馴染みのセダンにとてつもないパワーというアバルトの血筋
独立したチューニングメーカーから、1971年にフィアットに吸収されたのがアバルトだ。一時は解散状態であり、スポーツグレードの名前にのみ残されていたその名前が、現在は復活して刺激的なモデルとしてクルマ好きの心を捉えているのはご存知だろう。全盛期のアバルトではプロトタイプも多く作り上げたが、一方では協力関係にあったフィアットの市販車をベースにしたチューニングモデルも得意としていた。現在、ラインアップされているアバルト595やアバルト124スパイダーなどは、その往年の血統を受け継ぐものだ。
「1億円」で落札の個体も! 「ランチア」なのに「アバルト」のエンブレムが付く「037ラリー」という名車
これらチューニングカーの多くはレース仕様やラリー仕様も作られて様々なフィールドで活躍したが、WRCで活躍したモデルと言えばフィアット131アバルトラリーだろう。なんでもないセダンを豹変させたアバルトの力は多くのファンを熱狂させるものとなっていった。その遍歴を振り返ってみよう。
ラリー舞台の公道にスポーティセダンと化して開花
ベースとなったフィアット131は、スクエアなデザインが特徴のセダンで、1974年に登場した。
ミラフィオーリというサブネームが付くことがあるが、これはフィアットの工場の名前となる。基本的には実用セダンだが、後期になるとイタリア語でスーパーチャージャーを意味する「ボルメトリコ」と呼ばれるグレードが登場するなど、スポーティなイメージはあった。ちなみにフィアット131はボルメトリコも含めて、日本に正規輸入はされていた。
フィアットの市場戦略車としてバトンタッチを受け
そのフィアット131をベースにしてWRCへと参戦する計画が立ち上がり、アバルトが手掛けることになった。それまでフィアット・アバルト124ラリーで1971年からWRCに出てはいたが、フィアットグループとしてのメインはランチア・ストラトスだった。
ご存知のようにストラトスは大活躍はしていたものの、市販車の売り上げアップという目的とはあまり関係ないモデルだっただけに、ストラトスの代わりに実用セダンのフィアット131をベースに車両を開発して、参戦するという計画が立ち上がった。
すでにアバルトは1971年にフィアット傘下に入っていたものの、カルロ・アバルトは健在で、従来通りの活動は行なっていたことから、実力は十分。当時のメインカテゴリーだったグループ4に参戦すべく、1976年にホモロゲモデルのストラダーレ(ストリート仕様)を発売して、規定の400台生産をクリア。ちなみに実際に生産されたのは1000台ほどとされている。
このストラダーレからして、バンパーの代わりに付けられたチンスポからつながる角張った大ぶりのブリスター。リヤはダックテールだけでなく、ルーフ後端にスポイラーも装着されていたり、ホイールはクロモドラ製アバルトホイールなど、スペシャル感は満載だった。肝心のエンジンはフィアット132用の2リッターの直4をベースにチューニングして、ストラダーレでは140psと控えめにしつつも、競技モデルは高圧縮化、ドライサンプの採用、加えて最終的にはキャブからインジェクションに交換することで、230psを発揮。シャーシはアバルト124ラリー譲りのものを採用して、ボディはボンネットやフェンダーをFRP。ドアスキンはアルミとすることで、重量は1000kgを切っていて、アバルトらしさ全開だった。
実戦には1976年のシーズン途中から参戦。当初は未熟部分もあり成績は振るわなかったものの、次第に熟成され、1977年にはマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得し、翌年も同タイトルを獲得しつつ、名手マルク・アレンがFIAドライバーズチャンピオンにも輝いた。その後も活躍を続けたが、1982年により過激な内容のグループB規則となってからは、グループ4マシンであることもありライバルに比しては非力でもあり、そしてFRということもあって、実戦から姿を消している。
ストラトスと037ラリーの狭間的な存在ではあるが、そのスタイルとカラーリングゆえ、今でも高い人気を131アバルトラリーは誇っている。とくにカラーリングは、WRC参戦初年の1976年のみ、フィアット純正オイルである黒と黄色のオリオフィアットカラー。翌年からはストラトスにも採用されていたアリタリアカラーをまとっていて、クルマ好きの心をくすぐってくれる。
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買える時に買えばよかった・・・。