少なくとも罰金30万円のはず…不起訴が解せない!
演歌歌手の小金沢昇司さん(62歳)が2020年11月28日に酒気帯び運転で追突事故を起こし、逮捕されたと全国報道された。日刊スポーツの記事に「基準値の1リットルあたり0・15ミリグラムをやや上回るアルコールが検出」とある。呼気検査の結果は0.16ミリグラムだったのかな。負傷者はなかったようで容疑は「道路交通法違反」のみ。11月30日には釈放され、12月28日、東京地検により不起訴とされた。だがこの不起訴、どうも解せない。
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酒気帯び運転の罰則は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」だ。普通車で初犯は罰金30万円が相場だ。物損事故が加わると「飲酒運転の危険性を顕在化させた」として公判請求(正式な裁判への起訴)をされ、懲役6月、執行猶予3年ぐらいに処されることがある。報道を見る限り、小金沢さんのケースは、物損の程度が極めて軽くても、前科がなくても、少なくとも罰金30万円に処されるはず。しかし不起訴だという。なぜっ?
芸能人のスキャンダルは国民にうける。芸能人の処分を軽くすると「ひいきだ、ずるい!」と国民は盛り上がりやすい。検察の威信が損なわれる。芸能人もしっかり処罰して「検察は厳格な正義の機関だ」「飲酒運転に厳しいぞ」とアピールするのが望ましい。威信の発揚になる。そうした全国報道の宣伝効果は数億円に相当するそうだ。なのに小金沢さんはなぜ不起訴なのか。とりあえず5つの可能性が考えられるよう思う。
(1)うがいをさせなかった?
アルコールは小腸等で吸収されて体内をめぐる。脳へ運ばれ運転がヤバくなると同時に、肺へも運ばれ呼気に出る。その呼気を容量1リットルのやや四角いビニール袋(呼気採取袋。通称、風船)に吹き込ませ、検査装置でアルコール量を調べる、それが呼気検査だ。口腔内の粘膜や食べかすや歯周ポケットなどに微量でもアルコールが残っていると、ダイレクトに検査値を高める。なので検査装置の取扱説明書には、検査の前にうがいをさせるよう記載されている。パトカーには、検査装置といっしょに水のペットボトルと紙コップが積まれている。
私は以前、『ラジオライフ』(三才ブックス)のある企画で呼気検査をくり返しやったことがある。徹底的なうがいと、肺の空気をぜんぶ入れ換えるような深呼吸が、検査結果に大いに影響することを体験した。でもそんなことを知るドライバーはほとんどいないだろう。体内のアルコールを薄めようと、うがいもそこそこに水を飲んでしまうことが多いんじゃないか。小金沢さんは、紙コップの水をくいっと一気飲みし、そのシーンが本人のクルマのドライブレコーダーにしっかり録画されていたとか? ドラレコの録画は今どき、妨害運転(通称、あおり運転)の重要な証拠とされる。ドラレコは無視できない。もしまずいシーンが録画されていれば、検査結果は証拠にならない。検察官としては不起訴にせざるを得ない。
(2)入れ歯安定剤が影響?
入れ歯安定剤が理由で無罪になった裁判を私は傍聴したことがある。その被告人(49歳)はジェル状の入れ歯安定剤を使用。はみ出し部分をよく除去しなかった。安定剤には微量のアルコールが含有されており、その影響で検査値が0.15ミリグラムに達した(本当は0.15ミリグラム未満だった)可能性があると、実験により証明されたのだ。小金沢さんが、部分的にであれ入れ歯を使用していたなら、安定剤のことで不起訴とされた可能性がある。
(3)過失犯とされた?
多くの交通違反の罰条は、第1項で故意犯を、第2項で過失犯を処罰するかたちになっている。けれど酒気帯びの罰条には第2項がない。つまり過失犯は処罰しないのだ。小金沢さんのオフィシャルブログ「いい波乗ろうぜ!」を見ると、12月1日付けの記事にこんな部分がある。
「運転前に仮眠をとったもののアルコールが抜けていない状態で運転してしまったことは事実であり、弁解の余地がないものと深く反省しております。」
https://ameblo.jp/koganezawa/entry-12641368348.html
飲酒量が少なかったうえ、仮眠の時間はともかく飲酒の終了から追突事故までの時間が長く「アルコールはもうすっかり抜けた」と思っておかしくない状況だったとか?
ただ、酒気帯びの故意は「検査したら0.15ミリグラム以上出るだろう」との認識を必要としない。ほんの少しでも体内にアルコールを保有しているとの認識があれば違反は成立する。しかも警察は、0.15ミリグラム以上の検査値が出たからにはがっちり処罰できるよう頑張る。保有の認識があったという自白調書を作成し、被疑者(本件では小金沢さん)に署名・押印させる、それが普通といえる。そういう調書なしに検察へ送致したとは考えられない。過失犯ゆえに不起訴とされたなら、だいぶ前に飲み終えた裏付けがしっかりあり、その後さらに飲酒した可能性がまったくないとか、特殊な事情があったのだろう。
(4)検査装置の故障が発覚?
2003年、酒気帯び運転の検査装置が「誤作動」を何度も起こしたと問題になった。警察庁の報告書によると、装置内部と呼気との温度差で生じた結露が、検査結果に影響を与えたのだそうだ。そもそも呼気検査は、3回測定して平均値や最低値をとったりしない。ぶっつけ本番、1回勝負だ。検査装置は絶対に正確でなければならない。小金沢さんの呼気検査において何らかの誤作動があった可能性を否定することはできない。
●2013年に発生した呼気検査装置の誤作動について2016年に警察庁が作成した文書
また、警察官のミスもあり得る。例えば、1回で使い捨ての呼気採取袋を使い回していたり。保有の認識についての自白調書が、検察官の目からは甘かったり。あるいは装置の定期点検を怠っていたり。
●呼気検査装置「北川式呼気中アルコール測定機 DPA-5」の取扱説明書より。「清水でうがいを」とあっさり書かれているが、うがいは検査値に影響する
●同じく取扱説明書より。呼気検査で使用する呼気採取袋、いわゆる風船は使い切りなのだ。
検察官は、裁判官が有罪にしやすい形をきっちり整えようとする。「弁解の余地がない。深く反省している」と言っていたドライバーが、法廷で否認に転じることはある。そのとき、万が一にも無罪を食らってはならない。芸能人が酒気帯び運転で無罪となったら大きく報道される。警察、検察のダメージは大きい。慎重にチェックした結果、何らかのミスが発見されたのかもしない。
(5)総理大臣の”お友だち”だった?
これはさすがバカげた話、と思いたいが、ここ数年の報道からは一概に否定もできない。けど、検察が政権やその”お友だち”に忖度(そんたく)するのは仕方ないとしても、芸能人のために威信が失墜することは避けたいだろう。この線は薄いんじゃないか。
さて、小金沢さんが不可解な不起訴となった理由は、以上5つのどれかかもしれないし、どれでもないかもしれない。真相は不明のまま過ぎ去っていく、そういう事件はたくさんある。頑張っていきましょう。 ←どういうシメやねん(笑)。
〈文=今井亮一〉
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。
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