手強い道を克服する秀でた能力
今回の996型ポルシェ911は、カール・シャードロウ氏が所有する2001年式のカレラ4。前期型で300psの最高出力はカレラ2と同値だが、トラクション不足を感知すると最大40%のトルクがフロントへ伝えられる、四輪駆動システムを搭載する。
【画像】ミレニアムの6気筒スポーツ ポルシェ911 ノーブルM12 TVRタスカン 最新モデルも 全144枚
GT3風のホイールとスポーツエグゾーストは、当時物のオプション。カレラ4でもスリムなボディを維持し、初代901型の雰囲気が巧みに受け継がれていると筆者は思う。
11万km以上の走行距離を考えると、状態はかなりイイ。3スポーク・ステアリングホイールの奥に、燃料と速度、回転、補助のメーターが5連リングで並ぶ。
人間工学も優秀。ペダルは若干左へオフセットしているが、理想的な運転姿勢を取れる。アクセルペダルはフロアヒンジで、ヒール&トウしやすい。
車重は1375kgあり、パワーウエイトレシオは今回の3台で1番低い。だが、ドライバーの労力を抑えつつ、手強い道を克服する能力では最も高い。
ステアリングは線形的な重み付けで、フィードバックも豊か。高速域での姿勢制御も秀抜で、挙動を読みやすい。乗り心地は硬めだが、不快なほどではない。
フラット6は力強く粘り強い。ゆったり巡航しやすいのと同時に、シフトダウンし、鋭い加速も得やすい。7000rpm目がけて、心地良い咆哮が響く。
ブレーキの効きは漸進的。乾いた路面なら、グリップ力にも不足なし。リアタイヤは路面を掴み続け、僅かなアンダーステアが保たれる。アルプス山脈越えでモナコを目指す時、今回の3台では最も頼もしいと感じるはず。ドラマチックさは半分くらいでも。
レーシングユニットのようにアグレッシブ
TVRタスカン Sは、そんな996型と対照的。エンジンの始動前から、視覚的にドライバーを魅了する。ここ6年間、ブルーの1台を所有しているのがマット・ウェイド氏だ。
4.0L直列6気筒エンジンを覆うボンネットは、官能的。小さなテールライトは、縦に3つ重なる。普通に感じるような部分はない。
ドアミラーの下に隠れたボタンを押すと、ドアが開く。インテリアは、くまなくレザーで仕立てられている。時速200マイル(約321km/h)まで刻まれた、巨大なスピードメーターの中央に、デジタルメーターが収まる。
トランスミッショントンネルは巨大で、削り出しのノブがゴージャス。ノーブルM12 GTO-3Rや996型のインテリアが、退屈に感じてしまうほど美しい。
ステアリングホイールは上下のチルトしか調整できず、理想の運転姿勢へ近づけにくい。それでも、「スピードシックス」直列6気筒の音響を知ると、許せてしまう。
上品な996型とは異なり、低い回転域でも、レーシングユニットのようにアグレッシブ。鋭敏なアクセルレスポンスへ感心しながら引っ張れば、サウンドは刺激を増していく。そこで得られる、爆発的なパワーにも息を呑む。
一方、限界が高いわけではない。ステアリングの反応は超クイックで、フィードバックも濃いものの、速度が上昇するほど神経質さも増していく。グリップ力は高いが、フロントサスペンションは過度に硬く、リアサスペンションは不自然に柔らかい。
度を過ぎると、暴れるのを抑えきれないのは想像できる。そのかわり、ブレーキは素晴らしいけれど。
フォード・モンデオと共有するV6エンジン
アント・デイ氏が所有するシルバーのM12 GTO-3Rは、今日の3台では1番パワフル。標準では357psだが、ロムチューンで426psへ強化されている。ノーブルの場合、オーナーが独自のチューニングを楽しんでいる例は珍しくない。
ただし、シャシーはオリジナルらしい。20%の強化を受け止められるのか、若干の不安がよぎる。
M12 GTO-3Rは、正直乗り降りしにくい。頭から身体を押し込み、背中を丸めてお尻を座面に降ろし、足を引き込む。レザー張りのバケットシートは心地良い。
ステアリングホイールは、ゲームのコントローラーに似ているかも。可動域が広く、快適な運転姿勢を探せる。フォード由来のスイッチ類が多用され、インテリアは、良くいえば簡素な機能性重視のデザインだ。
ダッシュボードは硬質なプラスティック製で、4枚のメーターが突き出ている。中央側には、独立したブースト計。シンプルだが、人間工学的には悪くない。
キーを捻って、同時期のフォード・モンデオと共有するV6エンジンを始動させる。エグゾーストノートは、996型911へ近い。
フォード由来の6速MTのシフトレバーは、若干ソリッド感が足りないものの、正確にゲートへ収まる。ステアリングホイールは軽く回せ、負担は少ない。路面変化で進路は乱れがちだが、前方視界は広く安心感がある。
乗り心地は、996型とタスカン Sの中間。ゆったり走っていても苦ではない。
純粋なドライビングマシンとして際立つ
しかし、カーブが連続する区間へ飛び込むと、一転して積極的。後継モデルのノーブルM400へ迫るダッシュを披露し、特に中間加速は鋭い。3000rpmを過ぎ、ブースト圧の上昇とともに本領が表出していく。
5000rpmへ達する頃には、速度上昇に圧倒されている。公道では、それ以上回そうという気持ちが薄れるほど。直線的な速さでは、タスカン Sも負けていない。とはいえ、ノーブルのシャシーは別次元の完成度にある。
登場から20年以上が経過したM12 GTO-3Rだが、軽くない車重とバネ下重量から逃れられない現在のスポーツカーと比較しても、動的能力では引けを取らない。驚異的な姿勢制御とグリップ力、シャシーバランスで、今回の3台では圧倒的な勝者だ。
ノーブルは、快く受け入れられるドライバーが限られるかもしれない。スタイリングやインテリアの訴求力ではタスカン Sへ劣ると思うし、実用性と信頼性では、996型911には敵わない。どちらもスポーツカーとして、不満なく楽しい。
それでも、純粋なドライビングマシンとして比べたら? 際立つのはM12 GTO-3Rだ。
6気筒エンジンのスポーツカー 3台のスペック
ノーブルM12 GTO-3R(2000~2005年/英国仕様)
英国価格:4万9950ポンド(新車時)/5万ポンド(約960万円/現在)以下
生産数:約700台(M12合計)
全長:4089mm
全幅:1828mm
全高:1143mm
最高速度:273km/h
0-96km/h加速:3.7秒
燃費:8.9km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:1080kg
パワートレイン:V型6気筒2968cc ツイン・ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:357ps/6500rpm
最大トルク:48.3kg-m/3500-5000rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)
TVRタスカン S(1999~2006年/英国仕様)
英国価格:4万9595ポンド(新車時)/4万ポンド(約768万円/現在)以下
生産数:1677台(スピードシックス、タスカン合計)
全長:4235mm
全幅:1810mm
全高:1200mm
最高速度:305km/h
0-96km/h加速:3.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1090kg
パワートレイン:直列6気筒3996cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:395ps/7500rpm
最大トルク:45.5kg-m/5000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)
ポルシェ911 カレラ4(996型/1998~2004年/英国仕様)
英国価格:6万4585ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約672万円/現在)以下
生産数:1万2089台
全長:4432mm
全幅:1765mm
全高:1306mm
最高速度:280km/h
0-96km/h加速:5.2秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1375kg
パワートレイン:水平対向6気筒3387cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/6800rpm
最大トルク:35.6kg-m/4600rpm
トランスミッション:6速マニュアル(四輪駆動)
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みんなのコメント
もうさ、メーカー超えて、トヨタがマツダ直6を使ってフェアレディZを作ろうよ。ピークパワーなんか3.3LガソリンNAで150kw(204ps)で十分。2シーターと2 2で、現代では4700×1800×1300(2 2は1350)、WB2800。全高とルーフ形状で2シーターと2 2を区別する。ピークパワーを抑えることで軽量化し、実用域の加速性能に特化する。100マイル以上なんかアメリカでも真っ当な人は出さないんだからさ。