実走行の参考になるWMTCモードの燃費値
カタログなどに掲載される燃費は、10年ちょっと前までは定地燃費値だった。この数値、平坦な直線舗装路を時速60km/h(51cc以上のモデルは2名乗車。1名乗車仕様の場合は1名)で走行して計測した数値である(50cc車は1名乗車で時速30km/h走行)。だがこの数値、普通に走っていたら絶対で出ない燃費値でもあった。平坦な道を加減速もせず、たんたんと60km/h一定速で走る状況など、まずないので当然だろう。
【画像14点】航続距離ランキングトップ10の車種を見る。「原付二種スーパースポーツから1250ccの大型車まで大混戦」
そこで、もっと実際の使用状況に即していて、参考になる燃費数値を掲載しようという方向となり、採用され始めたのがWMTCモード値というもの。それがWorld-wide harmonized Motorcycle Test Cycleという名称の頭文字を取ったもの……というのは別に記憶しなくていいが、2013年7月以降のバイクのカタログなどには順次WMTCモード値を掲載し始めている。
その説明として「発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値で、走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます」などと書かれている。
詳しくしりたい人は「WMTCモード値」でウェブなどで調べてほしいが、大ざっぱに言うとまず排気量によって3つのクラスに分けられる(別表参照)。そのうえで、試験時の最高速度の設定などが異なるのだが、ちゃんと現実の使用に合わせて発進、停止、加速などを織り交ぜた上での燃費数値にしてあるのだ。
航続距離トップ10は、125ccから大排気量アドベンチャーまでが入り乱れる混戦!?
さて、ここからが本題。今回紹介する航続距離ランキング・トップ10は、満タン状態から無給油でどこまで走れるかを調べたもの。数値は実走した燃費ではなく、「WMTCモード値×各バイクのタンク容量=航続距離」で割り出したもの。
「それじゃあ現実にそぐわない」と思われるかもしれないが、たとえば筆者が以前実走したスズキ ジクサー150(150cc空冷単気筒)の試乗では、高速走行を含め、かなり高回転を多用して走った場合で以下の航続距離だった。
【ジクサー150の実走燃費】
49.2km/L=走行512km÷消費燃料10.4L
(路上でのガス欠は危険もるので、カラッケツまでは走っていない)
【ジクサー150の計算上の航続距離】(WMTCモード値で計算)
50.0km/L=航続距離600km÷タンク容量12L
つまり、このWMTCモード値×タンク容量の計算ではじき出した航続距離は、かなり参考になると思われる。ガス欠まで走らせるのは現実的ではないが、計算結果の航続距離から50~60kmほどマイナスしたあたりの走行距離が、ツーリングの際の給油タイミングの参考になるだろう。
航続距離ランキング・トップ10結果
以下が航続距離トップ10ランキングだ。海外ブランドの一部はWMTCモード値を公表していないので、残念ながら今日本で買えるバイクの全比較ではないが、10位から発表していこう。
10位 543.4km【ヤマハ YZF-R125 ABS】/WMTCモード値49.4km/L タンク容量11.0L
■2023年秋から発売のYZF-Rシリーズの最小排気量モデル。ボア・ストローク52×58.7mmのロングストローク型水冷単気筒と、11L容量のタンクが好結果をもたらしたか?
9位 545.7km【スズキ Vストローム250】/WMTCモード値32.1km/L タンク容量17.0L
■実用トルク重視型の水冷並列2気筒エンジンもボア・ストローク53.5×55.2mmとややロングストローク型。17Lの燃料タンクも余裕十分。
8位 552.2km【ヤマハ YZF-R15 ABS】/WMTCモード値50.2km/L タンク容量11.0L
■水冷155cc単気筒エンジンを搭載するYZF-R125の排気量拡大版だが、意外にも燃費で好結果。+αの排気量で回さない分、125より燃費がいい? ボア・ストローク58×58.7mmでほぼスクエア。
6位(同率) 560.0km【ブリクストンモーターサイクルズ フェルスベルク125】/WMTCモード値40.0km/L タンク容量14.0L
■オーストリア発の新興ブランド「ブリクストン」。124cc空冷単気筒エンジンは最高出力11.1ps/9000rpmの実用的なスペックで、大きめのタンクが長距離に有利か。
6位(同率) 560.0km【ブリクストンモーターサイクルズ サンレイ125】/WMTCモード値40.0km/L タンク容量14.0L
■同じくブリクストンの124cc空冷単気筒エンジンモデル。スクランブラー風のフェルスベルクに対し、サンレイはカフェレーサー風フォルムに同量のタンクを装備。
5位 563.4km【ベネリ TRK251】/WMTCモード値31.3km/L タンク容量18.0L
■ベネリの250ccアドベンチャー。水冷のDOHC単気筒はボア・ストローク72×61.2mmのショートストローク型。18Lの大容量タンクが、長距離に有利。
4位 565.8km【KTM RC125/GP】/WMTCモード値41.3km/L タンク容量13.7L
■意外なダークホース、DOHCの水冷125cc単気筒を搭載するKTM最小排気量スーパースポーツが4位にランクイン。地味に燃料タンク容量がある。ただし、新型の125デュークも、燃費は非公表ながら同等の航続距離を確保か。
3位 591.0km【ホンダ GB350/S】/WMTCモード値39.4km/L タンク容量15.0L
■実用的な低中回転トルクに振った350cc空冷単気筒は、70×90.5mmのロングストローク型で良好な燃費性能+不足のないタンク容量で航続距離を稼げる。
2位 600.0km【スズキ ジクサー150】/WMTCモード値50.0km/L タンク容量12.0L
■旧型のスーパーカブ90などに匹敵するほどの高燃費を誇る150ccの軽二輪モデルは、ボア・ストローク56×62.9mmのロングストローク型空冷単気筒を搭載。
1位 630.0km【BMW R1250GSアドベンチャー】/WMTCモード値21.0km/L タンク容量30.0L
■空水冷1250cc水平対向2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデルの王者、BMW GSのヘビーデューティ仕様が航続距離でもトップに君臨。トライアンフのアドベンチャー・タイガー1200エクスプローラー系も同じ30L容量のタンクを装備するものの、燃費数値が公開されていないため、選外とした。
結果として、トップはアドベンチャー系の雄、BMWのR1250GSアドベンチャーとなった。スタンダードモデルは2024年型で全面刷新されR1300GSとなったが、専用のバーやガード、ロングストロークサス、30Lの大容量タンクなどを装備したGSのヘビーデューティ仕様は、既存モデルがしばらく販売される模様だ。
2位は記事冒頭でも話題にしたスズキのジクサー150で、3位は近年大ヒットのホンダ製ネオクラシックモデルGB350シリーズ。以下KTM製125ccスーパースポーツ、ベネリの250ccアドベンチャー、ブリクストンモーターサイクルズの原付二種モデルなど、海外勢が健闘!?
とはいえ、排気量・ジャンルに関してバラバラという興味深いランキングとなった。
report●モーサイ編集部・阪本
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