「あのバイク、1リットルのガソリンでどのくらい距離を走れるの?」そのひとつのサンプルを皆さんと共有するthe「燃費」企画。今回のバイクは2023年初夏に販売開始された話題のミドルクラスアドベンチャーモデル、ホンダ「XL750 TRANSALP」(以下、トランザルプ)です。
新設計のフレームとエンジンを搭載し、ホンダの販売モデルとしては、アドベンチャー&クロスオーバーセグメントにおいて「400X」と「アフリカツイン」の間を埋めるミドルレンジを担うモデルです。
そこには「NC750X」もあるのですが、トランザルプの強みは、高いオフロード走行性能を持っていること。それは長いサスペンションストローク、高い最低地上高、そしてフロント21インチ、リア18インチというタイヤサイズにも表れています。
販売に先駆けて行なわれたメディア向けの試乗会での印象は、その車体が持つバランスをどんな道でも味わえるようなチューニングがされていて、ただただ走るのが楽しいバイクです。しかも軽い!
the「燃費」取材班として肝心な燃費性能(国土交通省届出値)は、定地燃費値(60km/h、2名乗車時)が34.5km/lで、WMTCモード値(クラス3-2、1名乗車時)が22.8km/lとなっています。燃料タンクは16リッター、指定ガソリンはレギュラーです。いったい、実走したらどうなのでしょうか。
本企画では市街地、高速道路、ツーリング(快走路)の3つのシーンで燃費を計測しています。これまでの記事と比較が出来るよう、ルートは統一。休日のツーリングをイメージして交通の流れに合わせた走行をしています。
記載する区間距離と燃費は、車載のトリップメーターと平均燃費計の数値です。区間毎にリセットし、当該区間の燃費を見る、というカタチをとっています。
市街地ルートは都内外苑付近をスタート。青山一丁目交差点から国道246号で赤坂を抜けて皇居へ。お堀沿いを反時計回りに進み、桜田門、日比谷と進みます。その先、丸の内のオフィス街を回り、晴海通りを築地から直進。首都高速湾岸線沿いを走る国道357号、東雲付近までの12.3kmで計測しています。そのほとんどが片側3車線の広い道で、交差点は直進、右折分離信号も多く、信号待ちが燃費に影響する場合が多くあります。
世界にはトランザルプをコミューターとして市街地もガンガン走らせるライダーが多いそうです。アップライトなライディングフォームと広く高めの視点が心にゆとりを持たせ、長いストロークのサスペンションは路面のギャップをしっかりと吸収するうえ、郊外から移動するなら高速道路での機動性も確かなのがその背景だとか。
東京都市部を走って感心したのは、エンジンやラジエターからの熱を足や膝まわりに感じさせないこと。細身の燃料タンク、シートのコンビで足つき感も良好です。燃費結果としては信号のタイミングが良くスイスイ走れたのが良かったのか、19.6km/lでした。
高速道路の燃費は次の2区間で計測しています。区間1はアクア連絡道「木更津金田IC」から館山道の南端「富浦IC」までを走る53.1kmの往路。区間2はツーリング路の計測を終えた館山道「富津中央IC」からアクア連絡道「木更津金田IC」まで25.2kmの復路。合計で78.3kmです。
ルートの特徴としては、アクア連絡道の制限速度が80km/hで館山道は往路で100km/hから80km/hそして70km/hとなります。これは「富津中央IC」から南側で片側1車線となり、制限速度が低下するからです。復路で通過する館山道では100km/h制限のみ、そこからアクア連絡道へと進みます。
アクア連絡道は比較的平坦ですが、館山道は平坦部分が少なくアップダウンが連続しています。
トランザルプの高速道路走行は、空力特性に優れたフェアリングの恩恵で極めて快適です。ライダーを走行風から護ってくれるのはもちろん、乱流が極めて少なく、無駄な空気の渦が無いのです。ヘルメットまわりは静かで快適。
パワー、トルクに余裕があるエンジンの恩恵もあり、アップダウンが連続する館山道で一定速度を保つのも問題ありません。
この日、区間1では無風から追い風で燃費は31.4km/l、区間2では無風という気象状況も味方して30.7km/lとなり、平均すると31.0km/lでした。
ツーリングルートの燃費計測は次の3区間です。区間1は、館山道「富浦IC」直近のコンビニをスタートし、国道127号から県道296号で内陸に入り「安房グリーンライン」を経由して房総半島南端エリアの海岸線へと走る21.9km。区間2は南端エリアの海岸線から海沿いに走り、千倉漁港の先で国道410号に合流して北上。途中、国道128号を短い区間走り、再び国道410号で北上し、県道34号との交差点を左折し西へと曲がり、「大山千枚田」までの38.9km。区間3は「大山千枚田」から県道88号、34号を経て県道182号「もみじロード」へ。そのまま直進して国道465号、127号を走り、館山道「富津中央IC」までの26.1kmです。合計86.7kmで行なっています。
どの区間も平坦路とアップダウンがほぼ同じ距離存在し、信号や交通量の少ない快適なツーリングルートです。
トランザルプは一定速度で走行している時のわずかなアクセル開度の変化に対する力の出し方が気持ち良く、ギクシャクさせずにパワーを取り出します。キレイに空気を吸って燃焼し、吐き出す様子が伝わってきます。
大柄な車体ですがハンドリング性能がもたらす一体感、アクセルレスポンスの心地良さでバイクがコンパクトに思えるのが美点です。
もうちょっとブレーキは制動感の立ち上がりがあっても良いかな、と思いますが、心地よいペースでワインディングを流せばそれもまたアリなのか、と心境も変化します。とにかく優れたツアラーであり、スポーティさを持ち合わせた純度の高いバイクなのです。
燃費計測の結果は、区間1が30.1km/l、区間2が30.7 km/l、区間3が32.1km/lとなり、3区間平均は30.9km/lとなりました。
市街地、高速道路、ツーリング(快走路)を合わせて177.2kmの距離を実走テストした燃費平均は27.1km/lとなり、これは同時期にリリースされたスズキ「V-STROM 800DE」が本企画で記録した24.7km/lを上回るものでした。
いずれにしても、トランザルプの燃費性能は嬉しい限り。208kgという車重も走っていて軽快さを実感させるものだったことは間違いありません。
ホンダ渾身の作、燃費も走りも期待通り、と言えるのではないでしょうか。
■ホンダ「XL750 TRANSALP」燃費結果総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)市街地:19.6km/l高速道路:31.0km/l快走路:30.9km/l平均:27.1km/l
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ぶん回して乗ってればリッター10はザラ、V-MAXはタンク小さいくせに回すとVブースト仕様でリッター10走ったかな?