2022年よりNASCAR最高峰のカップシリーズに導入される新規定車両“Next-Gen”初の公式戦となった伝統のイベント“Great American Race”こと『デイトナ500』が、2月20日に決勝日を迎えた。話題満載のレースウイークを経た日曜200周の決勝では、カップ戦わずか8戦目のルーキーである23歳のオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が、バッバ・ウォレス(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)をわずか0.036秒、チェイス・ブリスコ(スチュワート-ハース・レーシング/フォード・マスタング)を0.91秒の“フォトフィニッシュ”で打ち破り、オーナーのロジャー・ペンスキー85歳の誕生日に歓喜のシリーズ初優勝を手にした。
2月初旬にL.A. Coliseum(ロサンゼルス・コロシアム)で初開催となったエキシビジョン戦“Clash”こと『Busch Light Clash at the Coliseum(ブッシュ・ライト・クラッシュ)』を経て、各新世代モデルは15日火曜からいよいよデイトナ・インターナショナル・スピードウェイに集結、日曜のファイナル進出に向け“Next-Gen”のスーパースピードウェイ向けセットアップを入念に進めていった。
新規定Next-Gen初レース、初開催のL.A.コロシアム戦はロガーノが制覇/NASCAR
全42台が走行したオープニングプラクティスでは、2021年覇者のマイケル・マクドウェル(フロント・ロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が、続くセカンドプラクティスではライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が最速となり、まずはフォード陣営が主導権を握っていく。
しかし2度目のシングルカー・クオリファイで意地を見せたのがカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)で、決勝に向け幸先の良いポールポジションを獲得。さらに世界3大レース制覇に挑んだ50歳のジャック・ヴィルヌーブ(チーム・ヘゼバーグ/フォード・マスタング)も決勝のグリッドを確保するなど、本人いわく「現実的に優勝を狙う状況ではないが、ここで予選を戦ったのは14年も前のこと。ショーに参加する権利を得ただけでも素晴らしいし、ほとんど勝ったような気分」と、決勝に向けボルテージの上がる結果となった。
続く木曜夜に2ヒートが実施されたデュエルレースでは、マスタングをドライブするブラッド・ケセロウスキーとクリス・ブッシャーのRFKレーシング勢がそれぞれ勝利を飾り、明けた金曜3度目のプラクティスでは再びマクドウェルが最速。そして決勝を前にした最後の走行でもウッド・ブラザーズ・レーシングのハリソン・バートンがトップに立つなど、フォード勢がセッションを席巻するスピードを見せる。
■決勝はトヨタ陣営にとって厳しい展開に
しかしそのバートンは、静かな立ち上がりとなった決勝開始からステージ1が終了した62周目に、ケセロウスキーからのプッシュでウイリアム・バイロンJr.(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を道連れにウォールの餌食となり、デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)もここで戦列を去ることに。
背後から一部始終を目撃していたハムリンは「6(ケセロウスキー)が21(バートン)をプッシュしていて、21がコントロールできなくなっていることがわかった。僕はチームメイト(カイル・ブッシュ)の後ろにいて彼を助けようとしていたが、周囲を囲まれほとんどボックスに入れられたような状況だった」と、連覇を含む17度目のデイトナ500スタートで初のリタイアという、無念の瞬間を振り返った。
一方、トヨタ陣営で気を吐いたのが僚友のマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)で、ステージ1の勝利に続き72周目のリスタートから130周目の終了までアンダーグリーンのコンディションで淡々と周回を重ねると、ドラフティングを活かして連続のステージ首位を手にする。
しかしピットタイミングで138周のリスタートからケセロウスキーが隊列を率いると、151周目のターン4でタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がルーズになり、序盤にダメージを負っていたクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)もここでストップ。さらにこのアクシデントでトゥルーエクスJr.やカイル・ブッシュのマシンも損傷を受けるなど、トヨタ陣営は立て続けに厳しい状況に追い込まれる。
レース終盤を迎えて優勝争いがさらに激化すると、190周目には6台が絡むマルチクラッシュが発生し、リスタートの195周目にはラップリーダーだったリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)をケセロウスキーがプッシングし3台が巻き込まれるなど、ケセロウスキーはこの日に幾度も発生したアクシデントの起因となる大暴れを演じる。
予定された200周からリスタートし、残り2周の“スクランブル”となった勝負は、首位にたったシンドリックが僚友ブレイニーの猛攻をしのぎ切り、ウォレスの約3フィート(約91.4cm)先でフィニッシュラインへ。薄氷の秒差チェッカーを受けたシンドリックが、大舞台で歓喜のカップ戦初優勝を飾る結果となった。
■優勝を飾ったシンドリックは喜びを爆発させる
「なんてこった、これより良い瞬間なんてあるのかい!? スタンドは大観衆で満席だ。たくさんの人に感謝している。そして何よりもまず、ロジャー・ペンスキー。誕生日おめでとう!」と、ルーフ上で喜びを爆発させたシンドリック。
「誰もがこの“Next-Gen”攻略に挑み、懸命に働いてきた。だから今はとても興奮しているよ! これは僕が2021年エクスフィニティ最終戦で、チャンピオンシップを失ったことを補うインパクトがある。僕は素晴らしい人々に囲まれていて、この機会に感謝している。なんて素晴らしいファンのグループ、なんて素晴らしいレースカー、本当に、本当に、感謝している……」
一方、わずか0.26秒差で敗れた2018年に続き、再び秒差圏内の2位フィニッシュとなったウォレスも「トヨタのチームメイトは、レース全体でトップ3を形成できる速さがあっただけに、生き残る必要があった」と、惜敗の悔しさを滲ませた。
「それにしても素晴らしいスピードウイークだった。数年前に獲得した最初の2位には満足したが、これほど近づいておきながら逃した今回は最悪だ。しばらくはこれに腹を立てるつもりさ(笑)。でも全体として、僕らのチームやパートナーにとってはハッピーな結果だったと思う」
一方、NASCAR エクスフィニティ・シリーズではA.J.アルメンディンガーを降したオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング)が、シボレー対決を制してこちらも初勝利を飾り、同じくアップデート規定が導入されたキャンピング・ワールド・トラック・シリーズでは、カリフォルニア出身の22歳ゼイン・スミス(フロント・ロウ・モータースポーツ/フォードF-150)が優勝を手にする結果に。
今季から2台体制へと拡充した服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、タイラー・アンクラムの新型『トヨタ・タンドラTRD Pro』16号車が勝利目前の2番手からクラッシュに巻き込まれリタイア。チェイス・パーディの61号車は、予選でのエンジントラブルにより決勝未出走となっている。
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