WEC世界耐久選手権は、5月9~11日にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催される2024年シーズン第3戦『スパ・フランコルシャン6時間レース』に先立ち、同ラウンドで適用されるBoP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)の最新テーブルを発表した。
この中でフェラーリは、ハイパーカーメーカー各社のマシンが同様の調整を受けるなか最低重量と最高出力の面で、より大きな“負担”を課せられている。
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5月7日(火)に公開されたブルテンによると、前戦イモラの予選でトップ3を独占したフェラーリ499Pは今週末のWECスパでは最低重量が12kg引き上げられ、1041kgから1053kgとなった。
フェラーリに次ぐレベルで重量が増えたのはプジョー9X8、ポルシェ963、トヨタGR010ハイブリッドという3つのハイパーカーでいずれも4kg増加した。これにより第2戦イモラでデビューを飾った改良型プジョー9X8の最低重量は1065kgとなり、依然としてトヨタよりも1kg重いマシンとなっている。
スパでシリーズ参戦3戦目を迎えるアルピーヌA424とBMW MハイブリッドV8は、それぞれ3kg増加。同じく今季デビュー組のイソッタ・フラスキーニ・ティーポ6-Cは前戦比2kg増、ランボルギーニSC63は1kgの増加となった。
8車種のハイパーカーに変化がある一方、もっとも軽い1030kgでイモラを走ったキャデラックVシリーズ.Rは今回唯一、最低重量に変化がないマシンとなっている。
■“2段階”性能調整ルールはル・マンの前哨戦でも適用せず
競合他社と比べ重量の面で大きなダメージを負うことになったフェラーリ499Pは、同時に最大のパワーダウンにも見舞われた。
アルピーヌ、BMW、キャデラック、ポルシェ、さらにトヨタが1kW(約1.3PS)の出力減、ランボルギーニとアルピーヌが2kW(約2.7PS)のマイナス調整を受けるなか、フェラーリは最高出力が4kW(約5.4PS)絞られることとなった。
なお、この項目でもっとも数値が大きくパワフルなクルマであるイソッタ・フラスキーニだけは520kW(約707PS)の最高出力が維持されている。
最大スティント・エネルギーはランボルギーニを除いて軒並み増加しているが、これはおそらくイモラ・サーキットよりも全開走行区間が多いスパ・フランコルシャンのトラック特性を考慮したものとみられる。
ここではアルピーヌとプジョーの4MJ増が最大の変化だ。反対にキャデラック、フェラーリ、トヨタの増加幅はもっとも小さく、それぞれ1MJの増加にとどまった。
トヨタ、フェラーリ、プジョー、イソッタ・フラスキーニ、これら4車種のLMH(ル・マン・ハイパーカー)規定車におけるフロントMGU(モータージェネレーターユニット)の力行展開速度はイモラと変わらず。また、210km/h以上でマシンのパワーを増減させる“パワーゲイン”ルールは、ル・マン24時間レースに先駆けてスパで初めてテストされる可能性が示唆されていたにもかかわらず、今回も使用されないようだ。
■2024年WEC世界耐久選手権 ハイパーカークラスBoP(5月6日付)
マシンPF最低重量最高出力パワーゲイン≧210km/h最大エネルギー量Fr.MGU作動域(Dry/WET)アルピーヌA424 LMDh1045kg(+3)513kW(-1)0.0%913MJ(+4)――BMW MハイブリッドV8LMDh1038kg(+3)510kW(-1)0.0%907MJ(+2)――キャデラックVシリーズ.RLMDh1030kg516kW(-1)0.0%909MJ(+1)――フェラーリ499PLMH1053kg(+12)506kW(-4)0.0%905MJ(+1)190kph/190kphイソッタ・フラスキーニ・ティーポ6-CLMH1060kg(+2)520kW0.0%923MJ(+3)190kph/190kphランボルギーニSC63LMDh1035kg(+1)514kW(-2)0.0%908MJ――プジョー9X8LMH1065kg(+4)508kW(-2)0.0%910MJ(+4)190kph/190kphポルシェ963LMDh1037kg(+4)507kW(-1)0.0%904MJ(+3)――トヨタGR010ハイブリッドLMH1064kg(+4)515kW(-1)0.0%917MJ(+1)190kph/190kph
■アストンマーティン、得意のスパを前に20kg超の重量増
そのパワーゲイン・ルールをすでに採用しているLMGT3クラス(ただし、しきい値は200km/h)では、計9つのモデルのうち1車種を除くすべてのマシンに最低重量の調整が入った。
この影響をもっとも受けるのは、21kgの重量増を受け取ったアストンマーティン・バンテージAMR GT3で調整後のミニマムウエイトは1327kgに。
また、ポルシェ911 GT3 Rが9kg、BMW M4 GT3が7kg、シボレー・コルベットZ06 GT3.Rとマクラーレン720S GT3エボがともに5kg、フェラーリ296 GT3は4kgというように計6車種が最低重量のプラス調整を受けた。
一方、フォード・マスタングGT3は11kgの減量を果たし、1318kgで見た目に反してもっとも軽いマシンとなった。1332kgだったランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2は2kgのウエイト削減が認められている。
車重において唯一変化がなかったのはレクサスRC F GT3だ。このクルマは1345kgを維持したままスパに向かうこととなる。
最高出力の面では9台中、フェラーリ、フォード、マクラーレンの3台が、マイナス1パーセントを意味する「-1P」のパワーダウンが適用された。200km/h以上の速度域でのパワーゲインはフェラーリとランボルギーニが前戦比マイナス1パーセント。フォードはマイナス2パーセントの調整を受け取った。
開幕戦カタールで優勝しイモラで3位を得てランキングトップを維持するマンタイ・ピュアレクシングの92号車ポルシェ911 GT3 Rは、合計35kg(前戦3位の5kg+前々戦優勝の15kg+ランキング1位の15kg)のサクセス・バラストを積んでスパに臨む。イモラで優勝したチームWRTの31号車BMW M4 GT3は、92号車に次ぐ25kg(前戦優勝分の15kg+ランキング2位の10kg)追加バラストを積んでいる。
また、ハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3は15kg(10+5kg)、イモラで姉妹車とワン・ツー・フィニッシュを飾ったバレンティーノ・ロッシ組46号車BMWは10kg、開幕戦でクラス3位となったDステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMRも5kgの追加バラストを搭載してル・マンの“前哨戦”に向かう。
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