだけに任せる時代は間もなく終わり、顧客は自分たちで運転することをより楽しむ時代がやってきます。私たちがゴーストに続いてピュア・ドライバーズカーのレイス、そしてドーンをリリースしたのは、このような予想に基づいたものでした」

こうしたモデル戦略は今後も継続されるとミュラー-エトヴェシュは語る。「これからも若い顧客に向けた製品を世に送り出します。しかも、プロダクトだけに限らず、ブランドの表現の仕方、市場に対してどのようにコミュニケーションしていくかなども、すべてこうした戦略に基づいて実施します。そうでなければ、若いお客様を惹きつけることはできません。たとえレイスやドーンを発売しても、マーケティングが古いスタイルのままであれば成功しなかったでしょう」

ロールスの変化を歓迎する“ロイヤルカスタマー”

いわゆる老舗が顧客年齢層の上昇に歯止めをかけられず、年を追うごとに売り上げが落ち込んでいくのは自動車メーカーに限らず様々な産業界で見られる現象である。ロールス・ロイスは、そうした難題を克服した数少ない老舗ブランドのひとつといえるが、本当に驚かされるのは、若い顧客を獲得する一方で伝統的な顧客もしっかりとつなぎ止めている点にある。

「長年のロイヤルカスタマーにも引き続きご満足をいただいています」とミュラー-エトヴェシュ。「むしろ、そういったお客様の多くは私たちの変化を歓迎してくださっています。たとえば、ブラックバッジ・シリーズの投入が従来のお客様を困惑させることはありませんでした。むしろ、普段はショーファーが操るファントムEWBの後席で寛がれることを好まれるお客様からも『OK、私にもその魅力は100%理解できる』と歓迎していただいているくらいです。つまり、若い顧客と年齢を重ねたお客様が、いまはひとつのファミリーのように共存しているのです」

ここで、ここまでインタビューに耳を傾けていた広報部長のリチャード・カーターが付け加えてくれた。「私たちのロイヤルカスタマーは年齢を重ね、経済的にも成功を収めた方々ばかりで、そういった皆さまはとても賢明でいらっしゃいます。また、そのようなお客様は自分で会社を経営されたり、ご自身のブランドを所有されているケースが少なくありません」

「ですから、私たちが直面する課題にも深い理解を示してくださることが多く、『ロールス・ロイスがやろうとしていることはすごくよくわかる。それを今後も続けたほうがいい!』とか『それこそわが社が進もうとしている道にほかなりません!』といったお言葉を多くいただいています」

実は、ロールス・ロイスはそういった裕福な顧客の一部を個別に招き、一緒に小旅行に出かけたり食事を楽しむなどしてビジネス、ブランディング、マーケティングに関するフィードバックを掘り起こしているのだという。

電動化はブランドにマッチする

そうしたエクスクルーシブな市場調査の結果を踏まえてロールス・ロイスが今後進もうとしているのが車両の電動化、なかでもエンジンを持たないピュアEVの製品化である。

「次の10年間で電動化を推進する背景には様々な理由があります」とミュラー-エトヴェシュ。「法律による規制により、これが避けられない状況となっているのは事実で、将来的に都市部では内燃機関を積む自動車が走れなくなる可能性があります。そこで私たちは電動化に関係する実験を集中的に行ってきました」

なかでも、もっとも重要なのが8年ほど前に試作したファントム・エクスペリメンタル・エレクトリック(102EX)だったという。「世界中で暮らす100名ほどの顧客に、ファントム・エクスペリメンタル・エレクトリックを試乗していただきました」

「皆さんからのフィードバックはすべてポジティブなもので、『ロールス・ロイスというブランドに完璧にマッチする』という声が大多数を占めました。皆さんにご満足いただけなかったのは、航続距離の短さと充電時間の長さだけで、『とても静か』『走りが力強い』『パワフル』というお言葉をたくさんちょうだいしました」

ちなみにファントム・エクスペリメンタル・エレクトリックの航続距離は120マイル(約200km)で充電には8時間を要した。しかし、やがて製品化されるロールス・ロイスのピュアEVでは、こういった課題は完全に克服されているとミュラー-エトヴェシュは胸を張る。

「次の10年で生まれるテクノロジーは、皆さまにご満足いただける電動モデルをご提供する礎となるはずです。これについては、とても自信があります」

最高の自動運転は“ショーファー”である

現在、自動車界で注目される話題といえば電動化と自動運転のふたつ。ちなみに、私がファントムの国際試乗会に参加したときには「ロールス・ロイスのお客様は、すでにショーファーという最高の自動運転を手にされているので、私たちが自動運転技術を手がけることはないでしょう」と冗談めかして語っていたが、実際はどうなのか? 改めてミュラー-エトヴェシュに訊ねた。

「その考え方は依然として変わっていません。ロールス・ロイスのお客様は、普段ご自身で運転される方を含め、いつでもショーファーを雇い入れられる方々ばかりです。ただし、完全に無人のロボティック自動運転に関していえば、ロールス・ロイスが掲げる“エフォートレス・ドライビング(努力を必要としない運転)”の究極の形として、いつかは導入されるでしょう」

「ただし、レベル4までの自動運転に関していえば、あまり関心はありません。私たちが目指すのはエフォートレスでイージーでストレスフリーな世界です。そのためにはスーパー・セーフで信頼性が極めて高くなければいけません。したがってドライバーは車内で本を読んだり会話を楽しんだりできるでしょう」

つまり、エフォートレスこそがロールス・ロイスのコアバリュー。ミュラー-エトヴェシュの言葉は私にそう聞こえた。

「まさに、そのとおりです。完璧、傑出した品質、“魔法のじゅうたん”の乗り心地、ビスポーク。これらがロールス・ロイスにとっては非常に重要なバリューです。ビスポークのレベルでいえば、私たちほど様々なリクエストに応えられる自動車メーカーはほかにありません。欲しいモノを教えていただければ、私たちは何でも作ります。そしてエフォートレス。これは、どんな時代になってどんなモデルが登場しても、決して変わることはないでしょう」

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

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