■高性能車の証である「R」の称号が与えられたクルマを振り返る
一般的に販売されているクルマには、複数のグレードが設定されています。グレードによってエンジンや装備、見た目が異なり、価格も上下します。
そうしたグレードにはそれぞれ名前がつけられ、なかにはそのグレードがどういうキャラクターかを示す例もあります。
たとえば、かつてのトヨタ「クラウン」では、コンフォートなモデルには「ロイヤル」、スポーティなモデルには「アスリート」がグレード名に用いられていました。
なかでもスポーティなモデルで有名なのが、日産「スカイラインGT-R」やホンダ「シビック タイプR」などの「R」です。
これは「Racing(レーシング)」の頭文字で、文字どおりレーシングカーをイメージさせる高性能モデルに冠され、日本車だけでなく海外のモデルでも多く見られます。
そこで、「R」の名を冠した珍しいモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●日産「セントラ SE-R」
かつて、日産の小型車のなかで主力だった「サニー」は2代目からアメリカにも本格的に輸出され、後に北米市場では「セントラ」の名前となりました。2006年に国内でサニーの生産が終わると、セントラは独立した車種として現在も販売されています。
この国内では最後のモデルだった9代目サニーをベースに5代目セントラには、魅力的な高性能グレードが存在。それが2002年に発売された「セントラ SE-R」です。
9代目サニーのメインが1.5リッターエンジンだったのに対し、セントラ SE-Rは最高出力167馬力を発揮する2.5リッター直列4気筒エンジンを搭載。
1.1トンほどの軽量な車体との組み合わせで優れた走行性能を発揮し、アメリカの若者からも人気となりました。
さらに、より高性能な「セントラ SE-R SpecV」では最高出力176馬力までチューンナップされ、トランスミッションは6速MTを設定。オプションでブレンボ製フロントブレーキキャリパーが選べるなど、本格的なスポーツセダンに仕立てられていました。
その後、6代目にもSE-Rが継承され、7代目ではターボエンジンの「セントラ NISMO」が設定されましたが、現行モデルの8代目では高性能グレードはラインナップされていません。
●マツダ「ランティス タイプR」
マツダは1980年代の終わりから好景気を背景に販売チャネルを5つ展開していました。同時に車種数も従来から格段に増やしていきましたが、そんな状況が終わりを告げようとした1993年に登場したのが「ランティス」です。
ランティスは「ファミリア」と同クラスのモデルで4ドアセダンと5ドアハッチバックの2タイプのボディが設定され、どちらもユニークかつ流麗なフォルムのクーペデザインを採用。なお、バブル期に開発されたモデルだけあって、フロントフェイスはセダンとハッチバックで異なるデザインとされました。
搭載されたエンジンは135馬力の1.8リッター直列4気筒と170馬力を誇る2リッターV型6気筒を設定。このV6エンジンはランティス専用チューニングで、上質なフィーリングを追求。
また、シャシもランティス専用に開発されるなど、マツダとしてもかなり気合が入っていました。
そしてグレードには「タイプR」を設定。205/50R16タイヤやビスカスLSD、前後にストラットタワーバーが装着されていましたが、それほどハードなチューニングのモデルではなく、あくまでもトップグレードというポジションです。
ランティスは1994年シーズンから全日本ツーリングカー選手権(JTCC)に、V6エンジン車で参戦するなどスポーティなイメージをアピールしましたが、レースで好成績を残すには至りませんでした。
ユニークなデザインや走りの評価が高かったもののヒット作になったとはいえず、車種整理のため1997年に生産を終了。今ではかなりのレア車です。
●ホンダ「アコード タイプR」
ホンダ「アコード」の高性能モデルといえば、2000年に誕生した「アコード ユーロR」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。
6代目アコードをベースにしたユーロRは、「NSX」「インテグラ」「シビック」と続いた高性能なタイプRシリーズに対しチューニングはマイルドで、ストリートを主体としたハイパフォーマンスモデルというコンセプトで開発されました。
この6代目アコードには海外仕様にも高性能グレードが存在。それが欧州で2008年に発売された「アコード タイプR」で、実はユーロRよりも先にデビューしていたのです。
当時、6代目アコードは新設計の「フレキシブルプラットフォーム」を採用しており、同じアコードでも日本向け、北米豪州向け、そして欧州向けの、大きく分けて3タイプの外観デザインを展開していました。
そのうち欧州向けアコードにタイプRが設定され、最高出力212馬力を発揮する2.2リッター直列4気筒DOHC VTECを搭載。トランスミッションは5速MTのみです。
ほかにも強化サスペンションにヘリカルLSD、デュアルマフラーを採用し、外観では大型の専用リアウイングを含むエアロパーツ、内装ではレカロ製シート、MOMO製ステアリングホイール、アルミ製シフトノブなどが装備されています。
アコード タイプRのチューニングレベルはユーロRに近く、それほどハードなモデルではありませんでした。
なお、欧州でアコード タイプRの人気はそれほど高くなかったため、2002年に7代目アコードの登場と同時に消滅。以降はラインナップされていません。
■海外にもあった「R」の称号を与えられたモデル
●ポルシェ「911R」
1964年に誕生したポルシェ「911」は初代から現行モデルの8代目まで、一貫して水平対向エンジンのRR、そしてアイコンともいえるフォルムを継承してきた、ドイツを代表するスポーツカーです。
この911の第1世代(愛称はナローや901)でもっとも有名なのが1973年に登場した「911カレラRS」、通称「ナナサンRS」とも呼ばれる高性能モデルですが、それ以前の1967年にわずか15台だけ作られたモデルが「911R」です。
911Rは大胆な軽量化によって約800kgまで削られた車体に、レーシングカー「906」とほぼ同じスペックで210馬力を誇る2リッター水平対向6気筒エンジン搭載する、伝説的なモデルとして知られています。
そして、この911Rの名が、2016年に第7世代の「991型」の限定車として復活しました。
新生911Rは高性能モデルの「911 GT3RS」をベースに開発され、エンジンは500馬力を誇る4リッター水平対向6気筒自然吸気を搭載。トランスミッションは6速MTのみです。
また、GT3RSに対してリアウイングレスとなり、ボディにはカーボンとマグネシウムが使われ、チタン製エキゾースト、リアサイドウインドウは樹脂製、エアコンとオーディオシステムも撤去し、1370kgまで軽量化されています。
ちなみに911Rは世界限定991台で販売され、日本での価格は2629万円(消費税8%込)でした。
●ボルボ「850エステート T-5R」
かつて日本におけるボルボ車というと、安全性が高く無骨で質実剛健なデザインのクルマというイメージがありましたが、現行モデルはSUVでもステーションワゴンでも流麗かつ洗練されたモデルばかりです。
イメージチェンジの大きな転機となったのは、1990年代からで、その代表的なモデルが「850」シリーズです。
1991年に発売された850シリーズはセダンとステーションワゴンの「エステート」をラインナップ。とくに850エステートはボクシーなフォルムながらも美しさが感じられる洗練されたデザインによって、国内のラージサイズ・ステーションワゴン市場を席巻するヒット作になりました。
搭載されたエンジンは2.3リッターから2.5リッターの直列5気筒で、これを横置きに搭載したFFを基本とし、4WDもラインナップ。
この850エステートの人気をさらに高めるきっかけとなったのが、2.3リッターターボのエンジンをベースに最高出力240馬力にチューニングされた限定車「850エステート T-5R」といえます。
外観は控えめなエアロパーツが取り付けられている程度で大きく手が入れられていませんが、足まわりやブレーキのチューニングに205/45R17タイヤが奢られ、運動性能も向上。
欧州では850エステートをベースにしたマシンでツーリングカーレースに参戦するなど、基本性能の高さをアピールし、スポーツワゴンのイメージを定着させました。
※ ※ ※
高性能モデルの証である「R」の称号以外にも「ツーリング」の「T」、「スポーツ」の「S」などさまざまなものがありますが、前述のポルシェ911はかなり早い時期にこれらの記号を使い分けています。
日本でもいすゞ「ベレット」がスカイラインGT-Rと同時期に「GTR」や「GTタイプR」をグレード名に使うなど、やはりレースに直結したイメージアップをおこなっていました。
最近は「GT-R」や「タイプR」の格が上がった感があり、うかつに名乗れないほどハードルが高いのですが、かつては比較的気軽に名乗っていたモデルもあり、探してみると意外と見つかります。
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みんなのコメント
でも名ばかりのGT-Rで、更に上位グレードGT-TR,GT-FOURがありました。
気が引けたみたいで、6代目セリカの3S-GEはGT-Rを名乗らずSS-Ⅱとなったみたいですw