1970年~1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)と『GQ JAPAN』編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回はバブル経済期に大ヒットしたトヨタのハイソカー「ソアラ」(2代目)だ。
ソアラを13台乗り継ぐオーナー
新しいマツダを実感出来る6気筒SUV──新型CX-60試乗記
少年I 今回、探偵団が採り上げるクルマは、トヨタの2代目「ソアラ3000GT-リミテッド」です。
少年O 1986年に登場して1991年まで生産された高級パーソナルクーペですね。
探偵 1989年生まれの私にとって、“両親世代のあこがれのクルマ”という認識です。
少年O 初代ソアラが登場したのは1981年。このとき、日本はまだまだ高級車の市場が小さくて、ただただ憧れるというひとが多かったと思います。トヨタが初代でアピールしようとした価値観がいまひとつ、日本市場では共有してもらえなかった。第2次オイルショックのあとに登場したというのもあったかもしれません。でも、2代目は、満を持して、という感じで受け入れられました。バブル経済という好景気によって、“金余り”が発生し、多くの人が購入出来た、という事情もあるかと思いますが。
少年I 1987年登場の8代目クラウンが一時、カローラの月間販売台数をうわまわる、なんていうことも起こったのがバブルですからね……今じゃ、考えられない話です。
少年O さて、今回のクルマは吉井純司さんからお借りしました。1986年に新車で購入したソアラ2000GT-ツインターボを皮切りに、13台ソアラを乗り継いできたというから、根っからのソアラファンです。
探偵 ソアラばかり13台! これだけソアラを愛する人とは初めて出会いました。
少年I しかも“20”と呼ばれることも多い2代目ソアラばかりなんですよ! 魅力は「スタイルです」とのこと。うち、ツインターボなどを含む2.0リッターモデルが12台。乗り換えてきた理由は、あいにく事故とかもあったようですが、なかには部品取りのために購入したモデルもあるそうです。
探偵 それはすごい。ソアラといえば、「エアロキャビン」と呼ぶオープンモデルもありましたが、こちらを所有した経験はないそうです。
少年I 「15年ぐらい前は、部品を個々で買うより1台買った方が安かった」と、吉井さんは言っています。いま吉井さんが乗っているのが、今回の3000GT-リミテッド。ぜいたくな作りと、トルクがたっぷりあるエンジンによる走りが魅力といいます。マニア垂涎の2.0リッターのベーシックモデルについては「パワーがちょっと……」というわけで、やっぱり3.0リッターが良いそうです。
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少年O 2代目ソアラが登場したとき、専用開発されたエンジンが話題になりました。3.0リッターの直列6気筒で、4バルブ化されたヘッドに、さらにターボチャージャーの組み合わせで230ps。当時、もっともパワフルなエンジンでしたね。市場のニーズに合う的確な商品開発力に感心させられました。
少年I 吉井さんのクルマには、エアサスとエレクトロマルチビジョンと、ムーンルーフ、LSD、グランベールレス……と、たっぷりオプションが装備されています。
少年O グランベールレスとは、内装をスウェード調から塩ビ素材に換えるオプションですね。珍しい!
探偵 わざわざ、高級感をなくすとはおもしろいですね。
少年I 吉井さんのこだわりだそうです。本来リミテッドは、スウェード調の素材をダッシュボードやドア・トリムなどに使っていたんですが、手入れが悪いと劣化し、汚らしくなるため、1989年以降は、塩ビの内装がオプション設定されたそうです。そのオプションを装着しているんですね。
探偵 おもしろいオプションですねえ。今でいうと本革から人工皮革に変更出来るオプションのようなものかもしれません。
少年I いま55歳の吉井さんにとって、ソアラは一緒に人生を歩んできたようなクルマですが、1989年生まれの先生(探偵のこと)の印象はどうでしょうか。
探偵 分厚いシートとか、これみよがしの電子表示とか、ボディ各所の欧文のデカールとか、いま見ると、ちょっと笑っちゃうところもありますが、これが当時、市場の考える”高級”だったのですね。逆に今見ると新鮮でカッコいいです!
少年O 2代目ソアラは、3.0リッター・ツインターボがトップモデルで、エアサスペンションにデジタル表示のメーターで、と、当時の日本車のなかでは性能や装備レベルが図抜けていました。当時乗っても「これはハイテクの塊だ」と、驚いた記憶があります。
少年I 逆に、いま、僕たちに”高級車ってなに?” と、問いかけられると、すぐに答えられないかもしれません。ソアラは実にわかりやすいですね。
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探偵 いま見ても、ボディ・プロポーションも悪くないと思います。初代と較べすっきりとした印象を受けます。
少年O ホンダ車を意識したのか、ボンネット高はできるだけ下げて、ロングノーズ/ショートデッキ(前輪から前の部分が長くて、後輪から後ろの部分が比較的短い)スタイルといい、サイドウインドウのグラフィクス(輪郭)といい、破綻のないまとめかたですね。逆に2代目ソアラが出た当時、「ちょっと品よくまとまりすぎているような……」と、もの足りなさを感じたほどです。
探偵 もの足りなさというのは、やはり初代のデザイン・テイストを継承したからでしょうね。次の3代目はレクサス・ブランドのモデルとして海外でも販売されたから、デザインが大きく変わりました。ゆえに、ソアラらしいソアラというのは初代と2代目だけかもしれませんね。以降はソアラというより、レクサス「SC」(ソアラのレクサス名)のイメージが強いです。
少年O 初代を洗練させたようなスタイリングのテイストが、おとなしすぎるようにも感じられたのは事実です。おなじ1986年には「セリカGT-FOUR」とかアグレッシブなデザインのスポーツカーも登場していますし。でも、タイミングはよかったと思います。ライバルがまだ多くなかったですから。
探偵 どういうクルマがライバルだったんでしょうか?
少年O 当時、欧州にはメルセデス・ベンツ「SL」はありましたが、1971年に発表されたモデルのままなので古くなっていました。BMWが「8シリーズ」を発表するのは1989年だし、2ドアの余裕あるサイズのスペシャルティという市場がまだ出来上がっていない時期でした。日本だとホンダ「レジェンド」に2ドア・クーペが追加されるのが1987年。きれいなクルマでしたが、ソアラのような“けれん味”には乏しくて、上品すぎた印象です。
探偵 運転させていただきましたが、全体的によくまとまっているのに感心です。さすが3.0リッター・ターボだけあって加速はいいし、乗り心地もいいですねぇ。
少年I オーナーの吉井さんがはじめて3.0リッター・モデルに出合ったとき、当初は2.0リッターのツインターボLを買おうと思っていたとか。ところが、ちょっと試乗してみて即決。走らせたところ、あまりに出足が良く、急いでギアをリバースにいれて、販売店員が待つ出発地点まで後退していき「買います!」と、言ったそうです。それぐらい、よかったということですね。もうソアラ考えられない、そうです。
探偵 ダッシュボードのデザインはさすがに時代を感じさせますが、操作類の使い勝手はいいですし、張りのあるレザーシートも、座り心地が良いです。それにボディがコンパクトなので、見切りもいいし、扱いやすいのがいいです。
少年O 全長4675mmで、全幅は1725mmですからね。いまの基準からするとコンパクトですね。参考までにソアラの流れを汲むレクサス「LC」をみると、4770mmで1920mm。ソアラが扱いやすく感じるのはよくわかります。
探偵 日本市場むけに開発された日本向けの名車ですね。クルマがグローバル化するなかにあって、“国内専売車”がどんどんなくなっていますから、ソアラのようなクルマは希少です。
少年I ソアラというと、どうしても平野ノラさんじゃないですが“バブリー”なイメージが先行しちゃいますが、クルマとしてかなりしっかりと作られていたのがわかり、感銘しました。
少年O トヨタというのはいつの時代もクルマづくりがホントに巧みですね。
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。
出演情報/
・映画『冬薔薇』2022年6月3日(金)全国ロードショー
・WOWOWオリジナルドラマ「ダブル」6月4日(土)22時30分より放送・配信スタート
・映画『峠 最後のサムライ』2022年6月17日(金)全国ロードショー
・映画『LOVE LIFE』2022年9月9日(金)全国ロードショー
【過去記事】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ
マセラティ・ギブリ(2代目)
メルセデス・ベンツGクラス(2代目)
アルファロメオ・スパイダー(初代)
日産PAO
スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)
ユーノス・ロードスター(初代)
ホンダ・NSX(初代)
シトロエンCX
メルセデス・ベンツSクラス(W126)
ローバー・ミニ
フェラーリ360モデナ
フォードRS200
フォード・エスコート(マーク1)
マツダRX-8
トヨタ・セルシオ(初代)
日産・フェアレディZ(2代目)
フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)
メルセデス・ベンツ560SEC
フォルクスワーゲン・コラード
アストンマーティンDB5
いすゞ・ピアッツァ(初代)
ポルシェ911(タイプ964)
三菱ランサーエボリューションIX
ホンダ シティ・ターボII
シボレー・タホ(初代)
三菱GTO
シボレー ・コルベット(4代目)
日産フェアレディZ(4代目)
デロリアン
マツダ・ロードスター(2代目)
フォード・フォーカスRS Mk3
まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア&メイク・新宮利彦
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