現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 初めての雨レース。宮田莉朋が感じたF2のタイヤ事情「日本での経験とは違う」難しさ/FIA F2第8戦レビュー

ここから本文です

初めての雨レース。宮田莉朋が感じたF2のタイヤ事情「日本での経験とは違う」難しさ/FIA F2第8戦レビュー

掲載 2
初めての雨レース。宮田莉朋が感じたF2のタイヤ事情「日本での経験とは違う」難しさ/FIA F2第8戦レビュー

 2024年FIA F2第8戦シルバーストンのスプリントレースを10位、フィーチャーレースを17位という結果で終えた宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)は「課題の多い一戦になりました」と、第8戦終了後に行われた取材会で振り返った。

 第8戦はフリー走行と予選が行われた金曜日、そしてスプリントレースの行われた土曜日に降雨があった。宮田にとって雨のなかでのFIA F2の走行は、開幕前に行われたバーレーンでのプレシーズンテスト初日、そして第5戦モンテカルロのフリー走行で経験しているものの、レースでのウエットタイヤはこのシルバーストンでのスプリントレースが初めてだった。

【宮田莉朋F2密着】プライムタイヤスタートで浮上できずに終わった日曜日/第8戦レビュー後編

 FIA F2ではウエットタイヤが1台につき3セットしか供給されないため、もしフィーチャーレースまでウエットタイヤを使い続ける状況となると、4セッション(フリー走行、予選、2度の決勝)を3セットのウエットタイヤで走ることになってしまう。そのため、フリー走行では計時上10周を走行しているが、プッシュランは2周ほどに留めタイヤを温存することになった。

 また、宮田にとってシルバーストンでの実戦は今回が初めてとなるため、フリー走行で周回を重ねることができなかったことは痛手になるかと思われた。しかし雨が止み、オプションタイヤ(ソフト/レッド)を履いて臨んだドライコンディションの予選を、宮田はポールシッターのアイザック・ハジャル(カンポス・レーシング/レッドブル育成)から0.808秒差の11番手で終えることになった。

 なお、FIA F2のスプリントレースのスターティンググリッドは予選トップ10がリバースグリッドで決定されるため、10番手タイムを記録したアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)がポールシッターとなった。このアントネッリのタイムと宮田の差は0.007秒だった。

「予選9番手や10番手とのタイム差を見ると、8番手くらいには入れただろうなと思いました。というのも、僕がアタックに入った際、ターン1からターン5までトラフィックがあり、クリアな状況でのアタックができなかったためです」と、宮田。

「2セット目のタイヤに履き替えて僕がアタックに入ったところで(宮田の少し前を走行していた)ポール・アーロン選手(ハイテック・パルスエイト)がターン1でスピンをしたことがトラフィックの要因になりました。イエローフラッグが振られてしまったので僕はプッシュを止めて、次の周にアタックに臨もうと切り替えていました」

 ただ、宮田がイエロー区間(セクター1)を過ぎた直後にイエローは解除され、宮田の後からアタックに臨んだ7台ほどはそのままアタックに臨んだ。イエローでプッシュを止めた宮田を含む4台ほどはアタック中の車両に道を譲り、翌周にアタックに臨むことになった。ただ、その譲った車両は宮田のアタック時にはトラフィックとなってしまう。

「アタックを終えたみんなはターン1~4でクールダウンしているので、僕はレコードラインを避けながらアタックするという状況になりました。引っかかった際のロスタイムは0.2秒と、僕の(ステアリング上の)ダッシュボードには出ていたので、個人的にはかなり運がなかったなという印象です」

 その予選で11番グリッドとなった宮田は、土曜日のスプリントレースでFIA F2初のウエットレースに臨んだ。次第にリヤが厳しくなるというピレリのウエットタイヤをマネジメントしつつ、ブレーキ温度の管理にも神経を使いながら、宮田は随所でサイド・バイ・サイドのバトルを見せた。

 スプリントレースは8位までにポイントが与えられるため、3ポジションアップが宮田のひとつの目標ではあった。しかし、序盤から苦戦を強いられ、他車の後退やリタイアで一時は8番手に浮上するも、最終的には10位でチェッカーとなった。

「なんとかポイントは獲りたかったのですけど。乗っていても『なんでこんなにキツいのだろう』と思うほど、タイヤのデグラデーション(性能劣化)やクルマのパフォーマンスも厳しかったですね。それでも、自分のなかでは一生懸命にやったという感じです」と、宮田はスプリントレースを振り返った。

 明けた日曜日のフィーチャーレースは終始ドライコンディションとなった。このフィーチャーレースはスプリントレースよりも周回数が長く、また2種類のタイヤコンパウンドを必ず使用しなければならないというタイヤ交換義務もあるレースだ。

 上位勢の多くはオプションタイヤをスタートタイヤに選んだ。宮田もスタートにはオプションタイヤを希望していたが、チームの判断でプライムタイヤ(ハード/ホワイト)を履いてスタートすることになった。

「シルバーストンでの過去のFIA F2のレースを観て、ドライコンディションであればオプションスタートしかチャンスはないと僕は思っていました」と、宮田。

「フィーチャーレースでは6周目を迎えないとタイヤ交換義務を消化できません。たとえばスタートから2~3周目にセーフティカー(SC)が入って6周目ごろまで引っ張った場合、FIA F2ではSC中もタイヤ交換義務消化となるので、オプションスタート勢はみんなそこでタイヤを替えるでしょう。ですが、プライムスタートになるとそこでタイヤを履き替えることができないので、損しかありません」

「シルバーストンでのSC導入率を見ても、SCが入る確率はかなり高いとわかっていました。また、オプションタイヤのいい部分は想定では4周ほどしか保たないため、29周のレースのうち27周近くはプライムタイヤで行かないとオプションの旨味も活かせない、という話はチームにもしていました」

 そのため、フィーチャーレースのダミーグリッドについた際に宮田の車両にはオプションタイヤが装着されていた。しかしフォーメーションラップ直前、メカニックがクルマに触れることができる最後のタイミングで、宮田のタイヤはプライムタイヤに付け替えられた。

「もしSCが入った際に、チームメイトとピットストップが被る(ダブルピットストップ)になるのを避けたいからという意図でした」と、宮田は話した。

「それに関してはチームを批判することもありませんし、彼らの考えを尊重します。ただ、どういう経緯があったのかは、第9戦ハンガロリンクの前にファクトリーにも行くので、その際にも話をしようと思います。もったいないレースだったな、というのはありますので」

 21周目終わりにオプションタイヤに履き替えた宮田だったが、「タイヤ交換を終えて、2周くらいしたらもうかなりキツいなという感じでした」と話すように、やはりオプションタイヤの旨味はすぐに消え、終盤はデグラデーションに苦しむ状況となり、ファイナルラップに2つポジションを下げて17位でチェッカーとなった。

「しんどい作戦になっちゃったな、という感じですね。自分の予想どおりに悪い結果になってしまったなと、そんな感じです」

 昨年、全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT GT500クラスでチャンピオンとなった宮田は、国内では巧みなタイヤマネジメントや燃費走行を見せていた。国内王者に相応しい強みを持った宮田までもが苦戦するFIA F2の難しさとはどういうものなのだろうか。

「タイヤが劣化する際にはすぐに劣化する。劣化しないときは劣化しない、というのは日本での経験とは違う点かもしれません。たとえば開幕戦のサクヒール(バーレーン)では、タイヤをセーブして、ここぞという場面でプッシュすればそのとおりにタイヤが“反応”してくれました。タイヤに対してクルマもパフォーマンスがあったからそういうことができたとは思います」

「そこからFIA F2のレースも重ねて、ピレリタイヤに対する学びも経てレースに臨んでいるのですけど……タイヤが思うように“反応”しなくなっているのが現状です。去年のSFやスーパーGTでは少しクルマのパフォーマンスが足りなくても、自分なりに考えてドライビングに反映したことがタイヤにも伝わりました。FIA F2のピレリタイヤは反応してくれる幅がすごく狭い、というのが僕の印象です」

 2024年FIA F2の次戦となる第9戦は、7月19~21日にハンガリーの首都ブダペストにあるハンガロリンクで開催される。

「ハンガロリンクもまったくの初めてのコースになり、簡単には行かない週末にはなるとは思います。周りのパフォーマンスが上がっていることもあり、自分のクルマのパフォーマンスを上げることにも、しっかりと取り組んでいきたいと思います。難しい状況ではありますけど、予選はトップ10には入りたいですし、ポイントを手にして週末を終えたいです。初めてのコースでも今までの経験を活かして、少ない時間でも自分のベストを引き出せるように、引き続き一生懸命に臨みます」

 2024年シーズンのFIA F2も残すは6戦12レースとなった。宮田の学びと経験が、結果として実を結ぶ日を心待ちにしたい。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
レスポンス
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
VAGUE
 専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
くるまのニュース
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
WEB CARTOP
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
モーサイ
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
motorsport.com 日本版
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
AutoBild Japan
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
くるまのニュース
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
レスポンス
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
VAGUE
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ベストカーWeb
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
レスポンス
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
レスポンス
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
くるまのニュース
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
バイクのニュース
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
Webモーターマガジン
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

2件
  • ori********
    頑張れ。
    結果は出ていなくても、心が折れてはいけない。
    WECドライバーを期待されているのだから尚更だ。
  • スクラム
    早いやつは何乗ってもいきなり速い。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村