人気のコンパクトSUV市場で注目度の高い2台をピックアップ。実用性、居住性、安全性能、そしてコスパ。ファミリーユースで選ぶならどっちが正解なのか、細かく検証してみた。
激戦区のコンパクトSUVにホンダが新モデルを投入
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国内のコンパクトSUV市場は、激戦区となっている。今年に入り、ホンダが新モデル『WR–V』を投入。今回は、すでに3世代目となり成熟しつつあるSUBARUの『クロストレック』と使い勝手を比較してみた。
SUBARUのSUVというと水平対向エンジンと4WDが定番だが、現行の3代目からFF車が加わった。理由は、4WDは必要ないし、少しでも安いクルマが欲しいという若いファミリー層の声が多かったからだという。そもそも同社の乗用車は1960年代にFF車からスタートしたので、原点に返ったことになる。
『クロストレック』の発売当時にFF車と4WD車を乗り比べたことがあるが、FF車の軽快な走りは、SUBARU製SUVの新たな魅力だと感じた。このモデルからフルインナーフレーム構造を採用し、ボディー剛性と軽量化を向上させたことが良い影響を与えている。
さらにファミリーカーに欠かせない安全性についても、SUBARU独自の技術「アイサイト」を進化させた。国内向けのSUBARU車としては初めて、広角単眼カメラを採用し、3カメラ、4レーダーという全方位監視体制を実現。また大画面モニターを採用し、コネクテッドサービスも拡充した。
一方、新登場のホンダ『WR–V』は、すでに同クラスの『ヴェゼル』や、やや上のクラスの『ZR–V』がラインアップされていることもあり、路線を変更。シンプルな装備、使い勝手の良さ、車両価格に特徴を出した。軽自動車やコンパクトカーからの乗り換え需要を狙ったのだ。パワーユニットは1タイプ、グレード構成も3グレードとシンプル。室内は天井も高く、荷室も広いので居住性は高い。
実際にこの戦略が的中し、発売から1か月後のデータを見ると、累計受注台数は月間販売計画の4倍以上となる約1万300台を突破している。
実際に運転すると、見切りのよい車体は運転しやすく、1.5Lガソリンエンジン+無段変速の走りも、スタートから軽快感があった。またパドルレバーを使うと、マニュアルシフト感覚で走りを楽しめる。
乗用ワゴン的に使える『クロスレック』か、実用的なSUVの『WR–V』か、他社のコンパクトSUVか。このカテゴリーのクルマ選びは悩みが尽きない。
アクティブかつ安全に移動できるクロスオーバー
SUBARU『クロストレック』
Specification
■全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1540kg
■排気量:1995cc
■エンジン形式:水平対向4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:145PS/6000rpm+13.6PS
■最大トルク:188Nm/4000rpm+65Nm
■変速機:自動変速 Mモード7速
■燃費:16.4km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:266万2000円
※「ツーリングFWD」
グリルを低い位置に据え、ヘッドライトをつり目にして、ボンネットの角度をフラットにすることで、車両直前の視界を広げたデザイン。ルーフレールはオプション(5.5万円)。
クーペのようなルーフからテールにかけてのライン。全長は155mm、ホイールベースは20mmで『WR-V』より長いが、全高は75mm低いプロポーション。最低地上高は200mmある。
テールランプの位置は高く、リアウインドウも高め。バンパー下はブラックアウトされているが、ボディー下部にアクセントがないので、全体に腰高に見える設計になっている。
誰でも運転しやすい実用性の高いSUV
ホンダ『WR-V』
Specification
■全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm
■ホイールベース:2650mm
■車両重量:1230kg
■排気量:1496cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC
■最高出力:118PS/6600rpm
■最大トルク:142Nm/4300rpm
■変速機:CVT Mモード7速
■燃費:16.2km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:248万9300円
サイドのベルトラインから水平にボディー前端まで伸ばしたフロントフードと、スクエアなグリルで分厚いフロント部を形成。ボンネットの見え方が『クロストレック』とは異なる。
水平基調のボディーラインは端正な印象。運転席の着座位置が高いので車体前方の見晴らしもよく、ボンネット先端まで見やすい。最低地上高もFF車だが195mmを確保している。
リアウインドウのすぐ下にテールランプなどを並べているデザインは最近のトレンド。リアのランプはストップランプとテールランプにLEDを使用し、明るさと耐久性を確保している。
コンパクトサイズでも安心して家族で出かけられる実用派モデル
SUBARU『クロストレック』
エンジンルーム水平対向エンジンとモーターとリニアトロニック変速機が収まったフロント部。現在、水平対向エンジンはSUBARUとポルシェだけ。
運転席と各種装備国産車の中ではいち早く縦置きのインフォメーションディスプレイを採用したインパネ。ディスプレイサイズは11.5インチで大きい。
シートスペース前席はシートと車体の間の固定構造をブラケット型からシートレールを直接車体に固定する構造に変更、座り心地が向上した。
ラゲージスペース全長は『WR-V』より155mm長いが、荷室の奥行きは40mmほど短い。床面は開口部より60mm下で、サブトランクに三角表示板を収納。
【 ココがポイント!】走りを切り替えて制御する便利な機能「SI-DRIVE」ハンドル右側下にあるスイッチはS(スポーツ)/I(インテリジェント)を使い分けるスイッチでエンジントルクの立ち上がりを制御する。Sは2000回転のトルクが太く、Iはなだらかに加速する。
【 ココがポイント!】後退時に必要以上に加速しないように車速を制限する機能も数多くあるクルマの中でもユニークな機能「車両後退速度リミッター」。モードはOFF/低速/中速/高速で、後退スピードは低速10km/h、中速15km/h、高速20km/h。全車共通仕様だ。
ホンダ『WR-V』
エンジンルーム直列4気筒エンジンがよく見える。最近のクルマはエンジンカバーが備わっているものが多いので珍しい光景。
運転席と各種装備インパネも水平基調でシンプルにまとめられている。9インチのナビはディーラーオプション。サイドブレーキはレバー式を採用。
シートスペース床面脇にあるレバーで高さを調節する。着座位置はやや低めだがボンネットは見える。室内のカラーコーディネートが黒だけなのが残念。
ラゲージスペース高さが約570mmもあるラゲージ。ゴルフバッグは工夫すれば3バッグ収納できそう。ゲートを閉じる時、ダンパーが強いのが残念。
【 ココがポイント!】進化したコネクテッド技術で各種通信サービスも充実最新のコネクテッド技術によりスマホでクルマのエアコンをONにできたり、緊急時にオペレーターのサポートを受けられるほか、新しい地図に自動でアップデートできる。車内Wi-Fiも利用。
【 ココがポイント!】サイズの割に大人4人が快適に座れるパッケージ運転席を身長190cmクラスに合わせても、後席に同じ身長の乗員が座れる広い室内。床面もフラットで大人3人掛けも可能。後席背もたれは4:6で前倒しできるが、床面と約100mmの段差がある。
実用性、居住性、経済性で見ても『WR-V』のコスパは高い
SUBARU『クロストレック』
[運転性能]『クロストレック』の特徴のひとつが軽快な走り。2ピニオン電動パワーステアリングの採用など進化を続けている。18点
[居住性]着座位置は前席がやや低め、後席はやや高めで圧迫感が若干ある。ラゲージスペースにもう少し奥行きが欲しい。17点
[装備の充実度]デジタルマルチビューモニターや広角単眼カメラ、ステレオカメラユニットなど「アイサイト」関連装備はオプション。17点
[デザイン]SUBARUの原点のひとつであるステーションワゴンをベースにSUV化するなど、独自の世界観を打ち出している。18点
[爽快感]「SI-DRIVE」を使いながらの走りは楽しいが、水平対向エンジンゆえの燃費が気になる。今回も10lm/Lに届かず。17点
[評価点数]87点
ホンダ『WR-V』
[運転性能]1.5Lのエンジン+パドルシフト7速付き無段変速は加速して走りを楽しむレベルではないが走行安定性はレベル以上。18点
[居住性]前席、後席、ラゲージスペースのすべてが広く、余裕がある。マルチパーパス系で後席とラゲージスペースは使える。19点
[装備の充実度]先進安全機能に関しては、カメラやレーダーの数は少ないが、コネクテッドサービスは充実。ボディーカラーは5色。17点
[デザイン]幅広のスクエアなフロントマスクをはじめ、存在感のあるデザインが特徴的。最近のホンダ車の中では異色の存在。19点
[爽快感]見晴らしのよい運転席からのドライビングはワインディングよりハイウェイツーリング向き。乗り心地も悪くない。18点
[評価点数]91点
取材・文/石川真禧照 撮影/望月浩彦
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年5月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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