現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【ID.3 Rへ向けた第一歩】VWゴルフeR1 エレクトリック・プロト 500ps+4輪駆動

ここから本文です

【ID.3 Rへ向けた第一歩】VWゴルフeR1 エレクトリック・プロト 500ps+4輪駆動

掲載 更新
【ID.3 Rへ向けた第一歩】VWゴルフeR1 エレクトリック・プロト 500ps+4輪駆動

ID. Rヒルクライム・マシンと同じ駆動系

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)

【画像】ゴルフeR1とID. R 全38枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


フォルクスワーゲン・ゴルフeR1が、オーストリアで開かれたGPアイス・レースのイベントで公にお披露目となった。EVとしての技術と性能の高さを示すだけでなく、将来的な可能性も垣間見せてくれるモデルだ。

ボディの見た目は、ゴルフTCRツーリングカーに軽く手が加えられたマシンのよう。だがその内側には、フォルクスワーゲンが新記録を樹立させた、EVマシンのパワートレイン技術が仕込まれている。

このシステムは、今後Rパフォーマンス部門からリリースされる、ホットなID.モデルへも展開されることになるだろう。洗練度を高めるため、磨き込みに余念がない。ID. GTXシリーズの上位グレードに位置づけられ、実際のモデルは2020年後半には姿を表す予定だ。

今回AUTOCARは、このゴルフeR1の助手席試乗を、短時間ながら許された。招かれたメディアの数は多くはないようだ。場所は、オーストリアのアルプス山脈、ツェル・アム・ゼーの飛行場に用意された、アイスレース用サーキット。

そもそも、このフォルクスワーゲン・ゴルフeR1とは何か。ツインモニターを搭載する、4輪駆動の高性能EVのテストマシンとなる。

このパワートレインは、基本的にフォルクスワーゲンID. Rヒルクライム・レースマシンと同じもの。パイクス・ピークやニュルブルクリンク、グッドウッド、中国の天門山などでコースレコードを樹立したことは記憶に新しい。

ゴルフTCRツーリングカーにツインモーター

ID. Rのパワートレインの耐久性を試すために選ばれたシャシーは、2018年に完成していた、ゴルフTCRツーリングカーのもの。フォルクスワーゲン・モータースポーツ社によって実装され、開発車両らしくカモフラージュ柄のモディカラーに包まれている。

ID. Rがパイクス・ピーク国際ヒルクライム・レースで、7分57秒148の新記録を打ち立てたのは2018年。歴史として刻まれておしまい、という可能性もあったが、綺麗に掃除し直して、アップデートされ、ゴルフTCRツーリングカーのボディをまとうことになった。

フォルクスワーゲンとしては、このスーパーEVゴルフをショーケースに使用して、一連のイベントに参加。ビデオなどでも紹介し、高性能なEV技術を披露することが目的だ。将来的なEVの「R」に用いるパワートレインの開発テストも兼ねているという。

モータースポーツ前提のテストマシンとして、フォルクスワーゲン・ゴルフeR1はとても良く仕上がっている。eR1という呼び名も、新鮮なボディカラーも、イメージが良い。eテクノロジー・テストカーという名前よりずっと良いだろう。

メカニズムをリファインし、アップデートを続ける開発チームの努力のたまもの。フォルクスワーゲン・モータースポーツは、技術的な部分に関して多くを明らかにしていないが、ツインモニターで4輪駆動だということはわかっている。

推定500psが生み出す激しい加速

ID. Rに用いられていたツインモーターは680psを発生させていたが、ゴルフeR1はそれほどパワフルではなく、500psに近いのではないかと推測される。フロント側のモーターだけを動かし、前輪駆動のクルマとしても走行が可能だ。

いくつものコースレコードを樹立したID. Rを、見るだけなら楽しいだけで済む。しかし、それに乗るとなれば話は少し違う。ツインモーターが生み出す鋭い加速に身構えたが、期待通りだった。

ヒルクライム・レースに出場したマシンと比べればパワーは穏やかだが、ゴルフ・サイズのクルマには充分以上に強力。電気モーターが生み出す即時的な大トルクによって4輪が回転を始めれば、すぐさまゴルフeR1は激しくダッシュを始める。

アイス・レース用サーキットということで路面は氷なのだが、スパイクタイヤのおかげでホイールスピンは思ったほどではない。シャシーの設定はアイス・レースではなく、舗装されたサーキットでのレース用らしい。

車高は低く、少し走りにくそうだった。走行する度に、フロントスポイラーがかき上げてエアスクープに吸い込まれた、大量の雪を取り除く必要があった。

我々がテスト走行をする傍らでは、量産版のポルシェ・タイカンも、同様に助手席試乗会を行っている。ゴルフeR1をドライブするのは、ゴルフTCRを駆って世界ツーリングカー・カップに参戦するベニー・ロイヒター。ゴルフeR1はストレートでタイカンを追い越すことができた、と興奮しながら話していた。

意外と大きいツインモーターが発する音

加速力以外は、時間が短すぎ、クルマの多くの結論を導き出すのは難しい。しかもツェル・アム・ゼーに用意されたアイス・サーキットは基本的には大きな3角形。3本の直線が3つのタイトコーナーでつながれているだけで、ハンドリングやダイナミクス性能の手がかりを得ることは困難だ。

少なくともゴルフeR1は、いまの一般的な考えとは異なり、EVでも静かなだけで終わらないことを証明してくれた。車内で聞こえるツインモーターが発する独特の鳴き声は、驚くほど大きい。ベニー・ロイヒターがアクセルペダルをどれだけ踏み込んでいるのか、音を通じて即座に理解できる。

だとしても、レースカーとしては充分に静かではある。タイヤが跳ね上げた氷や路面の雪のコブが、勢いよくゴルフeR1のシャシー下面に当たる音も、しっかり聞こえてくる。

では、このゴルフeR1は、将来のフォルクスワーゲン製EVにどんな意味を持つのか。最もわかりやすい表現は、フォルクスワーゲンの高性能EVのビジョンを伝える、大使的なクルマだということだろう。ボディの見た目がビジョンと一致しないかもしれないが。

フォルクスワーゲンによれば、同社のすべての純EVモデルは今後ID.ブランドに属するとしている。一方でゴルフは、内燃エンジンとハイブリッドモデルとして残されるからだ。

高性能EVモデルに対する小さな一歩

ゴルフeR1はTCRツーリングカーをベースにしているが、2020年後半に発表されるeTCRチャンピオンシップ・マシンのテストカーではないと強調する。このレースには、クプラ(セアト)とヒュンダイも参戦する見込みだが、まだマシンを明らかにしていない。

フォルクスワーゲン・モータースポーツも、ゴルフのカテゴリーでの販売モデルの製造に関心は寄せている。だがそのクルマは、MEBプラットフォームを持つ、ID.のモデルがベースとなるはず。

だとしても、ゴルフeR1がフォルクスワーゲン製EVの将来像に対して、影響は及ぼすに違いない。フォルクスワーゲンのRパフォーマンス部門とフォルクスワーゲン・モータースポーツとは密接に連携してEVパワートレインの開発を進めている。

バッテリーは計画されている高性能なID Rロードカーで用いられるだけでなく、このゴルフeR1でも用いられている。その後継モデルへとつながると考えていい。

フォルクスワーゲンRパフォーマンスを率いるヨースト・カピトは、まだ最終的な後継モデルは決まっていないとしている。だが、eR1という名称を与えた理由をこう話している。「eR1と呼ぶということは、わたしたちの次のターゲットはeR2となるでしょう」

後継モデルはMEBプラットフォームを元に構築され、ID.ブランドのモデルとして登場するはず。フォルクスワーゲンは、遅くても2024年までに高性能なID.3 Rを発表することを目指している。

ゴルフeR1が、高性能EVモデルに対する一歩だと見なしても、間違いはないだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
くるまのニュース
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
motorsport.com 日本版
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
AUTOSPORT web
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
レスポンス
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
motorsport.com 日本版
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
くるまのニュース
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
レスポンス
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
motorsport.com 日本版
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
レスポンス
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
motorsport.com 日本版
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
くるまのニュース
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
AUTOSPORT web
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
くるまのニュース
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
バイクのニュース
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レスポンス
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
Auto Messe Web
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
WEB CARTOP
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
Webモーターマガジン

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

18.0804.0万円

中古車を検索
ゴルフ Rの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

18.0804.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村