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底値? いま手に入れたいボンドカーを過激にしたジャジャ馬BMW「Z3Mロードスター」とは

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底値? いま手に入れたいボンドカーを過激にしたジャジャ馬BMW「Z3Mロードスター」とは

■価格が高騰する前の先物物件「Z3Mロードスター」

 かつてリアルタイムで現役時代を体験し、それ以後も長らくユーズドカーとしてマーケットでの行方を見守ってきたクルマが、今や「ヤングタイマー・クラシック」の領域に足を踏み入れ、これまでの相場観を覆すような価格で取り引きされる様子に驚かされてしまう。

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 一定の年齢を重ねたエンスージアストにとって、そんな経験はよくあることと思われる。そしてBMW「Z3Mロードスター」も、きっと今後、同じような道筋をたどることになると思われる1台である。

 今回は英国シルバーストーン・オークション社の対面型およびオンライン併催の大規模オークション「THE MAY SALE 2021 – CLASSIC CARS AND CLASSIC MOTORCYCLES」に出品された、1台のZ3Mロードスターを俎上に載せ、「レビュー」しよう。

●2000 BMW「Z3M ロードスター」

 BMWのE36系「3シリーズ・コンパクト」のプラットフォームに、2シーターのオープンボディを組み合わせた「Z3」は、BMWが生産した最初の近代的な一般向けの量産ロードスターであるとともに、BMWが初めてアメリカ合衆国に設けた生産拠点、サウスカロライナ州スパータンバーグ工場でアセンブルされる量産車第1号であった。

 ピアース・ブロスナンが初めてジェームズ・ボンドに扮した、映画『007ゴールデンアイ(1995年公開)』の劇中にてデビューしたのち、1996年モデルとしてリリースされた。

 この作品は興行収入で1995年の第1位となったものの、「ボンドカー」としてのZ3の登場は、少々インパクトに欠けるとも評された。しかし、Z3の潜在的購買層へのアピールは充分なものだったようで、デビュー記念のファーストエディションは、正式発売を待たずして売り切れてしまったという。

 また、デビュー当時こそZ3のデザインはいささか物議をかもし、マーケットによってはアヴァンギャルドなデザインに対する心の準備ができていなかったようだが、誕生から四半世紀を経た現在では、この個性あふれるスタイリングはある種の魅力として受容されている。

 そんなBMW Z3の個性と資質をさらに突き詰めたのが、今回の主役である「Z3 Mロードスター」である。1999年のデビュー当時には、単に「Mロードスター」と命名されていたモデルである。

 スタンダードのZ3との最大の違いは、「BMW M」謹製のパワーユニットを積んでいたことである。

 長いノーズの下に、2代目M3(E36後期型)に搭載されていた、3.2リッター直列6気筒DOHC24バルブ、最高出力321ps/7400rpm、最大トルク350Nm/3250rpmを発生する「S50B32」型を詰め込んでしまったZ3Mロードスターは、0-60mph(約97km/h)加速タイム5.2秒、最高速度155mph(約250km/h)という、正真正銘のホットロッドとなったのだ。

 ところが、Z3が系ベースとするE36系3シリーズ・コンパクトのシャシは、実はさらに時代をさかのぼったE30系3シリーズに由来する旧式なものであった。特にリアサスペンションはE36以降のマルチリンクではなく、BMW伝統のセミ・トレーシングアームだった。

 そこでBMW「M」化を図るためにサスペンションレートを強化するとともに、LSDの標準装備化やトレッドの拡大、ブレーキの増強など大幅なシャシ改良が施されてはいたものの、限界領域の特性はかなりのじゃじゃ馬だった。それでも「腕に覚えのある」ドライバーにとっては、獰猛さを隠そうともしないキャラクターやダイレクトなハンドリングは、むしろ魅力的なものと受け入れられていた。

■「Z3M」を手に入れるなら今しかない!

 シルバーストーン・オークション「THE MAY SALE 2021」に出品されたBMW Z3Mロードスターは、デビュー翌年にあたる2000年に生産された1台。右ハンドルのイギリス仕様車である。

 Mロードスターとそのクーペ版「Mクーペ」といえば、イメージカラーだった深めのブルーメタリック「エストリル・ブルー」が連想される方が多いだろうが、この個体はE36系M3前期のイメージカラーとされた「ダカール・イエロー」が、とても華やかな印象を醸し出している。

 インテリアはスマートなブラックの本革レザーで、エアコンやシートヒーターなどの純正オプションが新車として生産された当初から装備されている。

●300万円台の今なら、まだリーズナブル

 今回のオークション出品者であるこれまでのオーナーは、クラブイベントや英国内で数多くおこなわれているカーショーなどにも熱心に参加していたとのこと。それらのイベントでおこなわれる「コンクール・デレガンス」にエントリーするために、前オーナーはこのクルマを美しく保つことに努めていたそうで、ディテールに至るまで入念にケアされてきた形跡が見られる。なかでもエンジンベイは、新車としてショールームを飾っていた時代を思わせる美しささえ感じられる。

 ところが新型コロナウイルスによるパンデミックのため、前オーナーにとっては最高の楽しみであったカーイベントはすべてキャンセル。その結果として、自慢の愛車を手放す決意に至ったとのことである。

 今回の出品にあたっては、本革レザーのウォレットに収められたサービスマニュアルのフルセット、これまでのMOT(英国内車検証)や受けてきたメインテナンスの請求書、および2セットのキーなどの付属品もコンプリート。そして、競売では2万475英ポンド、日本円に換算すれば約315万円で無事落札となったのだ。

 この落札価格は、現在の国際マーケットにおけるZ3Mロードスターとしては、きわめて標準的なものともいえる。また、わが国のユーズドカー専門サイトを検索してチェックしても、これに近いプライス表示がなされていることがわかる。

 約20年前のクルマということもあって、「M」印のつかないZ3であれば、100万円以内に収まる売り物も珍しくはないのだが、やはりホンモノの「M」は特別ということだろう。

 確かに、数年前には200万円台の個体も数多く流通していたものの、昨今のヤングタイマー人気にあって、じりじりとではあるが確実な高騰傾向にあるようにも見える。

 さらにいえば、Z3Mはロードスター/クーペともに、まだまだ価格上昇する可能性を秘めているとも考えられよう。

 自動車界でもっとも愛されている6気筒エンジンのひとつである、3.2リッター「S50B32」型自然吸気エンジンがもたらす、鋭いスロットルレスポンス。そして、クワッド・エキゾーストから放出される素晴らしい咆哮を、リアルスポーツカーとして体感できるZ3Mシリーズは、シリアスかつスパルタンBMWスポーツカーの「最後の砦」として、評価を新たなものとしつつある。

 このクルマに憧れてきたエンスージアストにとっては、どうやら本気で覚悟を決める時が到来しているかも知れないのである。

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みんなのコメント

2件
  • 当時どうしても欲しくてMクーペを買ったな。デザインに惚れて買ったけど、運転も最高に楽しかった。確かにもう一度手に入れたい。
  • 安い、速い、維持しやすい。良い車です。一番の難点は配偶者の理解かな・・・!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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