この記事をまとめると
■直6エンジンのメリットとデメリットを紹介
燃料計が動いて見えるほど大ガス喰い……でも楽しすぎる走り屋泣かせの国産スポーツ車5選
■コストや搭載スペースなどの都合から最近では直6エンジンは希少になりつつある
■搭載される直6エンジンのフィーリングが素晴らしかった名車たちを振り返る
直6エンジンの良さと名車を丸っとおさらい!
クルマ好きが大好きなエンジンレイアウトといえば、頂点のV12気筒と、それを片バンクだけにした(?)直列6気筒。V12気筒はかなり特殊なエンジンなので、普及型エンジンでいえば直6エンジンに名機が多い。
なぜ直6エンジンに名機が多いかというと、まず排気量の問題。エンジンは1気筒の排気量が大きいほど1気筒あたりのトルクが出るが、あまり1気筒の排気量を大きくすると、ピストンその他が重たくなって回転の上昇が鈍くなる。そこで、1気筒あたり400~500ccというのが美味しい目安になるので、2000cc~3500ccぐらいまでは6気筒がベストになるわけだ。
次にエンジンは多気筒化するほど、クランクシャフトを1回転する間の爆発回数が増えるので、単位時間あたりの仕事量=馬力が大きくなる。さらにクランクシャフトを1回転させるのに爆発回数が4回よりも6回、6回よりも8回、8回よりも12回と増えれば増えるほど、スムースにまわり、高回転化にも向いており、エンジンが高回転までまわって、1秒あたりの爆発回数が増えると排気音の周波数も高くなって気持ちがいい!
また、直6にはエンジンの二次振動を打ち消せるという大きなメリットもある。
ピストンは上死点と下死点で一旦停止したあと、反対方向に動き出す。このとき慣性が働き、振動の原因になる。これが一次慣性力による一次振動。これは直4エンジンのように、1番と4番、2番と3番がペアになり、片方が上死点のとき、もう片方が下死点になるようにしておけば、一次慣性が相殺され、振動は防げる。
しかし、上死点と下死点以外ではコンロッドが斜めに傾きながら動いてため、ピストンが上昇するときと下降するときでは、慣性が一致しない場面ができてしまう。4気筒エンジンでいえば1番と4番が爆発して下降=最高速点に達したときの慣性力は、2番と3番の上向きの慣性力を大きく上まわるので、ここで二次慣性力が発生し、振動を生じてしまうというわけだ。この一次振動と二次振動を同時に消すには、ピストンの上下運動が重ならないように、爆発の間隔を3等分するのがベスト。
直6エンジンの場合、クランクピンの位相を2気筒ずつ、3等120度間隔に配置できるので、振動の問題は綺麗さっぱり解決する。
これらの長所のおかげで、直6エンジンには、力強く、スムースな名機が生まれやすい。ただし、直6はエンジン長が長く、クラッシャブルゾーンを確保しづらく、横置きにも適さないのでFF車やFFベースの4WDには不向きで、6気筒エンジンの主流はV6になってきているのはご存じのとおり。
だからこそ、直6の名機を積んだクルマを味わって欲しいので、直6ならではのグッドフィーリングがウリだった車種を何台かピックアップしてみよう。
日産 スカイラインGT-R
まずは日産。フェアレディZなどのL型エンジンなども有名だが、最良なのはRB26DETTを積んだ、第二世代のGT-R。車重の割に、排気量が2.6リッターと小さいので、実用域のことを考えるともう少し排気量があれば、と思わないでもないが、その分、高回転の伸びは素晴らしい。
6連スロットルとセラミックツインターボの組み合わせでレスポンスもよく、4000~8000回転まできっちり使えた。エキゾーストノートも魅力的だったし、チューニングすれば1000馬力の大台に乗るポテンシャルも! 名実ともに、日本一の直6エンジンと言っていいだろう。
BMW M3(E46)
昔からBMWの直6=ストレートシックスは、シルキーシックスといわれるほどスムースで気持ちがいいエンジンの代名詞だった。BMWは前身が航空機のエンジンメーカーで、直6エンジンこそが理想的と信じていた節があり、世界の自動車メーカーで一番直6への思い入れが感じられた。それだけにお金も手間もノウハウもたっぷりつぎ込んだ直6を作っており、なかでもE46のM3に積まれたS54B32エンジンはBMWの直6の傑作。
3.2リッターのNAで、360馬力の最高出力はなんと7900回転で発生。レブリミットは8000回転なので、とにかく回転の上昇とともにぐんぐんパワーが増していくので気持ちがいい。もちろんBMWの直6ならではの「完全バランスエンジン」で、こだわりの6連スロットルでレスポンスもシャープ。稀に見る高回転型の高出力エンジンではあるが、ダブルVANOS(無段階可変バルブタイミング機構)との組み合わせで、低~中回転域でのトルクも充分あり、ドライバビリティも文句なし。クーンと伸びる排気音も美しく、直6の良さが詰まっている。
ターボなら日産のRB26DETT、NAならこのBMWのS54B32エンジンが直6エンジンの最高峰ではないだろうか。
直6エンジン搭載車は名車の宝庫!
メルセデス・ベンツ 300E-24(W124)
メルセデス・ベンツもBMWと並んで、直6エンジンを重視してきたメーカー。プリンス自動車のグロリアスーパー6やスカイラインGTに搭載されたG7エンジンは、メルセデスのM180エンジンがお手本と言われているし、優れた直6エンジンが多いメーカー。
その代表は、300E-24VのM104エンジン。3リッターNAの225馬力。4600回転で最大トルクの27.6kg・mを発生し、そこからレブリミット(7000回転)までタレることなくまわっていくのが特徴。「最善か無か」といわれた時代のベンツを象徴する1台で、ミディアムクラスの傑作として人気が高い。とくに300E-24Vは、アクセルを踏んでエンジンをまわしていったときのフィーリングがよく、なんともいえない魅力があった。
トヨタ・ソアラ(Z10・Z20)
ハイソカーの元祖として知られるソアラは、ベンツのSLやBMWの6シリーズをターゲットに、ヨーロッパの高級GTに負けないクルマを目指して開発され、1981年に登場。最上級グレードにはソアラ専用に新たに開発された2.8リッターの5M-GEUを搭載。5M-EUにアルミのツインカムヘッドを載せて、20馬力プラスの170馬力にパワーアップ。
重要なのは、このクルマが実質的にエンジンをコンピュータ(ECU)で制御する最初の1台だったということ。リミッターカットで200km/hが出たというのは、当時けっこう大きなニュースだった。
そして2代目ソアラ(Z20)には、3リッターの7M-GTEUを投入。
5M-GEUもツインカムだったが、1気筒あたり2バルブ……。それが7M-GTEUになって、いよいよ1気筒4バルブになり、空冷インタークーラー、ターボチャージャー、光学式カルマン渦エアフローメーターなどの新兵器を惜しまず採用。インジェクターがシングルホールではなく、多口(2ホール)だったのも先進的。 当時の国産車では最強の230馬力/33.0kg・mを誇った。
ちなみに、国産チューニングカーで初めて200マイル(320km/h)オーバーを達成したのもMZ20ソアラだった(HKS関西サービス:現kansaiサービス MZ20 改 3.1リッターTO4E TWIN/323.159km/h)。
M型のあとに登場したトヨタの直6、2JZ(3リッター)、1JZ(2.5リッター)もいい直6エンジン。スープラやチェイサーに積まれ、A70スープラの2.5GTツインターボが、トヨタ車では初の280馬力のMT車モデルだった。丈夫なブロックでパワーバンドが広く、チューニングベースとしても人気があった。
トヨタ GRスープラ
古いクルマばかり続いてしまったので、最後は現行車から。
GRスープラのRZのエンジンは、BMWのZ4と共通のB58B30B型エンジン。3リッターのツインスクロールターボで、気筒間の排気干渉を防ぎ、1800回転の低回転から5000回転まで、51.0kg-mという大きなトルクをキープし続けるのが特徴。
レブリミットは6500回転と、直6のスポーツエンジンとしては寂しい数字だが、5800回転でピークパワーの387馬力を発揮。前述のとおり、無段階可変バルブリフト・吸排気無段階可変バルブタイミング機構などのおかげで、トルクバンドが非常に広いため、高回転まで引っ張る必要性は感じさせない。基本的にアクセルレスポンスがよく、ドライバビリティがいいので走らせやすい。積極的にシフトアップしていけば、それに応えて速く走れるエンジンだ。当初はATしかなかったが、2022年4月からRZにMT仕様が追加された。
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みんなのコメント
面の皮が厚いってこの事か。