数々の名車を送り続けるイタリア。そんなイタリアのクルマたちにまつわる人や出来事など、素晴らしき“イタリアン・コネクション”を巡る物語。第1回は30周年を迎えたランボルギーニ・ディアブロについて。
重要なアイデンティティ”325”
ランボルギーニ・カウンタックの後継モデルとなるディアブロがアンヴェールされたのは1990年1月のことであった。ランボルギーニ伝統のV型12気筒DOHCエンジンは独自のインジェクションシステムを備え 5.7リッターへと拡大され、最高出力は492ps、最高速度は325km/hと発表された。この”325”という数字はディアブロにとって重要なアイデンティティであった。1987年に発表され市販車最速を誇ったライバル、フェラーリのF40が324km/hを謳っていたからだ。
1963年、イタリア サンタアガタに誕生したランボルギーニはイタリアの奇跡とも言われた経済成長と共に破格の成功をおさめたが、1960年代後半から多発した労働争議や、その後のオイルショックなどによって経営基盤は安定せず、常に厳しい状態に置かれていた。しかし、カウンタックというどんなライバルの出現をも許さない、ユニークなフラッグシップを細々と作り続けることで経営を成り立たせていた。なぜならカウンタックは当地のハイパフォーマンスカー・メーカーとしては画期的なことにボディ製作を内製化していた。それがゆえに少ない運転資金を廻しながら、ごく少人数での自転車操業が可能だった。当時のフェラーリ、マセラティといった当地のライバル達はボディ製作をトリノのカロッツェリアへと大枚をはたいて外注していたのだった。
カウンタックの亡霊
「もはやカウンタックは神話でした。誰もがそのユニークさやスタイリッシュさを絶賛していましたから、その後継モデルを作ることが如何に難しかったか、想像がつくでしょう。しかし、そんなカウンタックの運命にも終わりが見えていたのです」と、次期カウンタックの開発を託されたチーフ・エンジニア、ルイジ・マルミローリは語る。
1960年代の文脈で作られたカウンタックの製造には高度なスキルを持った熟練工の腕が必要であったし、1台の完成までにとんでもない時間が掛かった。そして、なによりも、衝突安全性に関するホモロケーションの有効期限の終了が迫ってきていたのだ。つまり、もうカウンタックの延命は不可能となってしまっていた。
“カウンタックのコンセプトは充分にユニークであり、誰もそれに追従できないはずだ” と結論付けたルイジは、カウンタックのユニークなドライブトレイン・レイアウトを踏襲し、それをブラッシュアップして次期モデルを開発するという決断を下した。それ以上にスタイリング開発は難しかった。当時、ランボルギーニはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン、そしてカウンタックのデザイナーでもあるフリーランスのマルチェロ・ガンディーニの両者に、ニューモデルのスタイリング開発を依頼していた。
「双方から、力のこもったアイデアが提案されましたが、カウンタック(イタリア北部の方言で“何だこりゃ”なんていうニュアンス)というコトバに秘められている意味を理解していたガンディーニの案には説得力がありました。つまり、こういったモデルには洗練されたイメージや居住性といった合理性よりも、皆をあっと言わせるインパクトやユニークさが必要だということを解っていたからです」とルイジは語る。
アイアコッカ登場
ルイジは限られた運転資金の中で全力を尽くし開発を進めていたのだが、世の中何が起こるか解らない。突然、当時アメリカの“英雄”であったリー・アイアコッカ率いるクライスラーがオーナーとしてサンタアガタに乗り込んできた。破綻寸前であったクライスラーをV字回復させた彼は、AMCをはじめとする他ブランドを獲得するという拡大政策を取り、マセラティへの資本参加に続いて、ランボルギーニを買収したのだ。
これは絶えず資金繰りに悩まされていたランボルギーニにとって思いも寄らぬ朗報であった。ところが、次期カウンタック・プロジェクトに関しては難しい問題も浮上してきた。クライスラーはランボルギーニのエンジン開発力などのエンジニアリングに関しては絶大な評価をしていたが、スタイリングに関しては違った。クライスラーの巨大なデザインセンターを率いていたトム・ゲイルは、クライスラーの流儀を大いに主張したのだ。しかし、考えてもみて欲しい。ガンディーニの彫刻のようなシャープなスタイリングと、当時北米でトレンドであったラウンド・シェイプの造形に妥協点を見いだすのは容易なことではない。
早速、クライスラーサイドよりガンディーニ案に対して物言いがつき、同時にクライスラーのデザインセンターから幾つものプロポーサルが届けられ、スタイリングに関して伊米の全面戦争となってしまったのだ。双方は妥協案を出したが、なかなか進まず膠着状態となってしまった。これは困った! そこでルイジは行動を起こした。
トップのアイアコッカはルイジのコンセプトを大いに尊重していたし、クライスラーのスタイリング・アイデンティティをランボルギーニへ持ち込めばいいとも考えていないことも彼は解っていた。「そこで私はアイアコッカへストレートに訴える戦略を取りました。当時、彼は頻繁にトスカーナにある別荘に滞在していました。そのタイミングにあわせて、片側はクライスラー案、反対側はガンディーニによる最終案という左右非対称のモックアップをこっそりと届け、彼の判断を仰いだのです。これで、ガンディーニ案にGOが出たのです」とルイジは笑う。
ディアブロ生誕30周年
2020年の本年はそのディアブロ生誕30周年となる。件のアイアコッカといえば昨年鬼籍に入ってしまった……。ルイジは30周年を迎えたディアブロについて回想する。「紆余曲折あったスタイリングですが、このガンディーニとクライスラーチームの合作は結果的に正解でした。より普遍的なスタイリングを得たことで、ランボルギーニの経営を長く支えるロングランモデルとなることが出来たからです。ええ、マルチェロ(・ガンディーニ)をたいへんなことに巻き込んでしまいましたが、彼はその結論に納得してくれましたよ。もっとも、彼は未来しか見ない人ですがね」
ランボルギーニ・ディアブロ、その傑作を生み出したルイジ・マルミローリとマルチェロ・ガンディーニ。素晴らしきイタリアン・コネクションに乾杯!
文と写真・越湖信一 Photo & Text Shinichi Ekko EKKO PROJECT
Special Thanks: Automobili LamborghiniS.p.A. Luigi Marmiroli Marcello Gandini
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みんなのコメント
余計な線や無駄にデカいグリルとメッキでゴチャゴチャと下品に飾り立てる最近のオラついた日本車とは対極のデザイン哲学。
彼らのデザインした車は、シンプルで美しい。
もちろん数十年前の車ともなると古臭さは否めませんが、それでも素直に美しいと思えます。
叶うなら、彼らが現在の技術で実現可能な造形でデザインした車をもっと見てみたかった。
当時は技術的な制約から実現できなかったことも多かったはずですからね。