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’20トライアンフ ストリートトリプルS試乗インプレ【扱いきれるからこその妙味】

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’20トライアンフ ストリートトリプルS試乗インプレ【扱いきれるからこその妙味】

税込100万円以下のベストチョイス

トライアンフ ストリートトリプルの末弟として加わった「S」は、欧州のA2ライセンスライダーを対象としつつも、バランスのいい排気量と足回りでベテランをも魅了。税抜100万円切りというプライスにも要注目だ。

税込み100万円切り! 新型660cc並列3気筒を搭載したストリートトリプルSが登場[トライアンフ]

[◯] 表情の変化がユニーク。回したくなるエンジン

トライアンフのストリートトリプルについては、以前最上位モデル「RS」の試乗レポートをお届けした(前記事はこちら)。765ccの水冷並列3気筒は、モト2エンジンの開発スタッフが改良に関与したというだけあり、回転上昇がスムーズな上に非常にパワフル。各種デバイスによる安心感もあって、あの広い富士スピードウェイの本コースを思う存分楽しませてもらった。 

このRS以外に低シート高の「R」も用意するストリートトリプル。そのシリーズの末弟として新たに加わった「S」の最大のポイントは、排気量が上位2機種と異なるということだ。開発の背景にはEUのA2ライセンスが存在するが、わざわざボアとストロークの両方を変更し、しかも’16年モデル以前の675ccではなく660ccに設定したあたりに、若いライダーを安全にステップアップさせてあげたいというトライアンフ開発陣の意気込みが伝わってくるようだ。 

―― 【’20 TRIUMPH STREET TRIPLE S】■全幅765 全高1060 軸距1410 シート高810(各mm) 車重188kg ■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ 660cc 95.2ps/11250rpm 6.6kg-m/9250rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量17.4L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:99万9000円

まずはエンジンから。A2免許の上限である47.6psのちょうど2倍、95.2psを発揮する水冷並列3気筒は、回転数ごとの表情の変化がRSよりも明瞭で楽しい。低回転域では粒立った鼓動感があり、中回転域ではそれが整い始め、そして高回転域にかけて意志を持っているかのように伸び上がっていく。ライディングモードの選択肢はロードとレインの2種類で、前者は開け始めから元気がが良い。ちなみにRSはモードが5段階で、上から2番目のスポーツモードでも慣れるまではサーキットですら持て余すほどだった。そう考えると、Sの660ccという排気量とパワー設定は絶妙と言えるだろう。

―― 【ボア・ストロークの変更で105ccダウン】水冷並列3気筒はRSの765cc(φ78×53.4mm)から660cc(φ76×48.5mm)とし、最高出力は123psから95.2psへ。スリッパークラッチは非採用のためレバー操作はやや重め。クイックシフターもなし。

ハンドリングも素晴らしい。RSよりもキャスターとトレールの設定が穏やかなこと、また標準装着タイヤの変更もあって、軽快感と安定性のバランスが絶妙だ。標準グレードとされるショーワの前後サスは、ゼブラのある路面やギャップ通過時に追従性の低さが露呈するが、全体のパッケージングとしては良好。付け加えると、フロントブレーキもRSやRとはだいぶ差があり、特にタッチについては超えられない壁を感じるが、峠道でもコントロールの幅は十分にあり、制動力も及第点だ。

―― ショーワ製BPFにオーリンズのSTX40、ブレンボのM50を採用するRSに対し、Sは前後ともショーワの普及グレードのユニットを採用。フロントキャリパーはニッシンの片押し式2ピストンで、ブレーキディスクはブレンボ。

―― 【基本骨格はシリーズ共通】アルミツインビームフレームやダイキャスト製のシートレール、鋳造製のスイングアームなどはシリーズ共通。ホイールトラベル量はフロント110mm、リヤ124mmに設定。標準装着タイヤはピレリのディアブロロッソIIIだ。

―― シート高はRSの825mmに対し、810mmを公称。座面前方が絞り込まれていることもあり、足着き性は良好だ。上半身が適度に前傾するライポジで、峠道での積極的に操縦に対応。[身長175cm/体重62kg]

―― LEDヘッドライトやフライスクリーンなど外装パーツは基本的にシリーズ共通だが、このSのみウインカーはLEDではなくフィラメント球となる。また、ミラーもバーエンドタイプではなくベーシックな形状のものを装備。

―― RSが第2世代のTFTディスプレイを採用するのに対し、Sは675時代のメーターユニットを継続。ライディングモードはRSが5種類、Rが4種類なの対し、Sはロードとレインの2種類だ。

―― ステッチ入りのRSに対し、プレーンなシート表皮を採用。タンデムシートの裏面には車載工具が並び、中にはUSB電源ソケットも。

【豪華装備の兄貴分・RS】排気量の違いのほか足まわりも変更されており、Sがキャスターアングル24.3°に対し23.9°に設定、トレールはSの103.4mmに対し100mmとなり、タイヤはピレリのディアブロスーパーコルサSP V3を装着している。

―― 【’20 TRIUMPH STREET TRIPLE RS】●価格:143万7000円

[△] スリッパークラッチで操作力を軽くしたい

RSはスリッパークラッチとクイックシフターを採用しているためあまり気にならなかったが、Sはこの2つが非採用なのでクラッチレバーの重さが露呈。エントリーユーザーを対象としているなら、せめてアシストスリッパークラッチの導入を。

[こんな人におすすめ] 激戦区のミドル、このエンジンはベテランも魅了

デイトナ675のネイキッド版として’07年に登場したストリートトリプル。初代から楽しいバイクではあったが、新型のSは厳しいユーロ5をクリアしながらさらに磨きをかけてきた。これが現行トライアンフ最安値。バーゲンプライスだ。

●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:トライアンフモーターサイクルズジャパン

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